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発達期における咬合の変化 その12 縫合の癒合時期には意味がある

発達期における咬合の変化 その12 縫合の癒合時期には意味がある
発達期における咬合の変化 その12 縫合の癒合時期には意味がある
新生児の頭蓋は、複数の骨からなり大泉門と小泉門がある。(図1)

脳の表面は、これらの骨が浮いた状態にあるといえる。
これは胎児が狭い産道を通って生まれて来るためだ。
生後、脳は急速に成長し生後1年で約2倍となり、成人の約70%にも達する。
そのため頭蓋骨は、それに合わせ縫合部から拡大する。
さらに、それらが癒合し完成する。
もし早期に癒合すると、頭蓋骨の容積が狭くなり変形し障害の原因ともなる。
癒合が起こる時期には、成長発達上の意味があることがわかる。

では切歯縫合はどうだろう?(図2)

これまで述べてきたように、乳歯列の完成後には、切歯骨口蓋部の長さはほとんど変化しない。
おそらく癒合の時期は、前歯部の萌出と関係するのだろう。
萌出時に切歯骨と上顎骨の癒合が不完全であれば、力学的な問題が生じやすい。

いずれにせよ、それまでの時期に切歯骨の成長を促すようなアプローチが重要だ。
さて切歯縫合における骨の添加は、切歯骨と上顎骨が引き離されようとする力により促される。
その一つが、舌圧と考えられる。
嚥下時、舌がスポットに当たる力は切歯骨の成長を促すだろう。
ここであらためて、乳歯列と第1大臼歯萌出期の切歯骨を比べてみよう。(図3)

側切歯の歯胚が前方に移動し、左右乳犬歯間の幅径も増加している。
その結果、切歯骨全体が大きくなっている。
骨格標本を眺めても、側切歯・犬歯が正常な位置に方向を変えることがわかる。(図4)

言い換えれば、前歯部の叢生は切歯骨の成長不全なのだ。
それでは、舌圧をアップさせるためには、どんなアプローチがあるだろう? 

続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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岡崎 好秀

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