齲蝕は、歯を攻撃する因子、および防御する因子のバランスにより起因する。 歯を攻撃する因子は、ミュータンス連鎖球菌などによる歯垢や酸産成能などがある(齲蝕活動性)。 一方、歯を防御する因子は、フッ化物や唾液緩衝能、歯の萌出後成熟などがある(齲蝕感受性)。 フッ化物の応用は、歯を防御する因子を高める。 しかし、攻撃力がそれを上回れば齲蝕が発生する。 フッ化物の副作用については、多くの成書にあるように適当な濃度であれば問題ないだろう。 しかし・・である。 かつて、重症齲蝕を持つ小児の保護者から「保健所でのフッ化物塗布は受けてきたのですが・・」と言われた。 歯垢が付いた状態で塗布しても、それが歯面まで達するとは思えない。 フッ化物の最大の副作用は、"保護者の過信"といえる。 この点をわかりやすく伝えるためには、どう表現すれば良いだろう? そこで以下のことを考えた。 例えば、70点以上だと齲蝕にならないと仮定する。 そして、フッ化物の効果は10点として、おやつや歯磨きの点数変えてみる。 例えば、A君は、おやつや歯磨きの点数が90点、フッ化物の10点を足すと齲蝕はできない。 Bさんも同じ90点、フッ化物塗布を行わなくても齲蝕はできない。 次C君は、おやつや歯磨きの点が30点 フッ化物を塗布しても40点にしかならず齲蝕が出来る。 そしてDさんは、おやつや歯磨きが60点、フッ化物を塗布しないと齲蝕ができる。 さらにE君も、おやつや歯磨きが60点、フッ化物を塗布することで齲蝕にならない。 本当に、フッ化物の恩恵を得るのはDさんだ。 この様に表現すると、フッ化物の効果がわかりやすい。 実際に、クイズにして子ども達に計算してもらえば良い。 さて、フッ化物の応用で、ある程度の齲蝕予防効果は期待できる。 しかし、歯周病は防げない。 齲蝕や歯周病は、歯垢が原因だから歯磨きはかかせない。 もちろん、食生活とも関係が深い。 しかも食生活は、肥満とも関連する。 フッ化物では、歯周病や肥満は防げないから、平行して健康教育を行うことも忘れてはならない。
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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