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2023年9月のピックアップ書籍

2023年9月のピックアップ書籍
2023年9月のピックアップ書籍

長期経過症例の治療戦略 ペリオ&全顎ケースに悩んだ時に読む本 治療方針とテクニック徹底解説

安東俊夫・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 16,500円(本体15,000円+税10%)・276頁 評 者 田中秀樹 (福岡県・田中ひでき歯科クリニック)

全顎におよぶ包括的治療を行う際に、ほとんどの症例で歯周治療と咬合治療が必要になる。欠損が拡大し、再治療を重ねた結果、少しずつ顎位がずれてきた末に、歯内治療から歯周治療、そして咬合再構成まで必要になる場合もある。そのような患者に治療を行う際に、どこから始めて、どういう方法で治療を行い、どのくらいの治療期間で、どのような治療結果を目指すのかを歯科医師が具体的にイメージし、それを患者と共有することが重要になる。 それには、より多くの臨床症例を手掛け、それらの結果を評価し、長期間のメインテナンスのなかでどのくらいの期間でデンタルエックス線像に変化がみられるか、またどのようなトラブルが想定できるのかを予想できなくてはならない。その根拠になるのが、基本に忠実な臨床を行ったうえで、より多くの臨床経験と規格性のある資料に基づいた評価から得られる自身の臨床におけるエビデンスである。 本書は、若くこれから研鑽を積む臨床医にとって、多くのヒントが詰まっている。まず、全症例をとおして規格性とクオリティの高いデンタルエックス線写真とレベルの高い歯周治療、適合のよい修復装置に目が止まる。どんなに大掛かりな全顎治療といえども、正確な診断のできる質の高い資料の採得と基本治療が、いかに重要であるかが伝わってくる。 1章の「少数歯欠損の治療戦略」では、歯周基本治療から個々の歯に対する正確な診査・診断まで、欠損を拡大させないための治療戦略とそれを長期間維持するためのきめ細かなメインテナンスの詳細を、わかりやすく解説している。2章の「数歯欠損の治療戦略 固定性補綴」では、欠損補綴を行う際の注意点、臼歯部支持とアンテリアルガイダンスの重要性について、臨床例を提示し解説している。3章の「治療効果アップテクニック」では、軟組織のマネージメントに効果的なテクニックを臨床写真でていねいに解説している。審美補綴や審美エリアでのインプラント補綴を成功に導くためには、軟組織のマネージメントを行うための歯周形成外科テクニックを習得することは、必須であるといえる。4章では、「多数歯欠損の治療戦略」として、可綴性義歯で欠損補綴した症例や、インプラントオーバーデンチャーの臨床についても解説している。5章「治療効果アップテクニック」では、GBRをはじめとする硬組織のマネージメントについて解説している。6章「多数歯欠損の治療戦略 固定性補綴」では、多数歯欠損にインプラント補綴で咬合再構成を行う際に必要な知識と治療戦略を、安東先生が長期に観察した症例をとおして学ぶことができるであろう。 本書のタイトルにあるように、全顎的治療で悩んだと時にページをめくれば、どこかにそのヒントが見つかるだろう。臨床経験の浅い若い臨床医からベテランの臨床医までが参考になる書籍であり、ぜひ手に取って熟読していただきたい。

インプラント治療に携わる歯科医師はその「撤去」と無関係でいられない! インプラント撤去完全マニュアル 基本的なケースから、骨削除が必要なケースまで

佐々木匡理・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 9,900円(本体9,000円+税10%)・108頁 評 者 青井良太 (あおいデンタルクリニック・麻布十番ペリオインプラントセンター)  

