日々、患者さんにセルフケア指導を行うなかで

・何度TBIを行ってもプラークコントロールの数値が良くならない
・来院のたびに歯面にたくさんのステインが付いている
・矯正治療中のためカリエスリスクが高い患者さんの指導法に迷う

などの"お困りごと"はありませんか？
その原因にはいろんな理由が考えられますが、患者さんの中には手磨きで上手に磨けない方や、リウマチなどで手が不自由な方、あるいは普段はきれいに磨けるのに矯正装置が入ることでどうしても磨き残しがある方などの場合には、一度電動歯ブラシをお試しいただいてはいかがでしょうか。

このコーナーでは、３人の"スゴ腕歯科衛生士さん"

萱野美帆先生、萬田久美子先生、沢口由美子先生

に、よくあるセルフケア指導に関するお悩みについて、電動歯ブラシを活用した解決法を3回にわたってご回答いただきました。

第1回：萱野美帆先生
第2回：萬田久美子先生
第3回：沢口由美子先生

皆さん電動歯ブラシを用いた患者指導を長年行っておられ、ご自身のセルフケアグッズとしても使用しておられます。

それではさっそくスタートしましょう！

- - - - - - - - - - - - 第3回 - - - - - - - - - - - -

＜お悩み③＞ブラッシングが苦手な患者さん
定期健診のたびにTBIを行うのですが、歯ブラシの毛先の使い方の説明がうまくできません。患者さんにわかりやすい説明方法があれば教えてください。

回答いただいた先生：沢口由美子先生



＜沢口由美子先生ご略歴＞
1979年 東京都歯科医師会附属歯科衛生士専門学校卒業
約13年歯科医院に勤務後、フリーランス歯科衛生士となる
2010年 日本歯科人間ドックコーディネーター認定
2020年 予防歯科認定歯科衛生士

私がメインテナンスを担当している患者さんで
小臼歯に深いポケットがある患者さんがいらっしゃいます。
毛先の均一な通常のブラシだとポケット部分へのアプローチは難しいので、
ソニッケアーの「プレミアムオールインワンブラシ」を試してみました。

このブラシは、ブラシの外側と内側で毛先の角度と長さが変えてあって、外側の毛束が歯間部分や歯周ポケットに入り込んでくれるので、ポケットが深い患者さんに向いていると期待していました。

下図のように少し特殊な植毛のブラシなので、患者さんには「先端のオレンジ色の部分をこうやって当ててください」と事前に指導しました。





当て方は上図のようなイメージです。
大臼歯のポケットが深い患者さんの場合「ブラシを立てて先端のオレンジ色の毛の部分だけを当ててみて」と指導してもいいと思います。
大臼歯や小臼歯の場合、歯と歯の間の隣接が深い部分にも入りやすいので、ブラシ中央のオレンジ色の毛束が歯面に当たって、外側のブラシ先端が歯間部の隣接部分や歯頸部にも深く入ります。

下の写真が、患者さんに「オールインワンブラシ」で磨いてもらっているところです。





小臼歯のポケット部分には先端のオレンジ色の毛の部分だけを立てて当てるイメージで磨いてもらいました。歯間部分や歯頸部の深いポケットにアプローチしながら、ブラシの中央部分の毛束が歯面をしっかり磨いてくれているのが分かります。





続いて上顎の小臼歯です。こちらもポケットが深くて、歯肉との境目にプラークが残りやすいので、先ほどと同じように「オールインワンブラシ」を縦に当ててもらいました。



少し出血はしましたが、ポケット部分の汚れはかなり目立たなくなり歯面もツルツルになりました。

いかがでしょうか。歯ブラシの毛先の色などを歯ブラシの歯面に当てる方向（縦など）と一緒に説明キーワードとして織り込みながら説明するとわかっていただけやすいと思いますよ。

私はいつもセミナーで「この歯ブラシがこの患者さんに一生使ってもらう歯ブラシだと思っていたらおもしろくない人生ですよ。『もっと良くなるブラシがあるはずだ』『もっと楽しくていいはずだ』といつも私は思っていたい」とお伝えしています。

今回は電動歯ブラシをテーマにお話ししましたが、世の中にはいろんな種類の歯ブラシがあって、それぞれ形や毛先の形状、毛の材質の違いで使い勝手が変わります。
皆さんもさらに知識や経験を肥やしにして、提案の幅を広げてみてはいかがでしょうか。

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