TOP>NEWS>2021年12月のピックアップ書籍

NEWS

2021年12月のピックアップ書籍

2021年12月のピックアップ書籍
2021年12月のピックアップ書籍

臨床医にとって極上の教育性!エンターテイメント性!
『治癒の歯内療法 第3版 エンドのバイオロジーとイノベーション』

月星光博先生のイズムに満ちた1冊である。と評者が感じたそのイズムとは「臨床家としての長い経験と鋭い視点」また「科学者としての生物学的な考察」が絶妙なバランスでまとめられている点である。 本書の多くの部分は、タイトルからも想像できるとおり「侵襲を受けた歯髄や根尖歯周組織がどのように治癒するのか」の概念をベースとし、創傷治癒を阻害せずに、より効果的に治癒を促進させるための、現時点での選択可能な手技や機材を、臨床例をふんだんに使用しながら紹介する、という形で表現されている。 書籍全体の構成としては11のCHAPTERから成り立ち、そのすべてのCHAPTERは臨床家が歯内療法を系統立てて学ぶ際に必須な項目で満たされている。CHAPTER3(VPT:泉英之先生)とCHAPTER11(痛み:安藤彰啓先生)以外のCHAPTERでは月星光博先生を軸に、門下生の先生がたで書き上げられているので書籍内容全体の一貫性も保たれている。臨床家の教科書として圧巻の1冊である。 日本の歯科環境においては日本固有のさまざまな制約があり、多くの歯科医師は歯内療法をストレスフルな条件で行わなければならない。しかしそのストレスには術者自身で解決できるものと、できないものがある。解決できない環境はさておき、術者が自身で排除可能であるストレスが、患者利益を侵すべきではない、ということはすべての歯科医師が肝に銘じなくてはならない。本書がそれらの問題を解決する鍵となることを確信している。 2021年現在、歯内療法領域の書籍や講演は、その理由はさておき学問的な流行りといっても過言ではなく、故にこの領域の国内書籍の発刊も数多く見られる。しかしながら、それらのすべての書籍が、必ずしも読者の臨床力を上げることにつながるとはいえないこともまた事実である。 人びとが読むべき本を手に取る基準は、もちろん読書の目的や好みによって千差万別である。その上で評者個人の書籍選択の基準を述べるとすれば、教育性とエンターテイメント性をまずはあげることになるであろう。歯科に関連のない小説などを選ぶのであれば当然のことながら興味やエンターテイメント性を重視して選択するが、評者が歯内療法領域の書籍を選択する際に重要視するのは当然のことではあるが教育性(理論や根拠や術式)であり、すでにプロとして臨床に従事している自分を高めてくれる内容を求めることになる。さらに字面での術式解説や理論だけの文章だと読み続けることが難しくなるので、臨床症例(臨床医にとってのエンターテイメント性か)を示しながらの進行であれば、なお、集中して学習を継続することができるので、評者にとっての良書といえる。 本書はまさしく、評者の考える名著の定義に完全に一致し、より多くの臨床医に是非とも手にしてほしい、自信を持って推薦させていただきたい1冊である。 評者:石井 宏 (東京都・石井歯科医院) 月星光博/福西一浩/泉 英之・編 外賀 泰/安藤彰啓/仲田憲司/月星太介・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:22,000円(本体20,000円+税10%)・448頁

小児歯科医・矯正歯科医はもちろん、一般歯科医にも読んでいただきたい
『どう診る? どう育てる? 子どもたちの歯列と口腔機能 小児歯科医と矯正歯科医が実践法を教えます』

