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『日本全国で活躍する歯科衛生士さんインタビュー』高知いとう歯科 杉山由芽さん、小松 明さん

『日本全国で活躍する歯科衛生士さんインタビュー』高知いとう歯科 杉山由芽さん、小松 明さん
『日本全国で活躍する歯科衛生士さんインタビュー』高知いとう歯科 杉山由芽さん、小松 明さん

More Smile Webでは、新企画として全国各地の歯科衛生士さんにインタビューするコーナーがスタートしました。記念すべき第1回目は、高知県高知市の「いとう歯科」様の歯科衛生士さんからスタートします。


<第1回>
高知県高知市 いとう歯科
歯科衛生士:杉山 由芽(ゆめ)さん
      小松 明(めい)さん

※ 杉山 由芽さん(写真左)と小松 明さん


「いとう歯科」ではとくに訪問診療に力を入れておられ、院長の伊藤充孝先生は「三度のメシより嚥下好き」と自称されるほど、摂食嚥下に造詣が深い先生です。そんな伊藤院長のもとで勤務するお二人の歯科衛生士さんにお話を伺っていきましょう。

伊藤院長の取り組みが掲載された『デンタルマガジン』記事はこちらから
連 載:超高齢社会における歯科医療が果たす役割 Part 15 病態を把握し、薬を知る そして、いかに栄養摂取に貢献できるかが高齢者歯科に求められている
高知県高知市 いとう歯科 院長 伊藤 充孝
https://pdf.dental-plaza.com/dentalmagazine/no183/183-14/

「摂食嚥下障害」を学ぶため自院を一時閉院し、単身大阪へ
高知県高知市 いとう歯科 院長 /大阪大学歯学部 顎口腔機能治療部医員 伊藤 充孝
https://pdf.dental-plaza.com/dentalmagazine/no177/177-10/


―― まずお二人の勤務経験から教えてください

※四万十市出身の杉山さん。出産・育児を経て2019 年から「いとう歯科」に勤務。

杉山さん:私は歯科衛生士になったのは少し遅くて24、5歳の頃です。臨床検査を学びたくて専門学校に入ったのですが、1年勉強して「向いてないな」と思って、歯科衛生士を目指して同じ学校の歯科衛生学科に転入してあらためて勉強し直しました。歯科衛生士になってからは故郷四万十市で5年ほど歯科衛生士として勤務して、その後出産・育児を経て、2019年から「いとう歯科」で勤務しています。


※小松さんは、大阪、東京を経験し高知にU ターンしてきた。

小松さん:私は大阪の専門学校で歯科衛生士の勉強をしたあと、高知市内で3年ほど歯科衛生士として働いた後、東京に憧れて都内で歯科衛生士として勤務しました。でも「やっぱり高知がいいな」と感じて1年で帰ってきて、高知市内の歯科材料メーカーの営業を約2年間経験しました。


―― 伊藤先生は摂食嚥下を学ぶため大阪大学に研修に行かれて1年間休院されていましたね。杉山さんはそれ以前から「いとう歯科」で勤務されていたのですか
杉山さん:はい。伊藤先生が大阪に行かれる半年前ほど前から勤務していました。それから1年後に先生が大阪から帰ってこられて、再開院される際に声をかけていただいたんです。

  
※「いとう歯科」の外観と受付まわりの様子

―― 小松さんは歯科材料メーカーからどうして「いとう歯科」に?
小松さん:当初「いとう歯科」には営業担当として出入りしていて、伊藤先生からいろんなお話を伺ううちに「ここで働きたい」と考えるようになって、1ヵ月前に転職してきたところです。


―― それはすごいエピソードですね
小松さん:営業時代は新規開拓が主な業務で、やりがいもあったのですが、伊藤先生から「訪問診療は感謝されるし何より感動することばかりだよ」というお話を聞いて、魅力を感じ「やってみたいな」と思うようになりました。
現在、勤務し始めて1ヵ月(2022年6月末時点)ですが、週に4、5回は往診があり、伊藤先生が摂食嚥下だけでなく全身疾患などについていろんなことを教えてくださり、その知識や技術を往診ですぐに試してみたりなど、とても刺激になっています。


―― 杉山さんは訪問診療は「いとう歯科」が初めてですか
杉山さん:いいえ。以前勤務していた医院でも訪問診療をしていて、施設や居宅に伺って義歯調整や口腔ケアを主に行っていました。ただ「いとう歯科」では口腔内を診るのは最後で、全身の病態や既往歴などに配慮しながら、本人や家族の方とコミュニケーションを十分にとったうえでお口の中を診るのは、初めての経験で少し驚きましたね。


