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『日本全国で活躍する歯科衛生士さんインタビュー』さっぽろプロケア歯科クリニック 井上萌絵さん

『日本全国で活躍する歯科衛生士さんインタビュー』さっぽろプロケア歯科クリニック 井上萌絵さん
『日本全国で活躍する歯科衛生士さんインタビュー』さっぽろプロケア歯科クリニック 井上萌絵さん
『日本全国で活躍する歯科衛生士さん探訪』
第2回目は札幌市豊平区にある「医療法人博和会 さっぽろプロケア歯科クリニック」
の主任歯科衛生士 井上萌絵さんにお話を伺いました。

第2回
北海道札幌市 医療法人博和会 さっぽろプロケア歯科クリニック
主任歯科衛生士:井上 萌絵さん


主任歯科衛生士 井上 萌絵さん

―― 最初に井上さんの歯科衛生士さんとしてのキャリアを教えてください
今年で歯科衛生士10年目になります。歯科衛生士学校を卒業して2014年4月に札幌市南区にある本院の「ときわプロケア歯科クリニック」に就職しました。その後、二度の出産を経て2020年9月から、現在の「さっぽろプロケア歯科クリニック」で勤務しています。


「さっぽろプロケア歯科クリニック」の皆様(取材時)。
中央が野村昌史院長、左端が井上さん。

―― 歯科衛生士さんは何名勤務されているのでしょう
訪問診療を担当する歯科衛生士を除いて5名です。私の他には、5年目のスタッフが1名、3年目が1名、昨年入った新卒のスタッフが2名ですね。


―― 井上さんが歯科衛生士を目指した理由をお聞かせください
もともと医療系の仕事に携わっていた私の母から、専門職になるよう勧められたことがきっかけです。それでいろんな専門学校を見学したなかで、歯科衛生士の専門学校でアルジネートを使って指の型を採る体験があって、まったくの「未知の世界」になんだか興味が湧いて、「やってみよう」と漠然と思ったんです。


―― それまで歯科医院には馴染みがなかった?
そうなんです。私今まで一度も虫歯になったことがなくて…。決してきれいに歯が磨けていたわけではないんですが、もともと歯が丈夫なタイプのようです。なので、歯医者さんに対して「怖い」とか「痛い」とかいうマイナスイメージがなかったので踏み込みやすかったことも歯科衛生士を目指しやすかった理由かもしれません。
あと、女性として長く働けるし、歯科医院はたくさんありますから就職に困らないかなと(笑)。将来性を考えて現実的な視点で選びました。


―― 井上さんが担当する主な業務について教えてください
私は定期健診の患者さんを診ることが多くて、とくに歯周病管理がメインです。
以前勤務していた主任歯科衛生士さんが退職される際に既存の患者さんをたくさん引き継ぎました。あと、私がスタッフの中で年上なこともあって、いろんな意味で難しい患者さんを診ることが多いですね。主任を任されているのですが、小さな子供がいるので、現在時短勤務にしてもらっています。


―― 日々患者さんと接する中で、どんな思いで向き合っておられますか
うーん、そうですね。若い時はあまり何も考えていなかったというか、ひたすら目の前の患者さんにトラブルやクレームが起きないようにだけを考えていたような気がします。
その後、結婚、出産などの人生経験を積んでくると、「人を見る目」が養われるというか「この方はこういうことに関心があるんだな」といったことがだんだんわかってきて、自然とその方に喜んでもらえそうな話し方や話題を振ったりできるようになってきました。

そうして患者さんと仲良くなると、ファンになってくれるというと少しオーバーですが、私を信頼してお互いにいろんな相談ごとなどをするようになるんです。そういう部分に楽しみがあるので、お口の中を良くしたいということはもちろんですが、たくさんの方と信頼関係を築いていくのが楽しいと感じています。




―― なるほど それはやりがいにもつながりそうですね
はい。あと、すべての患者さんではありませんが、以前よりはお口の中だけでなく患者さん全体を見て対応できるようになったと思います。


