Dental Life Design

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意外と知らない海外歯科事情のお話
Vol.1 台湾編

2018/10/10 デンタル〇〇デザイン

私が好きな言葉は「NEVER GIVE UP!」

大切なのは決してあきらめない気持ちです。

~診療所のフランチャイズ化に成功した台湾人歯科医師~



賴郁樺(Yu-Hua Lai)醫師
康緹牙醫診所 院長
亞太口腔臨床醫學會 理事長

  • ●台湾で歯科診療所をフランチャイズ化し成功する医師とは?
  • ●成功の秘訣は若い医師たちとの関係性にあり
  • ●今後、台湾の歯科医療発展に必要だと考えること



■若くして診療所のフランチャイズ化に成功

今回スポットをあてる国は「台湾」です。
海に囲まれ、美しい自然に彩られた台湾。
映画、文学、アート、デザインなど文化面でも世界中からおおいに注目されています。
そして経済も好調。
失業率の低さ、株価の高さ、給与の上昇率は世界トップレベル。
台湾の動向は地球規模での関心事なのです。

そんな勢いのある台湾で、画期的な運営方法で一躍「時の人」となったひとりの歯科医師がいます。それが台湾最大の行政区「新北市」にある「康緹牙醫診所」の院長、賴郁樺(Yu-Hua Lai)さん。賴先生はなんと「診療所のフランチャイズ化」を推進し、72軒(*)もの医院を束ねる「賴グループ」を形成しているのです。
(*)72軒中66軒がすでに開業し、3軒が内装の工事中。3軒は開業準備中。

いまや若い歯科医師たちの憧れの的となった賴先生は6月15日(金)に株式会社モリタ大阪本社にて開催された「歯科衛生士制度導入についてのディスカッション」に参壇されました。 台湾からは賴先生をはじめ、若き歯科医療従事者が3名。日本からは歯科衛生士の酒井みゆきさん、三原香織さんの2名が同席し、ディスカッションがスタート。


台湾ではまだ施行されていない、そして導入が予定されている国家資格「歯科衛生士制度」について賴先生は興味津々。まず歯科衛生士の三大業務「歯科予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」ついて日本側から説明があり、大きくうなずく賴先生。「日本には歯科医師会が、ブランクが空いた歯科衛生士の復職を支援する慣行がある」との発言に対し、賴先生は「台湾にも導入すべきだ」と強い関心を示していました。
続いて賴先生から日本側へ「歯科助手と歯科衛生士の待遇の違い」「歯科衛生士の給料と仕事の満足度」という踏み込んだ質問が。これは今後、雇用することになる歯科衛生士たちに対し、できるだけよい環境で働いてもらいたいという賴先生の気持ちの表われからでした。
また、賴先生がこれまで歯科助手に対し「株主」という形で開業の支援をしてきた事例が紹介されると、今度は日本側から羨望と驚きの声が挙がりました。
その後、「歯科衛生士制度の役割と位置づけの大切さ」について有意義な議論が交わされ、盛会のうちに幕を閉じました。

そんな台湾の新たなカリスマである賴先生が来日しているこの貴重な機会に、現在の台湾の歯科医療を取り巻く状況と、診療所のフランチャイズ化を成功させるまでの道のりをおうかがいします。

■台湾の歯科医療技術が世界の上位にある理由とは

――賴先生はいま、おいくつでいらっしゃいますか。
「1976年生まれの42歳です。いつも、もっと年上に見られるのですが」

――まだお若いのに活躍されていて素晴らしいです。歯科医師になられて何年目ですか?
「2001年に大学を卒業し、2003年に第一軒目の診療所を開業しました。なので今年で15年目を迎えます」

――15年間、歯科にたずさわられて、現在の「台湾の歯科医療」をどのように感じていらっしゃいますか?
「台湾の歯科医療技術は世界でも上位にあると思います。なぜならば台湾は保険制度が完璧で、一般の方の99%はちゃんと検診に訪れます。検診を受ける患者さんが多いとドクターが治療を実践的に学べる機会が増えるので、テクニックも向上するのです」

――ということは、現在の台湾は歯科医療従事者にとって恵まれた環境にあるのですね。
「ただ、いいことばかりではありません。保険制度が変わって保険点数が安くなったり、人件費があがったり、収支のバランスが悪くなってきています。利益が出にくくなり、歯科業界全体は経営という点で厳しくなっているのが現状です。反面、賃貸料はこの15年間、そんなに変わっていない。そこが助かっています」

■「若い歯科医師をサポートしたい」という気持ちから始まった

――なるほど。歯科医師たちにとって決して明るい状況だけではないのですね。そんななか賴先生は(開業を準備している医院を含め)72軒目もの診療所をフランチャイズ化して大成功を収めていらっしゃいますね。診療所のフランチャイズ化をはかる歯科医師は賴先生のほかにいらっしゃるのですか?
「いいえ、台湾では私だけです」

――おお! 賴先生はパイオニアでいらっしゃるのですね。現在、賴グループにはどれくらいの数の歯科医療従事者がいるのですか?
「ドクターは500人くらい。歯科助手は700人くらいいます」

