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「ノーベル賞の思い出」

2019/12/2 デンタル〇〇デザイン

スウェーデンに留学した2000年の時の話です。マルメ大学歯学部カリオロジー講座の私の部屋に、一本の電話が入りました。「あなたをノーベル賞授賞式に招待したいのですが、行く気はありますか?」ノーベル賞の国、スウェーデンに来ているとはいえ、「そんなことはありえない、誰かのいたずらなのだろう」と疑いながら、「あのノーベル賞ですか?!」と答えました。


<マルメ大学歯学部カリオロジー講座待合室>

そして、話の続きを聞き、何度も「あのノーベル賞のことなんですか?」と聞き返していると、どうもこれは本当の話で、ストックホルムのロータリークラブが、毎年、その年に世界各国からスウェーデンに留学しているロータリー財団の奨学生を招待してくれるのだということがわかりました。何というボーナスでしょうか。ロータリー財団の奨学金によって留学の夢が実現したことや、受け入れ地区の一人のロータリアンが生活の諸々をお世話してくれることだけでも、感謝しきれない気持ちで一杯だったのですが。


<クリスマスツリーが飾られたマルメ大学歯学部>

「授賞式の後にホテルでのお食事も招待します」と言われ、ノーベル賞の晩餐会にまで招待されているのだと思い、「どのような服を着ていったらいいのでしょう?」と聞くと、「あなたが持っている服の中で一番良いものでいいですよ」と言ってくれたので、学会用に持ってきていた一張羅のスーツを着て、12月10日、雪のストックホルムへ向かいました。正直なところ、ストックホルムに着いてもまだ疑っているくらいだったのですが、待ち合わせ場所で一人のスウェーデン人男性と、出身国が様々な留学生たち5人ほどと会い、いたずらではないことをようやく確信したのでした。授賞式会場は日本の中堅都市の市民会館程度の小ぢんまりしたコンサートホールで、参加者に配られるチケットもペラペラの紙だったり、賞を授与するスウェーデン国王は時々足を組んだりして緊張感はあまりなく、意外にもアットホームな雰囲気でした。その年は白川英樹先生が授賞されたので、一緒に参列した留学生たちが日本人の私に「おめでとう」を言ってくれました。


<授賞式に配られたチケットとパンフレット類>

ノーベル賞では、スウェーデン人のプレゼンテーターが授賞者の国のことばを予め学んで、授賞者を紹介します。白川先生の番が来た時、プレゼンテーターの一生懸命な日本語はほとんど理解できなかったのですが、それぞれの国の文化を尊重するスウェーデン人の心遣いに胸が熱くなりました。実は、私たちがノーベル賞に参加するのはここまでで、恒例の晩餐会の時には近くのホテルに移り、晩餐会に負けないほどの素晴らしいコース料理をご馳走になりました。その頃、指導教授だったダグラス・ブラッタール先生は、私の誤解のために、一晩中、晩餐会のテレビ中継番組の中で私を探していてくれたそうです。

<晩餐会が行われる市庁舎>

それから16年後、私は再び12月10日のストックホルムを訪れました。今回は、フッ化ジアンミン銀の開発者である西野瑞穂先生とご一緒に。ノーベル博物館に行って授賞式の中継を大画面で見、晩餐会の時には市庁舎の真向かいにあるホテルの部屋で窓にへばりつきながら、ダンスをしている人影らしいものを眺めました。西野先生が約50年前に開発されたフッ化ジアンミン銀の効果が、現在、世界中で見直されていることから、西野先生を授賞式に招待していただけないかなあと、手を尽くしてあのロータリークラブを探してみたのですが、どうしても見つからず、やはり、16年前のことは夢のような出来事だったのだなあという気がしています。しかし、歯科でのノーベル賞級の発明をされた西野先生とのスウェーデン旅行は、さらに夢のような貴重な経験で、同じく忘れられないノーベル賞の思い出となりました。


<ノーベル博物館のカフェでいただいたメダルチョコ付きデサート>