―― 井上さんがそうやって毎日歯科衛生業務に打ち込めるパワーの源はどこにあるのでしょう
やはりいちばんは母親になったことだと思います。もう自分だけの人生ではないですし、養う存在がいることで「頑張ろう!」と思えるんです。それはメンタルだけでなく体力面でもいい影響をもたらしてくれていると感じます。


――現在、井上さんは歯科衛生士のリーダー的存在ですが、若いスタッフさんの指導や教育はどのようにされておられるのでしょう
私が新卒で勤務した当初、本院にはいろんな年代の歯科衛生士がいて、20年以上のキャリアを持つ方と一緒に勤務したこともありました。もう本当に毎日が勉強で、感じる部分や吸収できるところがたくさんありました。
その当時から当院では歯科衛生士は担当制だったのですが、患者さんを丁寧に診ることができなくて、その結果治療がうまく進まないことなどがあると、ベテラン衛生士さんから「今まで何を見てたの!」と容赦なく指摘されることもしばしばでした(苦笑)。
また、指導がうまくできなくて口腔環境が改善してないのに次のステップに進めようとすると私が至らない部分をみんな気づいて指摘してくれたんです。その時はかなりショックでへこみましたが、とてもいい勉強になったと今になってつくづく思います。
その頃のベテラン衛生士さんは、皆さんご自身で信念を持っていて、とにかく患者さんのことをいちばんに考えて行動しているのが伝わってきました。今、私が指導する立場になって、「あのとき先輩が言ってたのはこういうことだったんだ」「先輩大変だっただろうな」「やっぱりすごいな」とあらためて感じます。

だって注意するのって難しくないですか?
「どうしたら嫌われないかな」と考えしまって注意できないこともあります。指摘したり注意する際には、モチベーションを下げないような言い方をしたり、その後のフォローを大切にしています。


―― たしかに指導するのって難しいですよね
ええ とても難しいです。でも溜めてしまうとよけい言いづらくなるので、思ったことはできるだけすぐに言うようにしています。もちろん一度自分の中で整理して感情にまかせて言わないようにしています。また、言ったあともずっとプンプンしていると “近寄りがたい人”になってしまうので、一度注意した後は切り替えていつも通り普通に接するように心がけています。


―― 近頃の若い歯科衛生士さんを身近で見てどんなことを感じますか
私はスタッフ同士の問題はあまりに気にしていなくて、とにかく患者さんに迷惑をかけるのがいちばんやってはいけないことだと思っています。
最近の若い方のなかには表情や雰囲気にその日の気分や感情がでやすいと感じることがあります。
本来は、プライベートなことはできるだけ仕事場に持ち込まないのがルールだと思いますが、私としては患者さんにさえ伝わらなければOKにしています。でも、もう少し切り替え上手になって欲しいなとは思いますね。
あとは、「どうせ私なんて…」と自己肯定感の低さを感じることがあります。とにかくポジティブさを持って欲しいですね。
私は根っからのポジティブ志向で、「なんとかなるさ!」というタイプなので
余計にそう感じるのかもしれません!(笑)


―― 勤務していて嬉しかったことはなんでしょう
本院で勤務していた頃のことですが、本院ではお子さんからお年寄りまでいろんな年齢層の方が来院される地域密着型のクリニックなので小児の患者さんもよく診ていたんです。いつも親子で来てくださって、そのうちに仲良くなっていろんなお話をするようになったのですが、私が産休に入ることになったとき、その方がプレゼントをくださったんです。別に退職して会えなくなるわけじゃないのに…、でもそれがとても嬉しかったのを覚えています。出産後に職場復帰した際も「出産お疲れさま」とまたプレゼントをくださって…。

他にも、幼稚園に通う患者さんが頑張って手紙を書いてくれたり、お母さんからちょっとしたスイーツをいただいたり、「赤ちゃんにもやさしいタオルだよ」と言ってプレゼントしてくださる方もいらっしゃって、そうした出来事が私にとって大きなターニングポイントになったと感じます。「今まで頑張ってきてよかった、辞めなくてよかった」と心の底から感謝と喜びがこみ上げてきました。それ以来、歯科衛生士の仕事を辞めようと思ったことはありません。


