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コラム

医科歯科ボーダレスな診療を目指して エピソード2:第7回 Start with Why!(Why から始めよう!)

医科歯科ボーダレスな診療を目指して エピソード2:第7回 Start with Why!(Why から始めよう!)
医科歯科ボーダレスな診療を目指して エピソード2:第7回 Start with Why!(Why から始めよう!)
Oral health(口腔の健康)の向上・維持はそれ自体に価値がありますが、それがTotal health(全身の健康)につながるからこそ価値が高いのだと考えています。

歯科医師でも歯科衛生士でもない医師の私が、日々の診療で口腔衛生・口腔機能にこだわっている理由はここにあります。

もう少し具体的にいうならば、歯の保存、口腔衛生・口腔機能の向上と維持ということは、健康的で充実した人生を送るために不可欠であり、そもそも医科歯科問わずヘルスケアの目的はそこにあるはずです。

歯科でいえば、残存歯数、DMFT指数、歯周病検査におけるBOP率、舌圧、咬合力などさまざまな指標がありますが、指標自体が目的ではないと思います。

なぜ自分の歯をたくさん残した方が良いのか? なぜ口をきれいにしておいた方が良いのか? なぜちゃんと噛んで飲み込める口が必要なのか?

この「なぜ」を先に伝えた方が相手に伝わりやすく、その行動変容は起こりやすいのです。

医科でいえば、高血圧症における血圧、総尿病における血糖値・HbA1c値などは改善が望ましいですが、それ自体が目的ではありません。

なぜ血圧を下げた方が良いのか? なぜ血糖値・HbA1c値は高くない方が良いのか? 血圧や血糖値が高かったらどんな人生が待っているのか。この「なぜ」伝えることが大切です。

患者さんに対して、Oral healthが全身の健康と質の高い人生を送るために大切であるということを伝えることにおいて、医師はより伝えやすいポジションにいます。

さらにはここでいう「全身の健康と質の高い人生」と言われてもイメージできない方も少なくないでしょうから、現実的なお話に落とし込んで説明することが望ましいです。

医療者ですので、「正しい」ことを話すべきなのは当然なのですが、「正しい」だけでは患者さんの心には響かないことが往々にしてあります。このことは私自身も反省をもって振り返ることがよくありました。

「正しい」より「楽しい」
「~すべき」より「~したい」

日々の診療や業務に落とし込むところが難しくもあるのですが、楽しい作業です。

新型コロナウイルス パンデミックという未曾有の事態に直面したこの2年間で、国民1人1人の健康や人生に対する意識・価値観が変化して感染症にかかりたくない、健康でいたいという思いがよりいっそう強くなったともいえるでしょう。

2000年からの20年間で高齢期にまでより多くの歯を残すという取り組みは一定の結果をもたらしました。

これからの20年は、幼少期から高齢期までシームレスに口腔衛生と口腔機能の向上・維持を目指す20年だと予感します。

医科歯科連携が当たり前になって、その言葉すらなくなり、医科歯科の双方の医療者が、お互いの境界(ボーダー)を意識することなく互いの領域に興味をもち、かかわりあう世の中になることを夢見ています。

著者細田正則

ほそだ内科クリニック 院長・医師・医学博士

略歴
  • 1964年 米国ミシガン州生まれ
  • 1990年 京都府立医科大学卒業
  •     医師免許取得
  •     京都府立医科大学第三内科(現在の消化器内科)入局
  • 1998年 京都府立医科大学大学院修了 医学博士号取得
  • 2011年 ほそだ内科クリニック 開院
所属学会・専門医など
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本消化器病学会認定消化器病専門医・指導医
  • 日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医
  • 日本医師会認定産業医
細田正則

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