Dental Life Design

あなたのデンタルライフを彩るメディア

日本の小児の
齲蝕減少の歴史 その3
“Cavity treatment”と”
Caries treatment”

2021/10/24 デンタル〇〇デザイン

厚生労働省の歯科疾患実態調査を調べると、3歳時で最も罹患者率が高いのが1969年(昭和44年)の87.3%。
1人平均df歯数では、1963年(3.36歯)であった。
今から振り返ると、桁違いの齲蝕の量である。


さて、アメリカでは"齲蝕の治療"には二つの言葉がある。
一つは"Cavity treatment"、もう一つは"Caries treatment"。



両者は、どのように違うかご存じだろうか?
Cavity は"穴"の意であるから、単に削って詰める治療を指す。
しかし、齲蝕が発生した環境が変わらなければ、"モグラ叩きゲーム状態"に陥り、二次齲蝕に悩まされる。
そこで,齲蝕の原因まで遡り予防と治療を行なうことが"Caries treatment"である。


ここで、30年前のケースを紹介する。
初診時1歳10カ月で上顎の第1乳臼歯にC2の齲蝕があり、アマルガム充填を行った。



そして以後、その小児がどのような経過をたどったかを調べてみた。
カルテによると14歳まで来院の記述がある。
そして、治療した回数をピックアップすると、乳臼歯の交換までに、のべ46回も修復治療が繰り返されていた。
乳臼歯1本あたりの治療回数は約5.5回。
しかも、14歳時の永久歯の齲蝕歯数(DMF歯数)は7歯であった。



乳歯の失敗が、永久歯でも繰り返されていることがわかる。


この様な背景から、乳歯の修復物の寿命(機能歯率)について詳しく調べた。
(対象:1歳~5歳 小児239名、計1750歯の修復物)
その結果、初回処置後の乳臼歯修復物の機能歯率は、半年後で92.8%、1年後で77.8%、そして2年あまりで50%を切っていた。



乳臼歯修復物の寿命は、想像以上に非常に短いことがわかる。


さらに初診時の年齢を1-2歳代、3歳代、4-5歳代に分けし、齲蝕の初発年齢と予後についても調べてみた。
すると齲蝕の初発年齢が早いほど、修復物の機能歯率が低下した。



さらに、乳臼歯部の1歯あたり平均修復回数が増え、平均機能年数は短くなった。
初発年齢は、修復物の予後に大きな影響を与える。
当時、まだ"早期発見、早期治療"が重要だと考えられていた。
しかし、理解力に乏しい低年齢児の治療はたいへんだ。
それに無理な治療が、将来の歯科恐怖症になる可能性もある。
こうして"Cavity treatment"から"Caries treatment"の時代に移り変わっていく。