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2024年7月のピックアップ書籍

2024年7月のピックアップ書籍
2024年7月のピックアップ書籍

疑問の答え、問題解決に役立つアドバイスが網羅。見やすく、明解! そのまま使える、明日から使える 歯周組織再生療法 ポケットガイド

村上伸也・編 北村正博/野崎剛徳/山下元三/竹立匡秀/ 沢田啓吾/高山真一/辻 翔太・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 4,400円(本体4,000円+税10%)・112頁 評 者 沼部幸博 (日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座) 歯周治療の一連の流れの中、歯周外科治療における選択肢の1つとして「歯周組織再生療法」がある。この治療法として、本邦では1980年代後半に臨床現場に登場の「歯周組織再生誘導法(GTR法)」、2000年前後に登場のエナメルマトリックスタンパク質「エムドゲイン®」、そしてメイド・イン・ジャパンの歯周組織再生医薬品として登場したFGF-2製剤「リグロス®」の利用などがあげられる。それらはこれまで歯周病患者に対して用いられ、数多くの歯を救ってきた。 当然筆者も学生教育の場や卒後研修などで、歯周組織再生の原理から始まり、各治療法の適応症、禁忌症、そして実際の術式を、講義や臨床基礎実習を通じて教授してきた。しかしそれらの座学や実習で得た知識や技術が、臨床現場ですぐに実践できるのかというとそうでもないようで、その理由の1つにはおそらく、「確認したいときに適切なテキストが身近にない」ことがある。歯周病の教科書や専門書は常時携帯するにはやや不便を感じるし、内容も詳しすぎる。 そこで本書『歯周組織再生療法ポケットガイド』である。「歯周組織再生療法の準備は?」「術式のポイントは?」「術後のケアは?」それらの疑問に答えるtips(問題解決に役に立つヒントやアドバイス)が網羅された知恵袋を、あなたの白衣のポケットに収めることができる。必要なときにさっと取り出し、即時に必要な内容を確認でき、「見やすく明解」。これが他書にはない本書の大きな特徴である。もちろん、初心者の読者は最初からじっくりと各章を順に読み進めてもよい。最後のページを閉じる頃にはリグロス®を用いた歯周組織再生療法の基本、術式のポイントが理解できる仕組みとなっている。 本書は、CHAPTER1から、 「1. 再生療法の前に歯周基本治療」「2. リグロス®を用いたフラップ手術までの基本的な術式(フロー)」「3. リグロス®と失敗しないための症例選び」「4. 最小限の手術器具をそろえる」「5. 術野の消毒、よく効く麻酔」「6. フラップデザインと切開の基本」「7. 剥離・掻爬・歯周組織再生剤・材料の注入」「8. 縫合、歯周包帯」「9. 術後のケア・抜糸」の9章で構成され、的確に歯周組織再生療法を施術するうえで必要な概念、専門知識、準備すべきもの、そして検査・術式などが、各章ごとに豊富な図表や写真、参考文献などを駆使して解りやすく詳説されている。 この本で焦点を当てているリグロス®開発の中心で、編者の村上伸也先生の歯周病の世界での獅子奮迅の活躍は、業界の多くの人々が知るところだが、著者の大阪大学歯学部のスタッフの方々、同大学出身の先生方と作り上げた本書には、歯周組織再生療法を活用するためのtipsが数多く散りばめられている。 このように、本書は歯周組織再生療法実践のための指南書の決定版で、チェアサイドで、いや、ポケットに入れて持ち歩くパートナーとして、是非お勧めしたい1冊である。