インプラント「埋入」の書籍は数多くあるが、インプラント「撤去」に徹した書籍はほとんど初めてではないだろうか。著者の佐々木匡理先生は大学の同期で、まさか彼の書評を書くことになるとは思わなかった。私なりに熟読したところ、歯科医師として多くを考えさせられる1冊であった。冒頭で「インプラント治療に携わる歯科医師は『インプラント撤去』と無関係ではいられなくなっている」と述べられているが、まさにそのとおりといえよう。 本書は症例ごとにきちんと資料がとられており、撤去となった原因が考察されている。著者の経歴を見れば日本一インプラントを撤去しているのだろうと予想はつくが、インプラントの形状や種類・除去器具についてのプロトコルがしっかりまとめられ、各章ごとにポイントが示され、わかりやすい。さらに特筆すべきは、QRコードで撤去時の14症例の動画を閲覧できることである。 PART1のCHAPTER1ではインプラントの撤去の適応症・非適応症について、9つのカテゴリーに分けて解説。CHAPTER2ではインプラント体の形状によるタイプ分けと動揺の有無により、除去器具を選択するディシジョンツリーが掲載。 PART2はインプラント撤去編で、①歯根タイプ、②ブレードタイプ、③自家製・骨膜下・ザイゴマタイプの撤去に関して掲載(動画あり)。除去することを前提にインプラントを埋入する先生はいないと思うが、もし自分が埋入したインプラントが何らかの理由で除去しなければならなくなった場合、安全に撤去できるインプラント体を選択しなければと考えさせられる。 PART3は、各トラブルへの対応で、インプラント撤去窩への自己多血小板フィブリンゲルの応用や、上顎洞迷入によるインプラントの撤去について書かれている。sinus floor elevationで盲目下にシュナイダー膜を挙上するcrestal approachを行った際、穿孔に気づかずそのままインプラントを埋入することで、上顎洞内にインプラントを迷入させてしまう事例を耳にする。lateral approachを習得していればその場でリカバリーできるのだが、技術や知識が未熟な術者によるインプラント治療は、必ずしも患者が恩恵を受けるわけではないことを改めて考えさせられる。 PART4では、インプラント撤去後のリカバリーのために「インプラント撤去時にできるだけ低侵襲な撤去を行い、周囲骨の削除も最小限にとどめることが重要」と記している。再度インプラントを埋入できるように、また義歯での対応も含め、欠損形態を考慮した撤去を行っている。 インプラント撤去は、本書の臨床症例45ケースと、インプラント撤去のためのQ&Aを併せて読むことで明確に理解できるだろう。インプラントを撤去しなければならない不幸な運命に陥った際には、本書が患者と撤去する先生の有効な手助けになることはまちがいない!

巻頭速報「MRONJポジションペーパー2023 その見方と活用法」掲載!

別冊ザ・クインテッセンス 口腔外科YEARBOOK  一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’23 日本口腔外科学会・編 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,260円(本体6,600円+税10%)・240頁 評 者 生田 稔 (埼玉県・さいたま赤十字病院口腔外科)

かつて、日本の多くの職人は、下積みをしながら親方の技を盗んで、長い時間を重ねて、その技術を習得するのが筋とされてきた。「見て学べ」と教えられた歯科医師や口腔外科医も少なくない。もちろんそれは間違っていないが、今や細かな項目ごとの専門書や現代のデジタルツールを使えば、同じ時間でさまざまな治療の情報やコツを早期に取り込むことができ、自身でトレーニングをして技術を習得できる時代になっている。 さて、今年も『口腔外科ハンドマニュアル』が発刊された。日本口腔外科学会専門医の私も、絶え間なくあふれ出る新しい知識や技術を本書で毎年整理できるので愛用している。そして、自身の若いときにこの書物があれば、もっと効率よく技術を習得できたなと、いつもうらやむ気持ちになる。ただ、本書のおかげで、若手歯科医師・研修医の指導や一般臨床医へ助言するのに、とても役立っていて、月刊「ザ・クインテッセンス」と同様に、わかりやすいイラストとともに、日本口腔外科学会の関係者らが総出で仕上げた信頼できる情報・技術がていねいに解説され、誰もが容易に理解できる。 今回は巻頭で、2016年以来久しぶりに大きく改訂されたMRONJ(薬剤関連顎骨壊死)ポジションペーパー2023の特集が組まれている。顎骨壊死に対する考え方をアップデートするのは難しいと思われる方も多いのではと想像するが、本疾患に関しては多くの予防や治療に関するエビデンスが蓄積されたことで、かつての骨修飾薬休薬の留意事項が大きく変更されている。この特集では、論文や専門書と違い、わかりやすく解説されており、効率よく理解できるので、この機会にぜひとも確認されることをお勧めする。 テクニックに関する掲載事項では、ベーシックとして抜歯やインプラント手術の細かな手技が惜しげもなくまとめられている。口腔外科手術の基本的な術式を習得するにも、自身の手技を見直すにも、大いに参考になるであろう。アドバンスとしては、口唇がん、顎関節脱臼、上顎骨切り、咽頭弁移植の手術手技が解説されている。これらは頻度の少ない疾患だけに、かつての経験だけに頼る習得法では学べなかった技術であり、とくに口腔外科専門医をめざす方々には、貴重な内容といえる。 ほかにも口腔外科最新レビューでは、学会でも話題になる興味深い情報をシンプルにわかりやすく解説していて、一般臨床医の方も効率よく、最新の情報を学ぶことができる。 われわれ歯科医師という職人は、過去に得た専門知識を点検し、また新たな知識を増やし、さらには技術を向上させるべく、他の熟練者から学び、目の前の患者を最高のスキルで癒やす使命がある。本書は、あらゆる歯科医師にとって、必ずや日常診療をブラッシュアップさせる1冊になるであろう。とくに口腔外科医の方は、バックナンバーも含めて網羅することで、本書を陰の親方として活用してもらえればと願っている。