※伊藤先生と訪問診療に向かう杉山さん

―― 「口腔内を診るのが最後」というのは歯科医院として珍しいですね
杉山さん:そうなんです。「いとう歯科」では問診に十分な時間をかけます。最初は「お薬手帳」の内容を確認します。伊藤先生はまず「薬を知ること」が大事とお考えなので、予約のお電話の時点で「お薬手帳を必ず持ってきてください」とお伝えするようにしています。服用している薬から患者さんの病態を把握して、これまでの既往歴やご家族の状況などもお聞きしていきます。



―― 問診ではほかにどんなことをされますか
杉山さん:高齢の方やいろんな薬を服用されている方の場合、水分不足などで脱水症状になっていることがあるので、「ツルゴール反応」といって手の甲を指でつまんでその反応を診る触診などを行っています。


※手の甲を親指と人差し指でつまんで、少し持ち上げます。離すと元に戻りますが、脱水があると元に戻るまでに時間がかかり、2 秒以上かかると脱水を疑います。

小松さんが来てくれるようになって、訪問診療にも私たち歯科衛生士だけで行くことも増えてきたので、こうした触診方法も伊藤先生から教わって実践できるようになってきました。


―― 訪問診療をしていてどんなところが楽しいですか
杉山さん:訪問診療を始めた当初は、この方の病態などを知らないまま、ただただ口腔ケアだけを行って終わりでしたが、「いとう歯科」で病態の把握がどれだけ大事か、少しずつ理解できるようになってきました。
例えば、認知症の方の場合、日によってコンディションがまるっきり違っていて、今日はご機嫌で楽しい会話やケアもスムーズにできたからといって、翌週も同じ状況を期待しているとひどく不機嫌で「帰ってくれ」と言われることもあります。最初は「どうして?」と悲しい気持ちになりましたが、伊藤先生から認知症の種類によってさまざまな症状があることを聞いて、「難しいコンディションの時もある」と理解し受け止められるようになってきました。
以前は、嫌がっていても何がなんでもて口腔ケアしなければ、という気持ちでやっていたので、精神的にも憂鬱で負担でしたし、何より患者さんが辛かったと思います。今はまず患者さんの気持ちに寄り添うことを優先できるようになって、「今日はケアはやめておこう」という発想になれるようになりました。それからは、患者さん一人ひとりをより理解できようになったと感じますし、やりがいや感動もさらに広がって、毎日楽しく取り組んでいます。


※施設での口腔ケアの様子

―― 訪問診療の際に気をつけているポイントなどがあれば教えてください
杉山さん:とくに居宅の場合、患者さんはもちろんですが、ご家族とのコミュニケーションも大事にしています。私たちは、患者さんについて訪問したときの状況しか分からないので、普段の患者さんの様子などをヒアリングするようにしています。

小松さん:私はまだ訪問診療を始めたばかりなので、日々、同行させていただくなかで勉強している最中です。私から見ると、すでに杉山さんは訪問先の患者さんとの人間関係ができているので、困っているようには全然感じないです(笑)

杉山さん:みなさん実はお話好きなのに会話に飢えている方が多いので、すべてきちんと聞いてあげることや、例えば、認知症の方だと、真冬なのに「暑い」とおっしゃるなど普通とは真逆の反応を示されることもありますが、そんな時はできるだけ否定的な言葉は使わずに「そうですね」と同調するようにしています。


―― お二人が「歯科衛生士になって良かった」と感じるのはどんな瞬間でしょう
杉山さん:そうですね。外来診療より外に出て往診に行く方が好きというか、移動中や訪問先で先生からいろんなことを教えていただけますし、それを患者さんに応用することで喜んでもらえることも嬉しいですし、私たちが感動をもらえることが何よりありがたいと感じています。
訪問先の方から「ありがとう」と感謝の言葉をいただくことも多いですし、私は人と話すのが好きなので口腔ケアに行ってもよく患者さんに話しかけるのですが、「今日はほとんど人と話してないがよ あなたが来てくれて元気が出た」と言ってくださることもありますし、仕事として口腔ケアを行うだけでなく、お互いのいろんな出来事に一緒に喜び合える。そんな瞬間に、「歯科衛生士になって、訪問診療に携わって良かった」と感じます。

小松さん:最近、外来だけでなく往診にも同行する中で、身体が不自由で外出できない方のための気分転換に、楽しい会話などでリフレッシュしていただくことも歯科衛生士に求められるスキルだと感じました。お口のケアの技術を磨くことはもちろんですが、そうしたコミュニケーション能力を高めることでも患者さんに喜んでいただける、とても尊い仕事だと感じています。


※居宅での口腔ケアの様子と患者さんと笑顔で記念撮影


―― 訪問診療で得た学びが外来で活かせた事例はありますか

杉山さん:訪問診療では患者さんのお口以外の身体の状態や食事(栄養)の摂取状況など、外来に比べてコミュニケーションを取る機会が多いのですが、最近では外来の患者さんに対しても積極的に話しかけたりなど会話の機会を増やすようになりました。また、高齢の患者さんの場合、来院されてチェアまで歩いて来る時の様子や表情、体調を意識して見るようになりました。何かの拍子に突然つまずいてしまうこともあるので、とくに歩き方は注意して見て、きっちりチェアに腰掛けるまで支えるなどフォローを忘れないようにしています。


