TOP>コラム>発達期における咬合の変化 その7 乳歯列のパノラマX線写真の読み方

コラム

発達期における咬合の変化 その7 乳歯列のパノラマX線写真の読み方

発達期における咬合の変化 その7 乳歯列のパノラマX線写真の読み方
発達期における咬合の変化 その7 乳歯列のパノラマX線写真の読み方
今から約30年前、大学の小児歯科での話。
ある保護者が担当医に「小児歯科で定期健診をかかさず受けてきたのに、どうして歯並びが悪くなったのですか?」と質問されていた。
当時はまだ乳歯齲蝕が多かった時代なので、咬合管理まで目が届かず、齲蝕予防が定期健診の中心であった。
その担当医は、不正咬合に気づき矯正科に紹介しようとしたのである。
保護者は齲蝕予防のみならず、健全歯列の獲得を目的に来院されていたのである。
今から考えれば、保護者の希望は当然のことと言える。
定期健診時に不正咬合の芽があれば、早期の対応や専門医へ紹介しなければならぬ。

さて、ここにA:乳歯空隙歯列(第1世代)、B:閉鎖型歯列(第2世代)、C過蓋咬合(第3世代)の口腔内写真(4歳時)がある。
それぞれの顎骨内では、永久前歯の配列状態が異なっているはずだ。

パノラマX線写真は、ある程度の萌出位置を診断し、不正咬合の芽を把握することができる。
そうすれば早期から、将来の永久歯の萌出状態を予測し、健全な歯列育成につなげることができるだろう。

さてパノラマX線写真を用い、萌出位置を診断するには、撮影時に最低限の規格化が必要となる。

まずフランクフルト平面を基準とし、頭部が上下・左右・前方後方位をとった場合の画像の特徴を紹介する。

その1:咬合平面の基準:咬合平面は上を向き撮影すると凸型に、下を向くと凹型となる。
(咬合平面が凹型を呈している。撮影時に小児が下を向いたと考えられる。)


その2:左右の基準:断層域より左右のずれがあると、向いた側の臼歯の近遠心幅径は縮小し、反対側は拡大される。 
(やや顔が右向きで撮影したため、下顎右側第1大臼歯は反対側に比べ縮小している。)


その3:前後の基準:前方位では前歯部の近遠心幅径が縮小し、後方位の場合は全体に拡大する。
(小児の位置が、前方なので上顎の乳前歯が縮小している。また下向きで撮影したため、咬合平面が凹型である。3級の咬合でも類似した画像となる。)


以上よりX線パノラマ写真で永久前歯の萌出位置を把握する場合には、まず1:上顎の咬合平面が水平(口蓋が水平)2:左右の臼歯の大きさが同等などを確認する必要がある。
                                                                           続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

tags

関連記事