歯みがきの時につけるペースト、今でも「歯磨き粉」と呼ぶ人もいますし、もう「粉」のものは滅多にないので「歯磨剤」と呼ぶ人もいます。最近では、「歯磨きペースト」や「トゥースペースト」も市民権を得てきたようです。英語では、”toothpaste” が一般的です。その他に、”dental cream” や “dentifrice” という単語も使われます。 ここからは次世代の歯磨き粉を提案するために、「トゥースペースト」と呼んでみましょう。 2021年の「WHO必須医薬品モデル・リスト(World Health Organisation Model List of Essential Medicines, EML」に、新しく歯科部門(Dental preparations)が登場して「フッ化物配合トゥースペースト」がその中に挙げられています。このEMLというのは、WHOが医療システムにおいて最も重要なニーズを満たすために効果的で安全な医薬品をリストにしたものです。2021年の22版で初めて歯科部門が登場し、3つの医薬品が登録されました。「フッ化物配合トゥースペースト」の他は、「グラスアイオノマーセメント」と「フッ化ジアンミン銀」です。 他の2つは歯科医院で使用するものであるのに対し、この「フッ化物配合トゥースペースト」は日常的にセルフケアで用いられることから、身近で効果の確実な歯科医薬品の王と言えます。WHO委員会の勧告は、濃度は1,000ppm F から1,500ppm F を標準としています。それ未満の濃度やフッ化物の入っていない歯磨剤にはリスクがあると注意喚起しています。日本で売られている子ども用の100ppm F や、500ppm Fのトゥースペーストは遅かれ早かれ消えていくでしょう。形態についてはペースト、クリーム、ジェルのどのようなものでもよいとのことです。1回の使用量については、きちんとした指示をするようにとのことですが、一般的に推奨されている使用量については、 0-2歳:1,000ppm F を米粒大 2-6歳:1,000ppm F を豆粒大 7歳以上:1,450ppm F を2cm です。 こちらの記事も合わせてご覧ください。 「フッ化物配合歯磨剤の使用開始時期」 さて、「フッ化物配合トゥースペースト」の世界的権威であるスウェーデン・イエテボリ大学⻭学部カリオロジー講座 Dowen Birkhed 名誉教授は、次世代のトゥースペーストについて、以下のような5つの条件を挙げています。 1.1,450ppm F 以上であること 2.パッケージはエコフレンドリーであること 3.利用者が繰り返し使いたくなるような味にすること 4.ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate, SLS)のような刺激のある成分は添加しないこと 5.ペースト状で歯ブラシのヘッドに粘稠性を保ちながら乗ること この見解については、2022年11月16~18日に行われる Swedental という北欧最大のデンタルショーの講演で提案されるそうです。 https://swedental.se 一足お先に日本の皆さんのために教えてもらいました!
著者西 真紀子
NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー
略歴
- 1996年 大阪大学歯学部卒業
- 大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
- 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
- 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
- 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
- 2018年 同大学院修了 PhD 取得
- NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP):
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