私は大学で歯科矯正学を専攻し、マルチブラケット法にて矯正歯科に従事してきた。当時は抜歯による矯正治療が主流で、不正咬合の予防の概念は教科書にはみることができたが、臨床の場では予防には振り向かなかった時代である。しかし、近年では矯正患者の若年化と口腔機能に問題がある子どもたちの来院が多くなってきた。そこで、子どもたちの不正咬合の原因が口腔機能と関係しているかについて疫学調査を基に追及してきた。本書は、私が「こんな本があったらいいな」と思っていた矢先に出会った、小児歯科医と矯正歯科医の連携による、子どもたちの口腔機能と歯列の問題の原因と現状、治療について解説した1冊である。 Part1は「子どもの口腔機能編」である。子どもの口腔機能の見方、コミュニケーション、食べる機能をどう診るか、障害児への対応、矯正歯科医の視点からの評価のポイント、口腔機能の指導とトレーニングから成る。小児歯科と矯正歯科の両方の視点からまとめられている。これまでの書籍ではどちらかに偏っていたと感じているが、本書のスタンスは患者(子ども)中心となっている。 Part2は「子どもの口腔トラブル編」である。ここでは小児歯科医が行うべき永久歯萌出トラブルの早期発見と対応について、そして乳歯の早期脱落および抜歯時の対応について多くの症例紹介し、解説している。 各Chapterの終わりにはColumnがある。本文では記載できなかった関連する話題について簡潔にまとめられ興味深い。本文はもちろん、このColumnも必読であることを強調したい。これによって教科書的な固さが少し緩められ、読者にとっては憩いの時となるだろう。 さて、最後のPart3は「予防型矯正治療編」である。「予防型矯正? 予防矯正のことか?」と思われるかもしれない。予防矯正は健康促進、特異的予防法として実施される。すべての不正咬合が予防できるわけではないのはご承知のとおりだが、多くの不正咬合は予防が可能ではないかと私は考えている。著者らはその目的を「将来的な本格的矯正を見据えた治療」と位置づ、鼻呼吸がしやすい気道・舌房を確保し、舌と咀嚼筋活動を回復させることを最優先としている。とくにChapter1の「歯列不正の成り立ちを理解する」では、不正咬合の原因を「機能不全」と「機能過多」に分類し、わかりやすく説明している。 本書の特徴は、小児歯科医と矯正歯科医が共同で口腔機能に着目し、子どもたちをどう育てるかに焦点を当てている点である。予防型矯正治療は意味がないと考える矯正歯科医もまずは手に取って読んでいただきたい。う蝕は減り、歯周病も減少傾向にある。近い将来、不正咬合も予防の時代となることに気づいてほしい。本書はそのことを問うているようである。小児歯科医・矯正歯科医はもちろん子どもたちの治療をしている一般歯科医にも読んでいただきたい1冊である。 評者:葛西一貴 (日本大学松戸歯学部特任教授) 島津貴咲/林 亮助・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:8,580円(本体7,800円+税10%)・168頁

ポリファーマシー時代に欠かせない、薬の飲み合わせがよくわかる一冊
別冊ザ・クインテッセンス『薬 YEARBOOK '21/'22患者に聞かれても困らない! 歯科医師のための「薬」飲み合わせ完全マニュアル』

