TOP>MoreSmile>知っておきたい他職種の基礎知識 後編

MoreSmile

知っておきたい他職種の基礎知識 後編

知っておきたい他職種の基礎知識 後編
知っておきたい他職種の基礎知識 後編
前編では亀山雄樹さんに『特別養護老人ホーム』について、ご勤務されている「松寿苑」の場合を例にご説明いただきました。後編では歯科衛生士さんの業務に関わる、口腔ケアと食形態に関する事を中心に伺いました。

社会福祉法人 幸洋福祉会 特別養護老人ホーム 松寿苑 施設長 亀山雄樹さん Q:亀山さんのこれまでのご経歴を教えてください 平成11年に福祉系高等学校を卒業すると同時に地元の特別養護老人ホームに勤めていました。その後、7年間の社会福祉協議会勤務を経て平成19年に松寿苑に生活相談員として採用していただきました。私は大学には進学せず、高校卒業と同時に介護福祉士の試験に合格して、介護福祉士、のちに介護支援専門員(ケアマネジャー)と社会福祉士の資格を取得しました。今まで常に現場畑を歩いてきましたが、令和3年3月に松寿苑の施設長を拝命し、福祉の世界に勤めるようになって今年で24年目になります。 Q:高校を卒業される時から介護の仕事につきたいと思っておられたのですね 正確には中学3年の夏休みからです。その時に自宅近隣の特養で行われた「ワークキャンプ」に参加して、そこでお年寄りの方々といろんなお話をしたのがとても楽しくて、今では決して考えられないような昔の生活の話や、戦争体験などを伺ったのですが「お年寄りのお話を聞くのは楽しいな」と思うと同時に「こういう施設や職業があるのか」とぼんやりと考えるようになって、県内で福祉について学ぶことができる高校を探しました。それが福祉に携わろうと思ったきっかけです。 Q:介護士さんはとてもお忙しくて大変なイメージがありますが 前編で当施設は「完全個室のユニット型特養」とお話ししましたが、個室の施設と4人部屋の施設では介護スタッフの日課はかなり違ってきます。4人部屋の場合だと「〇時にお風呂で、〇時に施設介助が入って…」という流れがあるのですが、個室の場合は食事の時間が決まっているだけです。それ以外の時間帯日課を決めていません。消灯時刻の取り決めもなく、早く休まれる方もいらっしゃれば、夜9時に始まる映画を見てから寝るという方もいらっしゃいます。 Q:では「ユニット型特別養護老人ホーム」の場合、介護スタッフさんは食事の時以外は入居者さんのご希望に合わせて介助されるイメージでしょうか そのとおりです。当施設における介護職員の勤務パターンは「早出、遅出、夜勤」の3パターンのみです。早出が7:30~16:30、遅出が10:00~19:00、夜勤が17:00~翌朝8:45。どのユニットにも必ず早出が1名、遅出が1名。2つのユニット20名の入居者の方々に対して1名の夜勤スタッフを配置しています。 Q:入居者さんの口腔ケアについて伺っていきたいのですが、現在は新型コロナウイルスの影響で外部からの歯科衛生士さんは入ってきていないですか 令和2年度中は新型コロナ対策のため、歯科衛生士さんに来ていただくことが難しかったのですが、現在は月に2回来苑いただき、入居者さんの口腔に関する助言や指導、歯磨き、口腔内の確認、状況の記録など、1回につき2時間程度でほぼ70人全員の口腔内を見ていただいています。 Q:現在は入居者さんの口腔ケアは介護スタッフの方だけでされているのですか ADL(日常生活動作)の状態に応じてご自分で歯磨きをされる方いらっしゃれば、介護スタッフによる全介助で行う方もおられます。その他、訪問歯科診療の歯科医師の先生に必要に応じて市内から来ていただき、義歯の調整や虫歯の治療をしていただいています。 Q:現在は入居者さんの口腔ケアは介護スタッフの方だけでされているのですか ADLの状態に応じてご自分で歯磨きをされる方いらっしゃれば、介護スタッフによる前回所で行う方もおられます。その他、訪問歯科診療の歯科医師の先生に必要に応じて市内から来ていただき、義歯の調整や虫歯の治療をしていただいています。 Q:皆さんの食事はお口から食べられる方がほとんどですか そうです。うち5名の方が経鼻経管栄養の対象です。それ以外で終末期が近づいて状態が低下されている方については、介護スタッフではなかなか難しいという方には看護師が食事介助に直接にあたっています。 Q:常食、とろみ食、きざみ食などの食形態はどのように決められているのでしょう ミールラウンドといって、お食事の様子を観察して咀嚼力や口腔機能、嚥下機能、姿勢などを評価するのですが、当施設は管理栄養士が毎日観察して、その方の食形態があっているかどうかをチェックし、形態の変更は随時行っています。また定期的に他職種も同席するカンファレンスを開いて協議しています。 「食べること」は入居者さんにとっては最大の楽しみと言ってもいいかもしれません。当施設では状態が低下した方でも栄養補給という目的ではなく「生きる楽しみの一つ」と捉えています。ですので、“できるだけたくさん召し上がっていただきたい”のですが、それはそれぞれのお身体の状態に応じて決して無理のないように、体調や空腹の時間帯、その時の精神状態によっても摂取量が変わってきますから、そこをきっちり「見極める目」を持って欲しいとスタッフにはよく話しています。
介護スタッフさんたちによる口腔ケアの様子 Q:特養などの施設で訪問診療をされる歯科衛生士さんに求めることはありますか 口腔ケアは介護の世界でも非常に注目されています。令和3年4月に介護方針の改定が行われましたが、その中で口腔ケアの重要性が加算の評価で出ていまして、栄養、口腔、嚥下、認知症そしてADL(日常生活動作)です。5つの領域の中で、厚労省に毎月データを提出して、国からフィードバックを受けて、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を続けることで、入居者の方々のQOL(生活・人生)の向上に努めるという動きが始まっています。その中で重要な項目として、近年では必ず「口腔」という言葉が見られるようになりました。 日常生活を送る中で、私たちも「歯磨きって大事なんだろうな」と漠然とは感じています。ですが、漠然とではなく、「口腔ケアはこういう点でとても重要なんだよ」というメッセージを専門職である歯科衛生士さんから私たち介護従事者に伝えていただけるとありがたいですね。 また入居者さんの口腔ケア、口腔内の衛生管理をする、それに対して助言をいただくことも大事なのですが、口腔ケアの重要性などの広報的な活動も施設にフィードバックしてくださるととても参考になります。 Q:口腔のプロである歯科衛生士さんに積極的にリーダーシップをとってほしいということですね そうですね。私たちは「生活を支援する専門職」ではありますが、口腔衛生に関してはまだまだ未知の領域で分からないことも多いのが実際です。専門家の方々が持っていらっしゃる知識と技術をいろいろ教えていただけると嬉しいですね。 貴重なお話をありがとうございました。 いかがだったでしょうか。 今後は「生活を支援する専門職」である介護士さんと「口腔衛生の専門職」である歯科衛生士さんの連携がますます重要になってきます。介護士さんがどんな仕事をしているか、どんな事を歯科に求めているか、日々の診療のヒントになったでしょうか。今後も、MoreSmilesで様々な情報を発信していきますので、ご期待ください! 前編→知っておきたい他職種の基礎知識

tags

関連記事