―― えっ!辞めたいと思ったことがないんですか!?
ないですね。ずっと働きたいと思っています。妊娠中もギリギリまで働いて、出産後もすぐに復帰したい一心で急いで保育園を探しましたから。
産休や育休の終わりが近づいてきたら「もう終わっちゃうな」と少しは思いましたが、「辞めたい」とは思いませんでしたね。もちろん軽い気持ちで思うことはないことはないですが(笑)、本気でというのはないです。おそらくこの先もずっと働いているでしょうね。


―― 井上さんが仕事していていちばん楽しい瞬間ってどんな時でしょう
このさっぽろプロケア歯科に来てからSRPがとても上達した気がしているんです。上の立場の方がいないので「自分がしっかり診ないと」と思うからかもしれません。
これまでシャープニングもあまり勉強する機会がなくて、クリニックを法人化してそのあたりもキチッとルール化していこうという矢先に産休に入ってしまったんです。
復帰したら他のスタッフさんはみんなできるようになっていたので、後輩に教えてもらいました。
丁寧にシャープニングしたスケーラーを味わった瞬間、「今までのスケーラーは何だったんだろう」とその使い心地に驚きました。
それまで実はあんまりSRPは好きではありませんでしたが、新たな楽しさを見つけることができた感じです。やはり苦手な手技をやっている時って全然楽しくなかったな思います。今は、「この人の歯石は取れやすいな」「この人のは固いな」とかいろんな感触が探知できるようになって、とにかく楽しいですし、やっぱり自分が使う器具はきちんとメンテナンスしておかないダメなんだと新たな気づきを得ました。


―― 仕事で疑問や分からないことがあったらどう対処していますか
私は主任という立場ではありますが、先輩だから「後輩には聞きにくいな」とかはあまり思わないので、例えばセミナーを受講してきた後輩がいれば「どんな内容だった?」と積極的に聞きますね。新人のスタッフさんに混じって一緒に教えてもらうこともよくありますよ。
さきほどのシャープニングについても、後輩の使っていたスケーラーを貸してもらったらとよく研げていてとても使いやすかったので、「私も頑張って研いでみよう」とチャレンジして、その後輩に「ちゃんと研げてるかな?」とチェックしてもらいました。


―― 新人の衛生士さんからはどんなことを聞かれることが多いですか
わりと基本的なことが多いですね。
目の前のことにいっぱいいっぱいで次を考える余裕がないので、「この後どうしたらいいですか」といった小さなことをよく聞かれます。そのうち「この患者さんなんですが…」と相談に来てくれる時がくるだろうと期待して待っています(笑)。
大したことじゃなくても先輩や先生に症例について気軽に相談してほしいなと思います。
先生もそうやって質問してくれれば意気に感じて「やる気があるスタッフだな、頑張ってるな」ときっと思ってくださると思いますよ。

私は折に触れて「先生、こんなにキレイになったので見てください」とか「○○さんが言ってくれるのを多分先生は待ってるよ、言ってみたら?」などとアドバイスするのですが、みんな先生の気持ちをくすぐるようなことはあまりしませんね。そこはもう少しうまくすれば先生とも良い関係が築けるのにな、と少し歯がゆくも思っています。


―― 今後学んでいきたいことや目標があればお聞かせください
手技はまだまだ道なかばなので、引き続き頑張っていきたいです。今は時短勤務なこともあって診療後に残って他のスタッフと一緒に練習することもできていません。本当はセミナーなどにももっと行きたいという気持ちがある反面、家族との時間も大事にしたいですし…。子供が熱を出したりすることもたまにあるので、セミナーも簡単に申し込めないということもあります。子供が大きくなって手が離れたら、もっとセミナーにも行きたいしみんなの練習も見たいと思っています。あと自分の練習する機会も増やしていきたいですね。


