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ドライマウスに対する唾液腺マッサージのエビデンス

ドライマウスに対する唾液腺マッサージのエビデンス
ドライマウスに対する唾液腺マッサージのエビデンス
ドライマウスは齲蝕や歯周病など口腔疾患の大きなリスクになります。それゆえ、様々な方法が対処法を歯科臨床の場で勧めることは重要です。

それらには、
⁃適切な水分補給をする
⁃夜寝る時の湿度を上げる
⁃刺激のある歯磨剤を避ける
⁃乾燥した硬い食べ物を避ける
⁃シュガーフリーのチューイングガムやキャンディを利用する
⁃粘膜湿潤剤を利用する
⁃唾液分泌刺激剤を利用する
⁃代替唾液剤を利用する
⁃副作用に唾液減少症を引き起こす薬を、主治医に変更してもらう
などがあります。

<参考文献>
Villa A, Connell CL, Abati S. Diagnosis and management of xerostomia and hyposalivation. Ther Clin Risk Manag. 2015;11:45-51


ここで、気が付かれた方もいるかもしれません。どうして「唾液腺マッサージ」が入っていないのか。

日本では国家試験レベルの書物にさえ、ドライマウスに唾液腺マッサージを処方するように記しているのですが、私は個人的に海外の論文やガイドラインにそのような記述は見たことがありませんでした。そこで、実際に唾液腺マッサージがドライマウスに効果があるのか文献を調査してみました。

PubMed の Advanced Search Builder を使って次のような2組の検索キーワードを組み立てました。

検索1

((("gland"[All Fields] OR "gland s"[All Fields]) OR "glands"[All Fields]) AND (((((("massage"[MeSH Terms] OR "massage"[All Fields]) OR "massages"[All Fields]) OR "massaged"[All Fields]) OR "massager"[All Fields]) OR "massagers"[All Fields]) OR "massaging"[All Fields])) AND ((("hyposalivators"[All Fields] OR "xerostomia"[MeSH Terms]) OR "xerostomia"[All Fields]) OR "hyposalivation"[All Fields])


検索2

((("salivation"[MeSH Terms] OR "salivation"[All Fields]) OR ("saliva"[All Fields] AND "secretion"[All Fields])) OR "saliva secretion"[All Fields]) AND "physical stimulation"[All Fields]


2022年10月27日時点で、検索1では13の論文、検索2では49の論文がヒットしました。その中で、該当する論文は4つほど見つかりましたが、研究デザインの上で問題があったり、臨床現場で使えないような振動器具を使っているものだったりで、唾液腺マッサージがドライマウスに効果があるということを示すエビデンスは見い出せませんでした。また、これらの4つの論文はすべて日本人による論文でした。

次に、スウェーデンのカリオロジーの教授2人に見解を聞いたところ、両者とも唾液腺マッサージをドライマウスの患者に勧めるのは疑わしいとのこと、美容系の雑誌にそのようなことを書いてあるのは見たことがあると冗談まで返ってきました。

この臨床疑問は日本人研究者らが多く取り上げているのかもしれませんので、日本語の論文を検索するともっと多くの論文が得られる可能性はあります。しかし、日本人でも良い研究をして世界中の人にそれを知らせたいと思えば、英論文にするものなので、日本語で文献調査をしたとしても「労多くして功少なし」に陥る可能性も否めません。

著者西 真紀子

NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー

略歴
  • 1996年 大阪大学歯学部卒業
  •     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
  • 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
  • 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
  • 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
  • 2018年 同大学院修了 PhD 取得

西 真紀子

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