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コラム

第4回 歯の萌出状態から考える離乳食の進め方(2)

第4回 歯の萌出状態から考える離乳食の進め方(2)
第4回 歯の萌出状態から考える離乳食の進め方(2)
舌や口唇の動きは歯の萌出により飛躍的に発達していきます。
今回は、乳歯萌出にともなう口腔機能の変化について説明しながら離乳食を考えていきます。

離乳食中期(舌食べ期・もぐもぐ期)

下顎乳切歯の萌出は、ちょうど舌が前に出ないようにする柵のような役割をします。 図1 a~c 上より舌食べ期の下顎、上顎、咬合の状態 それにより舌は前後運動と上下運動が上手にできるようになるのです。そして上顎切歯が萌出すると口の前の方を使って食べ物を取り込み、舌と口蓋を使って潰していく動きが可能になります。そのため、舌で食べ物をひとまとめにして飲み込めるようになります。硬さは、豆腐やプリンが目安です。味はつけないで素材の味を覚えさせます。飲み込みやすいようにとろみをつける工夫も必要です。上唇も動くようになり、左右対称に口角が上がる動きが見られると、舌と口蓋で食材を押しつぶしている証拠です。1日2回食で、徐々に食事のリズムをつけていくよう指導します。 食べさせる時のポイントは、平らなスプーンを下唇の上において上唇が閉じて食べ物を取り込むまで待ちます。急いでスプーンを上に持ち上げて食べさせる動きを続けると、上唇力が鍛えられず、口呼吸の原因をつくる危険があります。保護者には食事の時間は気持ちにゆとりを持って過ごすことを指導しましょう。 さらにこの頃のストローの使用は吸啜の動きを呼び戻し、成人嚥下の学習の妨げになる場合があるのでコップから上手に飲めるようになってからにします。お出かけなどで使用する場合はストローを短くして口の奥まで持っていけないようにすることを保護者には指導してください。

離乳食後期(歯ぐき食べ期・かみかみ期)

前歯が上下4本ずつ生え揃い始めると、上顎が広がり口の中の容積が大きくなってきます。それにともない、舌や口唇の動きも発達し、細かな動きもできるようになります。 図2 a~c 上より歯ぐき食べ期の下顎、上顎、咬合の状態 下顎が左右に動くこと、唇がねじれるような様子、噛んでいる側の口角が引かれているかが外から見てわかるポイントです。この時、口腔内では食べ物は舌を使って少し膨らんできた後方の歯ぐきに運ばれ、舌と頬を使って食べ物を支えながら潰すという動作をしています。歯ぐきで潰せる硬さとは、指でつまんで少し力を入れると潰せるくらいで、卵焼きやバナナの硬さが目安です。食材の大きさは乳犬歯部から乳臼歯部にかけての上下顎歯槽堤間距離より小さくすると潰せないので、ある程度の大きさにするように指導します。この上下の乳臼歯部の歯槽堤間距離は乳切歯の被蓋程度に左右されます。まだ、ご飯は軟飯でないと潰せません。ご飯は噛みつぶしていく内に味やかおりが出てくる食べ物なので、無理して進めるとごはん嫌いになってしまう恐れがあります。この頃になるとかなり唇の力が付いてくるのでスプーンはある程度深さがあり、大きさは口の幅の3分の2くらいのものが食べやすいです。

著者外木徳子

千葉県開業

略歴
  • 1983年、東京歯科大学卒業。
  • 同年、小児歯科学講座助手として入局。
  • 1992年、博士「歯学」の学位取得。
  • 1994年、東京歯科大学を退職(小児歯科学講座非常勤講師就任)、千葉県美浜区にて、とのぎ小児歯科開院。
  • 2010年、日本小児歯科学会専門医指導医。
  • 著書に『歯と体の発達に合わせた赤ちゃんと幼児のごはん』(婦人之友社編)がある。

歯科がカギを握る!小児の口腔機能育成―歯の萌出状態から見た哺乳、離乳食の進め方―

外木徳子

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