インターネットの普及で様々なデータが手軽に手に入るようになりましたが、中にはどう使えばよいのか分からないものもあります。
こちらのコーナーでは、だれでも入手可能な「オープンデータ」を使って、そんな「So What?」をマーケティングの目で簡単にご説明します。
マップマーケティングで商圏設定【道路編】
「商圏設定」や「商圏分析」という言葉は、主にお店の出店調査の際によく使われますが、はたしてこの「商圏」とはどのようにして決まるのでしょうか?
また、設定された「商圏」はどのように活用すればいいのでしょうか?
商圏設定に必要な要素を挙げますと、
人口、世帯数、道路の性格、競合施設(位置関係、競合度合)、地形、立地環境・・・
と、挙げると枚挙に暇がありませんが、むしろ要素が多い商圏ほど正確とも言えます。
これらの要素の中からネット上で公開されているオープンデータを使って、2回に分けてご紹介いたします。
道路の性格と商圏の広がり
1回目は医院に接する「道路」について、その性格による商圏の見方をご説明します。
道路は大きく分けて「幹線道路」「生活道路」と、その中間「生活幹線道路」に分類されます。
■一般的な道路の種別
種別 |
通行量 |
車種 |
流れ |
生活道路
| 約3,000台以下 |
自家用車:7割以上 |
30~40km/h以下 |
生活幹線道路
| 5,000~7,000台 |
自家用車:約5割 |
50km/h前後 |
幹線道路
| 10,000台以上 |
商用車:7割以上 |
60km/h以上、又は渋滞 |
※通行量は昼間12時間あたり
通行量のデータは、下記の国土交通省HP、または各都道府県、市町村のHPでも公開されています。
http://www.mlit.go.jp/road/census/h27/
では、これから開業や移転を計画されている計画地が接する道路、または既に開業されている医院に接する道路が、上記の道路種別によってどのように影響するのでしょうか?
もちろん一長一短があり、どれが有利という事ではなく、それぞれの特徴に合わせて経営戦略が変わってきます。
簡単に一般的な特徴を挙げてみますと、
■生活道路
・半径300~500mの地域住民が主に行き来するため、狭商圏・高占拠率で円型の商圏形成が多い。
・住宅地内では閉鎖型商圏を形成し競合は少ない場合が多いが、集客不振に陥った場合は販売促進の手段が少なく効果が薄い場合がある。
・近くて便利、顔見知り、オールマイティ、などがキーワード。
■生活幹線道路
・一般の物販店では最も良い立地とされることが多い。
・「幹線道路」に接続している「生活道路」であることが多く、いわゆる「抜け道」に使われる事もある。
・地域の主な交通手段(車、自転車、バイク、徒歩など)によって商圏距離は変わる。
徒歩→500m 自転車→800~1㎞ 車→3㎞
・患者さんにとって車、自転車、バイク、徒歩など、どの来院手段にも抵抗が無い。
■幹線道路
・市町村など都市間を移動する車両が中心で、幹線道路沿いに商圏が広がる楕円形、または半円形の「広域商圏」が可能。
・広域商圏の場合、明確な「特徴」や「ブランド力」が遠方からでも通院したくなるキッカケとなる。
・遠方から集客しやすいが、女性ドライバーに配慮した出入り口にしなければ、逆に敬遠されるケースがある。
・土地を背にして道路の右方向に商圏が広がる傾向がある。
※駅前などのターミナル立地では同様に沿線沿いに商圏が広がる。
■その他
ショッピングモールなどの複合施設に立地している場合は、その施設の商圏範囲とイコールになり有利に活用できるが、その施設の「集客力頼み」となり一蓮托生のリスクもある。
以上のように、「道路の性格」から商圏の広がりかたを知る事ができます。
ただし、各々の地域で主な移動手段が異なりますので、単に接する道路だけで商圏は決まりません。
例えば、東京都心のように地下鉄網が発達している市街地では、道路の性格ではほとんど影響を受けない場合もありますので、交通手段(移動手段)による商圏の評価が必要です。
また、冒頭にも記載いたしましたとおり、商圏を決定する要素は1つや2つではありません。
むしろ加味する要素が多ければ多いほど正確な商圏になりますので、無料で入手できるオープンデータを大いに活用してみてください。
■地点A
・生活道路沿い
・競合する医院の影響は受けるが、ほぼ円形の商圏
■地点B
・生活幹線道路沿い
・生活幹線道路に沿って商圏は広がる
■地点C
・幹線道路沿い
・幹線道路に沿って楕円形の商圏を形成
次回は、『商圏の分断要素』についてお伝えします。
記事編集:デンタルライフデザイン編集部