聞くところによると、2019年に刊行された『薬YEARBOOK'19/'20』はクインテッセンス出版の年間ベストセラーになったそうだ。それもそのはず、この本はこれまでの歯科の薬剤関連書籍とは真逆の構成、つまり、患者の内服薬から歯科での処方薬の相互作用がわかる逆引きに仕上げられたとてもユニークな書籍なのである。 薬に支えられているといってもおかしくないわが国の高齢社会。現在、ポリファーマシー(多剤処方)による薬物有害事象が問題になっている。薬を処方する歯科医師は、患者の内服薬と歯科からの処方薬の間に相互作用があるのか、あった場合、どう対応すべきかなど「薬の飲み合わせ」に関する知識が求められるようになってきた。かと言って、医科の処方薬そのもの、ひいては相互作用までチェアサイドですぐに調べられるわけでもない。しかし、そんなニーズにうまく答えたのが『薬YEARBOOK』であり、まさに"患者に聞かれても困らない!歯科医師のための「薬」飲み合わせ完全マニュアル"なのである。そして、さらにグレードアップしてリニューアルされたのが本書である。 何がグレードアップされたのか?ひとつは、特集「歯科医院はCOVID-19感染症にどう備えるべきか」である。各メディアにコメンテーターとして出演している国際医療福祉大学の松本哲哉先生が病態や感染様式について、東京歯科大学の寺嶋毅先生が薬物療法とワクチンについて執筆されている。また、本書の監修者のひとりでもある大阪歯科大学の王宝禮先生は歯科医院におけるCOVID-19の有効な消毒薬を解説している。 もうひとつは今回の医科からの処方薬は、医療従事者向け医療総合サイトである「医薬情報QLifePro」の処方ランキングをもとにピックアップしていることにある。これによって、医科でよく処方されている治療薬が明らかとなり、より相互作用が検索しやすくなった。医科の治療薬は降圧薬、糖尿病治療薬、抗血栓薬、脂質異常症治療薬、精神神経疾患治療薬、骨吸収抑制薬、抗アレルギー薬、呼吸器疾患治療薬、漢方薬に分類され、それぞれの特徴、代表的な商品名と剤形写真、効能・効果、用法・用量、禁忌、副作用が左1ページにまとめている。右1ページには歯科からの併用薬を抗菌薬、抗炎症薬・鎮痛薬、抗真菌薬・抗ウイルス薬、局所麻酔薬、胃粘膜保護薬の5種(18薬剤)に分類して、相互作用とその方策を処方可、慎重を要する、減量・休薬など、併用禁忌の4つのイラストに分け、一覧表でわかりやすく示している。さらに、One Pointとして相互作用や注意事項などの情報も掲載され、見開きでとても見やすく構成されている。 チェアサイドに置くべき一冊として、『薬YEARBOOK'19/'20』を持っていない先生はもちろん、持っている先生にもぜひアップデートに本書をおすすめしたい。 評者:松野智宣 (日本歯科大学附属病院口腔外科) 朝波惣一郎/王 宝禮/矢郷 香・監修 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:6,050円(本体5,500円+税10%)・208頁

60の臨床例を提示し、あらゆる矯正歯科治療のパターンを網羅!
『矯正歯科治療の基本と類似症例が必ず見つかる!ラーニングステージ別臨床例60 GPによる包括的歯科治療のために』

石井彰夫先生が著書を執筆されているという話を聞いていたが、まさか私に書評の依頼が来るとは夢にも思っていなかった。なぜなら、私は基本的に成人矯正治療を行っておらず、書評を執筆できる知識も技術もないため、分不相応だと思ったからである。 しかし、実際に書籍を手にし、タイトルを見た瞬間にその不安は払拭され、「私でも書評を執筆できる」、いや、私のようなGPだからこそ、GPの気持ちがわかるために依頼があったのだと思うようになった。 本書はChapter1~4で構成されており、その特徴の1つは、矯正治療の基本として知っておくべき内容と、術者のレベルに合わせて取り組める症例がわかりやすく分類されているところである。つまり、これから矯正治療に取り組みたいと考える歯科医師にとって、どのような症例から行えばよいかが示されている。 もう1つの特徴は圧倒的な症例数である。60症例という膨大な症例それぞれに、診断や治療方法が詳細に解説されており、豊富な臨床テクニックは明日の臨床から役立つものばかりである。 Chapter1は数ページであるが、GPが矯正治療を行う前に考えなければならないことが記載されてある。矯正治療は簡単ではなく、GPが気軽に取り組むべきものではないが、GPに矯正治療という選択肢があるからこそ患者利益が大きい場合もあり、そのメリットやデメリットについて熟知しなければならない。 Chapter2では、冒頭に"矯正治療において、その成否は「診断で8割が決まる」と言われるくらい、診断力の重要性が強調される"という矯正治療の格言が紹介されており、これには診断の極意が詰め込まれている。診断力は「術者の経験に大きく影響されている」と言われるが、本書は著者の豊富な経験から得られたエッセンスが詰め込まれていると感じた。 Chapter3では、材料・器具が紹介されているが、器具の紹介にとどまらず、どのように歯と上下顎骨の三次元的なコントロール(垂直的および水平的なコントロール方法、犬歯・大臼歯の位置のコントロール)を行うかについて解説されている。 Chapter4は、いよいよ圧巻の60症例であり、その60症例を矯正治療の技術的難易度別にステージ1~10の10段階に分類してある。 はじめには全症例が一覧(早見表)になっており、小児矯正か成人矯正かの"歯列期"、歯列不正のタイプやアングル、交叉咬合、萌出不全などの"診断名"、限局矯正か全顎矯正かの"矯正範囲"など、他にもさまざま項目で分類され、知りたい内容にすぐにアクセスできるようになっている。また、この項目を見るだけでも豊富な診断のポイントと治療テクニックが収載されていることがわかる。 さて、私の矯正臨床はステージ1、2のようである。本書を熟読し、少しでも上のステージを目指し研鑽したいと思う。 評者:泉 英之 (滋賀県・泉歯科医院) 石井彰夫・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:22,000円(本体20,000円+税10%)・448頁

