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フッ化ジアンミン銀は?

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失活歯の二次齲蝕予防に
フッ化ジアンミン銀は?

失活歯の二次齲蝕予防に<br>フッ化ジアンミン銀は?
失活歯の二次齲蝕予防に
フッ化ジアンミン銀は?
フッ化ジアンミン銀(商品名:サホライド)は、徳島大学名誉教授の西野瑞穗先生https://d.dental-plaza.com/archives/13992が大学院生の時に開発・研究された薬剤です(西野 1969)。50年以上も前に販売開始された製品で日本で長く使われていますが、2000年代に入って世界中で注目され始めました(Rosenblatt, 2009)。その背景には、まずかつての発展途上国が経済発展して砂糖の摂取量・回数が増えたことで小児齲蝕が増加したこと、一方先進国では健康格差が広がり社会経済因子の低い家庭での小児齲蝕が増加したことがありました。引き続き、先進国で高齢化が進むと同時に高齢者の残存歯数も増える傾向にあることから、根面齲蝕が大きな問題になってきました。

西野先生の基礎研究、動物実験、臨床研究で構成されるPhDプロジェクトが本当にしっかりと行われていたのでしょう。フッ化ジアンミン銀の高い効果は、様々な国で次々と実証されてきています。歯の着色があることが難点でしたが、高い歯科医療費を払えない人たちにとっては、効果が高く安価なフッ化ジアンミン銀はその難点を覆おう救世主です。高齢者の根面齲蝕ではそれほど目立たない部位でもあり、歯科医院に通えない高齢者にとっても齲蝕の発症と進行を止めてくれる救世主です。そして、もう一つ、私が今考えているフッ化ジアンミン銀の使い方として、歯内療法を施した歯を補綴する前にフッ化ジアンミン銀を残存歯面に塗布することで補綴物下に生じる二次齲蝕を防ぐことです。

失活歯は二次齲蝕が生じても、痛みでその存在を教えてくれないため、知らないうちに補綴物下で広がってしまい、たまたま撮影したX線写真で発見されたり、補綴下で朽ちた歯の隙間に繁殖した嫌気性菌の臭いのおかげで発見されたりします。そして、その時には齲蝕が縁下に広がって抜歯をせざるを得ないこともあります。マイクロスコープで精密な歯内療法を行っても、このような二次齲蝕は防げません。自費で何十万円をかけて歯内療法や補綴処置をしてもらった後に、二次齲蝕で歯を失うことになった場合、患者さんは納得してくれるでしょうか。



失活歯を補綴する前のひと手間で、このような歯の喪失を防げたらと思い、フッ化ジアンミン銀のこのような使い方について調べた論文をPubMedで探してみましたが、一つも見つかりませんでした(2022/03/19現在)。ですから、まず、この使い方については、ランダム化比較試験によってその効果のほどを客観的に調べなければなりません。歯内療法を得意としていて、他院から歯内療法患者の紹介があるような歯科医院において、厳密なランダム化の割当てで、患者さんをテスト群とコントロール群に分けます。そして、テスト群にはフッ化ジアンミン銀、コントロール群には水を塗布します。

それらの歯の追跡を、たとえば1年、3年、5年後、10年後に行って二次齲蝕発症率を比較します。もしも有意差が認められれば、この新しいフッ化ジアンミン銀の使い方により、再治療や喪失歯の予防に多大な貢献ができるでしょう。このアイディアにご興味のある方は是非ご一報を!新しいエビデンスを構築しませんか?psap@honto-no-yobou.jp


参考文献
西野瑞穂. ふっ化アンモニア銀による乳歯齲虫の進行抑制に関する研究. 阪大歯学誌. 1969;14:1-14.
Rosenblatt A, Stamford TC, Niederman R. Silver diamine fluoride: a caries "silver-fluoride bullet". J Dent Res. 2009;88(2):116-125.

著者西 真紀子

NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー

略歴
  • 1996年 大阪大学歯学部卒業
  •     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
  • 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
  • 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
  • 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 歯学修士号取得
  • 2018年 同大学院修了 歯学博士号取得
所属学会
  • 日本口腔衛生学会

西 真紀子

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