歯科医師は、齲蝕の処置を行いつつ診断を行っている。 例えば、歯髄に近接すると覆髄をして歯髄を残すか、抜髄をするかなどと考えながら処置をする。 同様に筆者は、“子どもがどうして泣いているのか?”を診断することが大切だと考える。 泣くには、それなりの理由があるはずだ。 一般的に子どもが泣く理由は、①不安や恐怖 ②痛み ③甘えの3つがある。 またこれが、混在している場合がある。 例えば、待合室での泣きのほとんどは、②痛み より①不安や恐怖である。 当然、不安や恐怖を取り除く適切なアプローチが必要だ。 子どもの笑顔が溢れる診療室を目指すには、泣きを熟知する必要がある。 それぞれについて簡単に述べてみよう。 ①“不安や恐怖で泣く”のは、優しい言葉がけ・態度・手鏡を見せ説明をしながら行うなど不安や恐怖をとる工夫が必要だ。 治療の前に、小児に鏡を渡し、悪い部分を治すことを告げ(Tell)ながらその部位を見せ(Show)、そして治療を開始する(Do)。(Tell Show Do法) そして痛いもの・嫌なもの・悪いものは齲蝕であることを伝え、歯科医はこの悪い虫を退治してくれる味方であることを教える。 このようなアプローチで、徐々に不安がなくなりおりこうになる。 ②“痛くて泣く”のであれば、痛くない治療が必須である。 例えば、麻酔を打った後、タービンでの形成時に泣き出したとする。 この時に泣き出したのは、 A:タービンやバキュームの音に驚いた。 B:実は、麻酔が効いていなかった。の2つの理由が考えられる。 麻酔を打ったから効いていると思い、痛くて泣いているのに、不安を取り除くアプローチをしても効果がない。 だからこそ“泣きの診断”が重要なのである。 ③の“甘えて泣く”は、おもちゃ売り場の前でねだって泣くことを考えればわかりやすい。 泣けば、欲求が叶うためである。 つまり泣いたら保護者が助けに来てくれる・術者が治療を止めてくれると思っている。この泣きは幼稚園に入園前の子どもに多い。 まず、診療室で泣き声が聞こえれば、その理由を考えていただきたい。 続く 参考:岡崎好秀.小児歯科診療最前線! 子どもを泣かさない17の裏ワザ.クインテンス出版,2014. https://www.shien.co.jp/i/BK05583
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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