食いしばりやブラキシズムなど顎の筋肉に過度な緊張を与えるような状態のある患者さんに、次のようなエクササイズが、スウェーデンのある地域の公立歯科医療サービスのウェブサイト上(2022年3月18日更新分)に紹介されています。 ご参考までに日本語でまとめてみましょう。写真はオリジナルのウェブサイトでご覧ください。 https://folktandvarden.vgregion.se/fakta-och-munhalsorad/undersokning-och-behandling/rorelsetraning-for-kaken/ このエクササイズは歯科医の指導の下で行われるものです。顎の筋肉を緩和し、咬合の強さと顎運動の協調性を高めることを目的としています。少なくとも1日3回、各トレーニングセッションは2〜3分で、順序立てて行ってください。 効果までに数ヶ月かかる場合があるそうです。最初のうち、エクササイズによって短期間の痛みや不快感が生じる場合がありますが、顎関節を直接傷つけたり、安静時痛を引き起こすような動きは止めてもらってください。リラクゼーショントレーニング
このエクササイズは1日に数回しても大丈夫です。 •首をしっかりとサポートし、座位、または臥位を取ります。リラックスして肩を下ろします。 •「m(ム)」の音を出して、下顎を下げた位置に、つまり「顎を落とします。」 上下の歯は接触しないように。 •下顎を「ジョギング」させるように、上下に小さくリラックスした状態で動かします。歯の接触はさせないままです。トレーニングセッションのエクササイズ
•歯科医師の指導の下、行ってください。患者さんの個別の問題によっては、1回または2回で十分です。 •トレーニングセッションの間、歯を食いしばらないよう注意しましょう。そうなった時には、「m(ム)」の音を出して、「顎を落とします。」 •歯が接触するのは物を食べる時だけです。 •ウェブサイト上のスライドショー(8枚)に従ってエクササイズを行いましょう。 1.できるだけ大きく開口して、閉じる。 •最後の位置で顎を数秒停止。 •歯は接触しない。 •同じ動きを5〜10回することを、1日2〜3回行う。 2.2本の指を顎の下に当てて、顎の動きに抵抗させながら、1.と同じ動きをする。 •最後の位置で顎を数秒停止。 •歯は接触しない。 •同じ動きを5〜10回することを、1日2〜3回行う。 3.下顎をできるだけ前に突き出して、戻す。 •最後の位置で顎を数秒停止。 •歯は接触しない。 •5同じ動きを5〜10回することを、1日2〜3回行う。 4.2本の指を顎の前に当てて、顎の動きに抵抗させながら、3.と同じ動きをする。 •最後の位置で顎を数秒停止。 •歯は接触しない。 •同じ動きを5〜10回することを、1日2〜3回行う。 5.下顎をできるだけ右にずらして、中央に戻す。それからできるだけ左にずらして、中央に戻す。 •最後の位置で顎を数秒停止。 •歯は接触しない。 •同じ動きを5〜10回することを、1日2〜3回行う。 6.2本の指を顎の右と左に当てて、顎の動きに抵抗させながら、5.と同じ動きをする。 •最後の位置で顎を数秒停止。 •歯は接触しない。 •同じ動きを5〜10回することを、1日2〜3回行う。 7.開口して2本の指を下顎前歯に置く。それから指で圧を加えながらゆっくりと口を閉じる。 •最後の位置で顎を数秒停止。 •歯は接触しない。 •同じ動きを5〜10回することを、1日2〜3回行う。 8.このストレッチ・エクササイズの終わりに、大きく開口する。それから指を上下顎の前歯に当てて、さらに大きく開口させる。 •10〜15秒負荷し続ける。 •歯は接触しない。 •同じ動きを3回することを、1日2〜3回行う。顎関節のスナップ音改善トレーニング
このエクササイズの目的は、開口時に関節頭が顎関節円板の上に滑り上がるようにすることです。これにより、円板が関節頭前方の同じ場所に留まりながらも、顎運動が容易になり、パチパチというスナップ音と、それに伴う痛みが軽減されます。 1.肩を伸ばしてリラックスする。 2.「m(ム)」の音を出して、下顎を安静にする。歯が接触しないようにする。 3.スナップ音が聞こえるまで、大きく開口する。Figur 1 4.下顎を少し前に突き出して、顎が前に出ている状態のまま口を閉じる。Figur 2 5.下顎が前に出た状態で2〜3分口を開閉する。これでスナップ音は聞こえなくなるはず。Figur 3 6.一日少なくとも3回繰り返す。 このエクササイズの効果に気が付くまでには、通常、数週間かり、完全な効果が得られるのは2か月後だそうです。 下顎を前方に突き出すのは、スナップ音を消すのに必要な量だけにすることが重要で、それ以上は突き出さないように。下顎を前方に突き出し過ぎると、エクササイズが原因で痛みを生じるリスクがあります。痛みを引き起こさないだけの顎関節の隙間がどのくらいか見つけるために、下顎のさまざまな前方位置を試してみる必要があるかもしれません。 エクササイズ後に痛みを感じるのは正常ですが、エクササイズ中に痛みを感じた場合は、中止して歯科医に相談してもらいます。
著者西 真紀子
NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー
略歴
- 1996年 大阪大学歯学部卒業
- 大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
- 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
- 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
- 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
- 2018年 同大学院修了 PhD 取得
- NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP):
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