――そ、そんなに大きなグループなのですか! すごいですね。賴先生のほかに誰も診療所のフランチャイズ化をはからないのはなぜですか?
「とても難しいからです。パートナーと連携したいのだけれど、なかなか個人どうしの意見が合わず喧嘩になったり、解散したり。あるいは開業すること自体がたいへんなので、疲れて連携をあきらめてしまう人が多いのです」

――なるほど。心をひとつにするのは難しいのですね。では賴先生はそもそもなぜ診療所をフランチャイズ化しようと思われたのですか?
「もともとは『開業をしたいと考えている若い勤務医を助けたい。支援したい』という気持ちだけでした。『フランチャイズ化をしたい』『○○軒を目標にする』などという考えはなかったのです。現在も目標軒数などはありません。グループを大きくしたいと言ったこともありません。若いドクターを全力でサポートしていった結果が、現在の姿なのです」

――大きな賴グループは、歯科医師を助けたいという熱い想いの集まりだったのですね。では診療所のフランチャイズ化に成功した秘訣はなんなのでしょう。
「自分の利益だけを考えるのではなく、『パートナーの利益』も考えること。それがもっとも大事なことだと思っています。私はそれぞれの医院の株もそんなに持っていないです。およそ9割は若手のドクターに株をあげています。自分が儲けることは第一ではないのです」


■若い歯科医師とは実の親子のように接する

――成功の秘訣が「パートナーの利益を考えること」とは、素晴らしいです。誰しもが賴先生のようには考えられないですよね。どうずればそんな良好な関係を築けるのでしょうか。
「若手のドクターを実の子どもだと思えばいい。私は日ごろから本当の親子のようにコミュニケーションをはかっています。勤務医から『僕も院長になりたい』『開業したい』と言われたら、父親になった気持ちになって、どうすればいいかを一緒に考えます。実の子の幸せを願わない親はいませんから。そうやってだんだん賴グループの診療所が増えていったのです」

――若い歯科医師たちを自分の子どもだと思って接していらっしゃるのですね。賴先生が多くの歯科医師から敬われる理由がよくわかりました。ではフランチャイズ化をはかるうえでご苦労はございますか。
「どんな家庭でも、親子だから必ずしも仲がよいわけではありませんよね。むしろ親子だからこそ意思の疎通がうまくいかない場合もあります。子を想う私の気持ちが伝わらず、反抗されることもあります。どんなに私が開業のために時間を割いても、がっかりされることもあるのです」

――支えようとしている側が反抗されるのはつらいですね。そんなとき賴先生はどうされるのですか?
「『いつかわかってくれる。いまは理解してもらえなくても、いつか理解してもらえる』。そう考えたらすっきりしますし、苦労は感じません」

■今後の目標は「教育」

――賴先生は台湾で今後どのようなことをしたいと考えていますか?
「台湾全体の歯科医療技術の向上と、そのための教育。これが私の今後の課題です。実は新しい教育システムの構築を4年前から考えていて、2年前には教育センターを開きました」

――なんと! 大学とは違う、別の教育機関をおつくりになられたのですか。
「夢を見るだけではなく、どうやって実現するか。それを若いドクターたちに教えなければならない。そして私たちは、若いドクターたちがどうやればよい環境で仕事ができるか、そんな場所を与えられるかを考えなければいけない。若者と私たちがともに台湾の未来を考える。そういう段階にきていると思います」

――賴先生が若い歯科医師たちに伝えたいメッセージはありますか。
「NEVER GIVE UP! 開業医になることや運営し続けることは簡単ではないけれど、決してあきらめないという強い気持ちが大事です。私自身、この15年間『NEVER GIVE UP!』という言葉を大切にしながら生きてきました」

■言葉の壁を乗り越えられるなら日本人医師も歓迎する

――では最後に、日本人医師が台湾で開業したいと考えた場合、賴先生はどのようにアドバイスをされますか?
「日本人のドクターが台湾で診療をしたいなら、私はウエルカムです。しかし、乗り越えなければならない壁がふたつあります。ひとつはライセンスの取得がたいへん難しいこと。もうひとつが言葉の問題。日本語しか話せないのならば、私たちはコミュニ―ケーションをとる方法がありません。このふたつの問題が解決できるのならば、歓迎します。私はつねに世界の国のドクターたちと交流したいと考えているのです」

――先生が信念にしていらっしゃる『決してあきらめない強い気持ち』があれば、 国境を越えられるということですね。
「そう。NEVER GIVE UP!です。私自身、これからもこの気持ちを胸に秘めながら、身体が動かなくなるまで頑張ります」

――ありがとうございました。

42歳という若さでおよそ1200人という膨大な歯科医療従事者の頂点に立つ賴先生。 その大きなグループを統括する力は、あたたかな親心と、あきらめない不屈の精神から生まれていました。

 

賴郁樺(Yu-Hua Lai)

院長 賴郁樺 醫師 學經歷:
亞太口腔臨床醫學會理事長
中華民國牙醫師公會資訊執行長
台灣口腔顎顏面麻醉醫學會秘書長
台灣口腔醫務管理學會專科醫師
台灣醫療資訊學會醫療資訊分析師
台北醫學大學牙醫學系博士候選人
台北醫學大學醫學資訊研究所碩士
台灣大學 EMBA 102C 碩士班
中山醫學大學牙醫學系畢

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通訳:李宜旃(株式会社モリタ 大阪本社 海外営業部)