―― 歯科衛生士として長く勤務していくヒケツは何だと思いますか
そうですね。なにより自分自身が仕事を楽しむことでしょうか。私の経験上、仕事が充実すればプライベートもそれに合わせて充実したものになると感じています。その逆もあると思いますが…。

皆さんもイヤで歯科衛生士という仕事を選んだわけではないと思いますから、「もっと楽しんで仕事して欲しいな」って思います。
実は私は「無理して頑張っている自分」が好きなんです(笑)。
産休・育休も最短で職場に復帰して「私って頑張ってる!」と自分で自分を褒めてました。
周りの友達もそれを見て褒めてくれることもありますし、私と同年代で子供を持って仕事をリタイヤした方も「娘の友達の中でいちばん頑張ってるよ!」と嬉しいことを言ってくださいます。
やっぱり「見てくれているんだな」と思うと嬉しいですし、励みにもなります。
認めてもらえるから頑張れるっていつも思います。
「こんなに頑張ってるママいないよね!」と自分で自分をアゲながら
「今日も頑張ろう!」「ずっと働き続けよう!」という毎日です。
これからも歯科衛生士という仕事を完全に辞めてしまうことはなくて、パートなど何らかのカタチで関わり続けると思います。



取材当日、スタッフのお一人のお誕生日会が始まった。野村院長をはじめ皆さんのとびきりの笑顔に取材スタッフも癒されました!

―― 休日はどんなふうに過ごしておられるのでしょう
お休みの日は仕事のことは考えずに家族と外出することが多いですね。
1日中家で過ごすということはほとんどなくて、例えば動物園に開園前一番乗りでいったり
朝からどこかへ出かけることが多いです。
「今日は何をしようか」と旦那さんと話して行き先を決めてから、その日は必ず外食して家事は一切しないようにしています。
最近は子供も大きくなってなんでも食べられるようになったので、いろんなところに行って楽しんでいます。


―― 最近興味があることは何かありますか
う〜ん やっぱり子供のことですね。
小さな子供を持つ今時のお母さんって私と同じように外で働く人も多いですよね。
そんな働くお母さんの子供事情はとても気になります。
なのでよく同年代の子供を持つ患者さんがいらっしゃれば
「保育園どうされました?」とか
小学校1年生のお子さんがいたら
「お友達は何人くらい同じ学校にいってますか?」など聞いてしまいます。
昔は近所同士だったらみんな同じ学校に行くのが当たり前でしたが、
今はいろんな選択肢があるので、同じ年齢の子供がいるととても盛り上がりますね。
「こんなおもしろい保育園があるよ」など患者さんといろいろ情報交換ができて楽しいです!


――診療からちょっと外れてしまいましたね(笑)。
ではついでに札幌のいいところを教えてください
そうですね。私は札幌生まれ札幌育ちで他を知らないので、
正直ピンと来ないのですが、車ですぐ行けるところにたくさんの自然があることでしょうか。
私の姉は一時期東京で暮らして今は札幌に戻ってきたのですが、
「子供を連れてフラッと遊べるところもあるし、車も少ないので安心できる」とか
「自然があると子供を育てやすい」とよく言っていますね。
私は札幌から離れるつもりは初めからありません。近くに大きい公園もあるし、
「道の駅」で馬に乗れたりもするんですよ。
遊園地の乗り物なんかは古いですが、その分人も少なくて子供たちはいつも楽しんでいます!


カメラマンの突然のムチャ振りのポーズ依頼にも、快く応じてくださった野村院長と井上さん。
視線の先には何が見えているのでしょうか?




――最後に札幌や北海道のおすすめグルメを教えていただけますか

札幌はやっぱり「スープカレー」です。
学生の頃スープカレー屋さんでアルバイトするほど大好きでした。
同じ豊平区にある「ビストロ ミナミヤ」というお店なのですが、テレビ局が取材に来るほどの有名店でとってもおいしいので、ぜいひ札幌にお越しの際には寄ってみてください!


楽しく勉強になるお話をありがとうございます。
井上さんのますますのご活躍を期待しています!


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