インターネットの普及で様々なデータが手軽に手に入るようになりましたが、中にはどう使えばよいのか分からないものもあります。
こちらのコーナーでは、だれでも入手可能な「オープンデータ」を使って、そんな「So What?」をマーケティングの目で簡単にご説明します。
マップマーケティングで商圏設定【分断要素編】
「商圏設定」や「商圏分析」という言葉は、主にお店の出店調査の際によく使われますが、はたしてこの「商圏」とはどのようにして決まるのでしょうか?
また、設定された「商圏」はどのように活用すればいいのでしょうか?
商圏設定に必要な要素を挙げますと、
人口、世帯数、道路の性格、競合施設(位置関係、競合度合)、地形、立地環境・・・
と、挙げると枚挙に暇がありませんが、むしろ要素が多い商圏ほど正確とも言えます。
これらの要素の中からネット上で公開されているオープンデータを使って、2回に分けてご紹介いたします。
「物理的分断」と「心理的分断」
2回目は「商圏を分断する要素」について、一般的な事例をご紹介します。
商圏の分断要素は「物理的要素」と「心理的要素」に大別できますが、道路網の整備や交通手段が発達した現代では「心理的要素」に起因するところが多く見受けられます。
■物理的分断要素
・中央分離帯があるような幹線道路、高速道路、鉄道、地形(河川、山)など、地図で概ね把握できるもの。
■心理的分断要素
・駅・・・・・普段使われる最寄駅を思い出してください。
普段の買い物や食事など、「家」と「駅」、「職場」と「駅」の間で済ませていませんか?
それ以外は「駅の向こう側」と考えていませんか?
・渋滞多発地帯・・・・・渋滞自体を回避したい思いと、渋滞していない時間帯は高速で車が流れている場合があり、右折での出入りがしにくい。
・勾配・・・・・患者さんにとって「行き」が上り坂に該当する地域は商圏にはなりにくい。
※勾配は、国土地理院やGoogleなど地図サイトで「標高」の情報が提供されていますので、参考にしてください。
国土地理院 → http://www.gsi.go.jp/johofukyu/hyoko_system.html
Google → http://wisteriahill.sakura.ne.jp/GMAP/GMAP_ALTITUDE/index.php
■地点A
・西側を山に囲われた閉鎖型商圏を形成。
・標高差を見ても現地の勾配が強く、東側の地域からの来院は望みにくい。
■地点B
・河川、鉄道、山による商圏の分断される閉鎖型商圏を形成。
・前面道路(生活幹線道路)に沿って商圏が伸びるが、最寄駅を扇の要にして商圏が形成される傾向が強いため、商圏の南端は駅と駅の中間となる。
■地点C
・幹線道路を使った開放型商圏が可能。
・幹線道路の南側からの車の来院は心理的に来院しにくい。
・仮に、東側の生活道路にも面している、もしくは出入りできる場合は、南側に商圏は広がる可能性が高い。
ご近所で、そんなに悪い立地ではなそうなのに、次々と店が入れ替わってしまう場所はありませんか?
もちろん、資金的事情や需要不足など要因は様々だと思いますが、消費者にとって「何となく行きにくい」といった無意識の行動心理が客足を遠ざけた結果かもしれません。
2回に亘って商圏の設定についてご説明しましたが、道路と地形だけでもこのような要素があり、正確な商圏をつかむことは容易ではありません。
しかし、これから開業や移転を計画されている場合は、まず「仮設の商圏」を設定することが重要で、その商圏内にいる人は具体的にどのような人なのかを知ることで、その人たちにはどのような広告を打てば響くのか、など具体的な戦略が見えてきます。
また、既に開業されている医院におかれては、現在の立地からどのような商圏が考えられて、一方で実際の患者さんはどの範囲から来られているのかを検証し、ギャップを明らかにすることで「次の一手」が見えてくるかもしれません。
※「道路の性格」による商圏の広がりについては、当サイト内の『医院経営で使えるオープンデータVol.3マップマーケティングで商圏設定【道路編】』をご覧ください。
今回は「オープンデータ」をキーに「商圏」をご説明しましたが、商圏を決定するもう一つの重要ファクターは「競合」です。
次回は、「競合」についてお伝えします。
記事編集:デンタルライフデザイン編集部