新生児の頭蓋は、複数の骨からなり大泉門と小泉門がある。(図1) 脳の表面は、これらの骨が浮いた状態にあるといえる。 これは胎児が狭い産道を通って生まれて来るためだ。 生後、脳は急速に成長し生後1年で約2倍となり、成人の約70%にも達する。 そのため頭蓋骨は、それに合わせ縫合部から拡大する。 さらに、それらが癒合し完成する。 もし早期に癒合すると、頭蓋骨の容積が狭くなり変形し障害の原因ともなる。 癒合が起こる時期には、成長発達上の意味があることがわかる。 では切歯縫合はどうだろう?(図2) これまで述べてきたように、乳歯列の完成後には、切歯骨口蓋部の長さはほとんど変化しない。 おそらく癒合の時期は、前歯部の萌出と関係するのだろう。 萌出時に切歯骨と上顎骨の癒合が不完全であれば、力学的な問題が生じやすい。 いずれにせよ、それまでの時期に切歯骨の成長を促すようなアプローチが重要だ。 さて切歯縫合における骨の添加は、切歯骨と上顎骨が引き離されようとする力により促される。 その一つが、舌圧と考えられる。 嚥下時、舌がスポットに当たる力は切歯骨の成長を促すだろう。 ここであらためて、乳歯列と第1大臼歯萌出期の切歯骨を比べてみよう。(図3) 側切歯の歯胚が前方に移動し、左右乳犬歯間の幅径も増加している。 その結果、切歯骨全体が大きくなっている。 骨格標本を眺めても、側切歯・犬歯が正常な位置に方向を変えることがわかる。(図4) 言い換えれば、前歯部の叢生は切歯骨の成長不全なのだ。 それでは、舌圧をアップさせるためには、どんなアプローチがあるだろう? 続く
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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