患者説明用カードで,義歯清掃指導ができるスタッフが自動的に育つ!
『チェック式で簡単&伝わる!義歯のお手入れ説明カードBOOK』

義歯装着者は当然ながら高齢者率が高く、先輩にあたる方が多いため、ただ説明・指導をすればいいのではなく、患者に合わせて言葉やテンポ、間合いの選択など話し方の技術も必要となる。一般に高齢になると認知機能不全の率も上がり、個人の理解の程度に差が出てきて、コンプライアンスもばらつくため、コンスタントな結果が得られにくくなる傾向が強い。このように、義歯清掃指導は患者の要素が大きく影響するため、現実にはベテランの先生が行っても一筋縄ではいかない側面がある。理解度が低下した方がたにていねいに複数回指導する必要が多くなると、これらをふまえて適切に指導できるベテランスタッフの存在がないと困ることになる。 患者に細菌管理の問題を意識してもらい、患者または付き添い家族が理解し、行動変容を起こすまでの「痒いところに手の届くような指導」ができる優秀なスタッフを準備しておくことはとても難しい。患者からのアフターケアの質の評価を得ることは、精密治療の結果としての咬合の安定やQOLの改善の結果を得ることと同様に重要なことだ。しかし、そこには教育、適切なカリキュラム、先生とスタッフの時間と労力、そのコストなど数々な問題が山積しており、その簡単な解決法はなく、とても難しいのが現状だ。 しかし、このたび、これら多くの問題を一気に解決に導いた書籍が上梓された。本書を初めて拝見した時、評者は少し驚いた。何しろ最初の指示が「前半のページを切り離して指導・説明用のカードを作れ」だったからだ。しかし、これが前畑マジックのミソだった。 使い方は、表にあたる部分を患者に向けて持ち、裏に書いてある文章(台詞)を紙芝居のように読み聞かせて指導するだけであるが、その効果は絶大で、このカードを使えば、新人でもベテラン先生のように、どの年齢層にも失礼のないきれいな日本語で、無理なく、無駄なく、義歯清掃指導ができる。さらに、科学的根拠に基づいているため、台詞を読み上げながら指導しているうちに、特段の努力をせずとも自然に知識が身に付いてきて、自動的に教育がなされる。その結果として、優秀な指導者が勝手に育つというすばらしい仕掛けまで組み込まれていて、前出の問題点のほとんどが解決できてしまうので驚きだ。 また、ウィズコロナの現状を反映した安全・管理面も万全だ。カード表面は抗菌仕様に仕上げられており、使用した後は、アルコールでの清拭、消毒も可能となっている。 本書は、指導を受ける患者にも、指導する側の方にも、先生にも大変優しく行き届いた設計になっている。自動的に優秀な指導者が得られるため、先生にはとくに喜ばれることだろう。時代のニーズに合った、細やかな配慮の行き届いた本書はどの現場にも一冊は必要な書だ。そして、義歯のお手入れに限らず患者指導用の媒体としてぜひシリーズ化を望む。 評者:別部尚司 (東京都・別部オーラルヘルスケア&クリニック) 前畑 香・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:5,280円(本体4,800円+税10%)・56頁+患者説明用カード7枚

tags

関連記事