臨床家によく選ばれている材料はいったいなにか? リアルな答えがこの一冊に

別冊ザ・クインテッセンス 骨補填材料&メンブレン YEARBOOK2023/2024 最新エビデンスと臨床応用 松野智宣/岩野義弘・監著 甘利佳之/安西泰規/奥田浩規/小田師巳/ 木津康博/萩原 誠/船越栄次/洪 性文/ 水上哲也・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2275(営業部) 定価 6,600円(本体6,000円+税10%)・132頁 評 者 中田光太郎 (京都府・中田歯科クリニック)

ここ数年、骨補填材料とメンブレンのインプラント適応、歯科適応の新規認可が相次ぎ、臨床医の注目を集めている。以前より講演会などで材料に関する質問が頻繁にあり、評者にとっても常に興味の対象となっている領域である。「今のエビデンスに則って、どのような硬組織の欠損状態に、どの材料を用いてどの術式で対応するのが正しいのか?」現時点で最新の情報をもとにこの疑問に答えられるのは本書だけである。 監著者のお二人が執筆されている巻頭企画1、2はまさに圧巻の一言。松野智宣氏の巻頭企画1では、日本国内で製造販売された骨補填材料の歴史、現在市場に出ている製品を一覧で確認でき、またマーケットシェアまで掲載されているため、どの材料がどれくらい売れているのかもひと目で確認できる。まさに私たち臨床家が知りたいのは「みんなはなにを使っているのか?」であり、それに答えが出ている。また骨補填材料について、国内で認可・販売されている各製品の特徴や、薬機法の認可と認可の種類による取り扱いや患者からの同意書の取得など、評者も初めて知見を得た事項が多数あり、永久保存版といって過言でないインプットがある。また、岩野義弘氏の巻頭企画2では、国内認可メンブレンの歴史から現在認可されている製品を一覧(これも近年着実に増えてきていることが確認できる)で知ることができる。そして、GBR成功のためにもっとも重要なこととして、減張切開について豊富な臨床例を交えて詳説されている。GBRをこれから取り組みたい、GBRを行ってもなかなかうまくいかない、という方はぜひご覧いただきたい。 前述のとおり、現在国内で認可を取得した材料が多数市場に出ており、評者も含めてその使用方法や適応症について高い関心をもっている臨床家が多いことが、日常の情報交換からもよくわかる。本書では、各マテリアルのエキスパートが臨床例を寄せており、貴重な情報を得ることができる。とくに最新のマテリアルをどのように用いると効果的かということを評者も参考にさせていただいた。これらの情報をもとに、慎重に臨床に取り入れていくスタンスが重要であると考えている。 また近年、「患者中心型」「患者に優しい」「患者に受け入れられる」といったキーワードが私たちの臨床にも大きく関わってきている。確かに以前は結果がすべてで、結果を出すためには術後の腫れや痛みも当たり前のような時代であったように思う。今ではできる限り低侵襲で、患者に負担をかけないことが求められるようになった。考えてみれば当然のことで、次も同じようにインプラント治療を受けたいと思ってもらえることがなにより大切である。そういう意味でも骨補填材料とメンブレンの進化、多様化は非常に重要であり、その情報を常に得ておくことはインプラント臨床医にとってはルーティンワークである。そのために本書をぜひご活用いただきたい。

9月の新刊立ち読み書籍の紹介

■1,000点超の症例写真で生涯にわたる咬合管理の重要性を語る1冊 書名:新 咬合論&咬合誘導論 副題:新 犬歯誘導の起源:生涯にわたる咬合管理 ■少数歯から全顎的な治療まで、欠損別・難易度別にわかりやすく解説! 書名:矯正が先か?インプラントが先か? 副題:欠損補綴の治療計画を極める ■子どもを良質な睡眠へと導くノウハウが満載! 書名:眠りで子どもは変わる 副題:─健康な子どもを育むメソッド─ ■前歯部審美インプラント治療のノウハウが!これ1冊でわかる! 書名:審美インプラントの治療戦略 副題:成功に導く22のレシピ ■説明力UPに効果絶大!大好評第2弾!最新トピックも説明に自信がもてる! 書名:このまま使えるDr.もDHも!歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本 2 副題:患者も納得のトピック15

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