なぜ“お口ポカン”が起きるのか? 口腔機能の謎を解き明かす1冊 世界最強の歯科保健指導 下巻 ─おもしろすぎて眠れなくなる口腔機能論─

岡崎好秀・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 14,850円(本体13,500円+税10%)・264頁 評 者 山本浩正 (大阪府・山本歯科) 岡崎好秀先生の著書『世界最強の歯科保健指導』(クインテッセンス出版)は上巻、中巻、下巻の3部作になっている。そして私は中巻の書評(他誌)を担当させていただいた。岡崎先生の書かれた大著の書評は「任重くして道遠し」だったが、何とか書き上げ岡崎先生のOKもいただいた。ホッと胸をなでおろしたのもつかの間、次は下巻の書評依頼が来た! 「マラソンのゴールしたての人に、もう一度走りなさい」といわれたようなものだ。もしかしたら「世界最強のハ○スメント」かもしれない。いやいや「イルカのプロービングを一緒にやりませんか〜?」と私を誘うような岡崎先生に悪意があるはずがない。真面目に“ウンチ”の話をするような人に悪い人はいない。そこで“世界最強”に焦点を当てながら本書を解説してみたい。 “世界最強”というんだからこの本はよっぽど頑強に制作されているに違いない。ただ、上質の紙ではあるもののハードカバーではないので、若い頃のアントニオ猪木だったら引きちぎることができるかもしれない。いやいや、本書は3冊で1セットだった。毛利元就の「三矢の訓」のごとく、3冊が合わさるとアントニオ猪木でもかなわない。やはり物理的に最強なようだ。 もし“あなた”が科学論文を読みあさっているのであれば、異次元の世界に引きずり込まれることを覚悟しなければならない。今までの科学論文の多くは「まず仮説を立て、それを証明する」という手筈を取る(もちろん反証可能性についても吟味します)。つまり“仮説”駆動型。それに対して岡崎方式は“仮説”ではなく、“なぜ”という疑問を立てる“なぜ”駆動型。“なぜ”の後は本で調べたり、専門家に聞いたりしながらその答えにたどり着く努力をする。本書を見ると、その到達までの道のりがとってもとっても長いものがあり、これほど時間のかかった“なぜ”駆動型学習の成果をこんなに簡単に人に教えていいものかとも思ってしまう(セコイですか?)。本書には「どうしてこの人の下口唇は見えないのだろうか?(p.39)」や、「どうしてヒトの歯は下顎前歯から生えるのだろう?(p.132)」、「どうして誤嚥が起きるんだろう?(p.184)」といったたくさんの“なぜ”があり、それらが解決されていくプロセスのワクワク感に満ち溢れている。ちなみに本書で扱われる“なぜ”をPubMedで検索しても膝を叩くような答えに出会うのは難しいだろう。“仮説”駆動型では解決しにくい臨床の“なぜ”ばかりだからだ。そのあたりに“世界最強”といわれるゆえんがある。 本書後半には「なぜ歯周病菌は歯周ポケットの奥が好き?(p.213)」や「なぜ歯周病菌は血液が好きなのか?(p.228)」などペリオ関係の“なぜ”が出てくる。これは私の領域なので「まさかの領空侵犯?」と思ったが、私が見上げるほど体格のよい岡崎先生にはかなわない。やっぱり“世界最強”なのだ。

リアルな漫画に大共感! スタッフ教育にも最高の一冊 マンガでわかる! 歯科臨床での動機づけ面接超入門 患者さんがみるみる変わる、スタッフも楽になる

吉田直美/新田 浩/磯村 毅・著 うさっぱ・著、マンガ クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 4,290円(本体3,900円+税10%)・112頁 評 者 渡部 守 (新潟県・まもる歯科) 自分でも驚いたのだが、読み始めたら止まらなくなり、一気に全部読んでしまった。分厚い本でないとはいえ、こういうことは初めてだ。 この本が取り扱うのはただ一点、モチベーションの低い患者といかにコミュニケーションをとるか、である。たしかに「プラークコントロールができない」「タバコをやめてくれない」「治療に対する意欲がない」患者とどう付き合うか…、臨床で毎日ぶつかる問題だ。そしてこの本には、そんな患者たちが、「そのまま」漫画で登場してくる。 主人公は若い歯科衛生士だが、私は思わず駆け出しの頃の自分を重ね合わせていた。モチベーションが低い患者に対して、一生懸命に説明し、なんとか説得しようとする。しかし患者は聞いてくれないか、聞いているふりをする。主人公の怒りや無力感の表情は、あの頃の私と同じだ。 だが、やがて主人公は成長し、患者へのアプローチを変えていく。そして患者もまた変わっていく。これは漫画表現の利点だ。描かれた表情の変化で、心の動きが手に取るようにわかるのだ。聞けば、漫画を担当した「うさっぱ先生」は歯科医師と漫画家の二刀流だという。だから漫画にリアリティがあるのだろう。 もちろん心理学的な背景も文章でしっかり解説されている。だが、あらかじめ登場人物の心の変化を漫画で直感的に把握しているから、解説文は苦もなく理解できる。 読みながら思った。もし、主人公やその教師役である先輩スタッフが、うちの医院にもいてくれたら…。彼女らは患者の言葉を聴き、その心の奥にある、真の希望を探し出す。そして、その願いをプラスの方向に向けて、患者の行動を変えていく。日本中の院長がこんなスタッフを欲しがっているだろう。 いや、違う。主人公のような才能を秘めたスタッフは、本当はどの医院にもいる。しかし、その芽を伸ばせていないだけではないか? そして、とてもいい方法を思いついた。そうだ、この本に教師役になってもらえばいいじゃないか。とりあえず本書を3冊買うことにした。さほど高価な本でもないので、大した出費ではない。それが先日届いたので、スタッフに順番に配ってみた。 「ありがとうございます、これ読んでみたかったんですよ」 え、この本知ってたの? てっきり嫌な顔をされると思っていたが、意外な反応だった。読み終わった人から感想を聞いてみると、「全部『あるある』で面白かったです!」「とにかくリアル」「会話も治療技術の一つですね!」「自分のやり方とぜんぜん違って衝撃でした」「『伝えている』と『伝わっている』って違うんだと思いました」「これ、家庭でも使えます」「漫画でサクサク読めました!」などなど、勢いにこっちが圧倒されそうになった。 患者のモチベーションを上げる本だと思っていたが、どうやら私やスタッフまで「動機づけ」されてしまったらしい。

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