パブロ・ピカソ(1881~1973)は、前衛的な天才画家である。 一見して子どもにも描けそうな画風である。 “裸婦とパイプの男”を見ても裸婦の左側は正面、右は側面から描かれている。 どうして、彼の評価が高いかご存じだろうか? さて従来、一つの視点から描く遠近法が主流であった。 近くのものは大きく、遠くのものは小さく描く。 また,影をつけることで、より立体感を表現する。 まるで写真で撮影されたような写実的な絵画であった。 しかしピカソは、ここにまったく新しい画風を作り出した。 彼は,あるモデルを前に絵を描き始める。 ところが、ふと横からモデルを見ると、また別の美しさがあることに気づく。 そこで、その視点からも描き出す。 さらに、次々と新しい視点の美しさを見いだし描く。 こうして、一つの対象を多次元から描かれる。 ピカソが評価された理由は、“多次元的な視点”をキャンパスに閉じ込めたことなのだ。 考えれば、我々の見ている世界も同様だ。 今、この画面を見ている時、その周囲は目に入らない。また周囲の雑音も気にならない。 我々は、意識に応じて次々と視点が変わることがわかる。 さて、歯科医療においても口腔内検診表、スタディモデル・レントゲンX線写真・口腔内写真等の視点を総合して診断・治療に当たっている。 これらをもっと有機的に繋げれば、より良い臨床が可能となるだろう。 発達期における齲蝕や根尖病巣の診断・治療には、デンタルX線単純撮影が行われている。 一方、パノラマX線写真は、先欠や過剰歯の確認に利用するものの、咬合の診断には主としてセファロ分析が行われている。 しかしパノラマX線写真の読み方により、ある程度永久歯の萌出状態も把握することが可能だと思う。 第1世代の乳歯の空隙歯列と第2世代の閉鎖型歯列では、顎骨内で永久前歯の配列状態が同じであるはずがない。 両者は、パノラマX線写真では、どの様な違いがあるのだろう。 これを知ることで、将来の永久歯の萌出を予測し、患者への説明に用いることができる。 そこで次回から、発達期のパノラマX線写真の読み方について紹介する。 続く
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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