―― 歯科衛生士として今後マスターしたいことがあれば教えてください
杉山さん:やはり薬に関する知識をもっとつけたいですね。「この方はこの薬を飲んでいるからこういう症状があるんだ」などがまだ把握できていないので、今後もう少し勉強していきたいと思います。今までは伊藤先生に聞いてばかりでしたが、今後は診療の合間など自分でも調べていきたいです。


小松さん:まずは全身疾患について学びたいです。口の中だけじゃなくその方の全身の健康状態を把握したうえで、摂食や嚥下に関する知識も徐々に増やしていければと思っています。


―― お二人が好きな衛生士業務は何でしょう
小松さん:私は普通に印象を採るのが好きです。練る時に気泡が入らないようにとか緊張しますが、ひたすら練っている瞬間が楽しいです。あと歯石を取るのも好きですね。

杉山さん:私も歯石を取るのは好きです。とくに超音波で歯肉縁上の歯石を取るのが楽しいです。縁下はできるだけ傷つけないようにポケットの深い部分だけクリーニングします。患者さんのご負担にならない範囲で少しでも見つけたら取るようにしています。


―― ご自分で勉強する場合、どんな手段で調べることが多いですか
杉山さん:学生時代に読んでいたテキストを見直すこともありますが、最近ではインターネットで検索することが多いですね。あとはYouTubeで歯科衛生士向けの動画も結構見ます。先生によって治療方法や手順に違いがあったり、処方する薬も同じではないので、「こんな方法があるんだ」とか「こんな製品や薬があるんだ」というのは動画を見て知識を得ることも多くなってきました。


―― 将来目指す歯科衛生士像について教えてください
小松さん:訪問診療を始めたばかりで、覚えることがたくさんありますが、とにかく今とても楽しいので、将来も訪問診療を続けていきたいですし、口腔内だけ診るのではなく、患者さんの生活にもしっかり関わって、少しでも明るく暮らしていただくためのお手伝いができる歯科衛生士になりたいです。

杉山さん:高知はとくに高齢化が進んでいる地域ですが、訪問診療をまだご存じない方も多いので、まずは訪問診療の存在をもっと広めていきたいです。さらに知っていても依頼の仕方やタイミングをご存じない方もいらっしゃいます。それを高知から発信していく活動にも関わっていきたいですね。



―― ここからは診療からはなれて、高知について伺いたいと思います。まず高知のいいところはどんなところでしょう
小松さん:私が高知育ちということもあるかもしれませんが、まず人柄が優しくて温かいです。あと自然が好きなので、高知にはきれいな川や海が近くにたくさんあって少し車を走らせたら行けるのが気に入っています。食べ物も美味しいし、何より空気が美味しいので、住みやすいです。東京、大阪どちらにも住んでみましたが、私にとっては高知がいちばんです!

杉山さん:私は四万十市出身で、街といえば短大の時に高知市内に住んだくらいです。県外に住んだことがないので「高知の良さ」はそれほど分かっていないかも。でも5歳の息子がいるので、外に遊びに行くことが多いです。先日も友人家族とバーベキューをしました。やはり自然が多いので気持ちいいですね。


―― 高知のオススメの食べ物を教えてください

※高知人のソウルフードは何と言っても「カツオのたたき」。

杉山さん:いちばんはもちろん「カツオのお刺身やタタキ」です。高知の人はおそらく1週間に一度は食べていると思います。また、同じカツオでもとくにお酒好きな方にオススメなのは「カツオの酒盗」です。


※高知名物の一つ、イワシの稚魚「どろめ」。

ほかに「メヒカリ」といって深海魚の1種ですが、この一夜干しやフライも美味しいです。他にはイワシの稚魚「どろめ」や、マアナゴの稚魚「のれそれ」、珍しいところでは「ウツボ」の唐揚げなんかも高知の人はよく食べます。ただし「どろめ」はあまり食べすぎると気持ち悪くなるので注意が必要です!(笑)。


―― たくさんあってどれも美味しそうですね。高知のオススメのおみやげは何かありますか

小松さん:一般的には「芋けんぴ」が有名ですが、私のオススメは「泰作さん」というお菓子です。和風なネーミングですが羊羹をクッキー生地でサンドしていて、私が小さいときからある懐かしいお菓子なんです。JR高知駅や高知龍馬空港でも売っていると思いますからぜひ一度食べてみてください。


―― とても参考になりました。
楽しくてためになるお話をありがとうございました


著者杉山 由芽 / 小松 明

高知県高知市/いとう歯科 歯科衛生士

杉山 由芽 / 小松 明

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