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エピソード2:第8回
逆流性食道炎と口腔内所見

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医科歯科ボーダレスな
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エピソード2:第8回
逆流性食道炎と口腔内所見

医科歯科ボーダレスな<br>診療を目指して<br>エピソード2:第8回 <br>逆流性食道炎と口腔内所見
医科歯科ボーダレスな
診療を目指して
エピソード2:第8回
逆流性食道炎と口腔内所見
逆流性食道炎(Reflux esophagitis)は、おそらく歯科の皆様にも馴染みのある疾患だと思います。具体的には、「胸やけ」と「呑酸(どんさん):胃液(胃酸)が口腔内まで逆流すること」が代表的な自覚症状です。

逆流性食道炎の有病率は成人の10~20%とも言われているので、医療機関未受診の方も含めると非常に多い疾患といえます。

内科・消化器内科を標榜する筆者のクリニックに受診される患者さんの主訴として「胸やけ」、「呑酸(どんさん)」は比較的多く、耳鼻咽喉科で喉頭ファイバー検査の後、下咽頭部の発赤を指摘され当院にご紹介いただくこともしばしばです。

逆流性食道炎は、多くが胃酸の食道への逆流に起因するものと考えられており、類似の概念として胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease,GERD:ガード)があります。

胃食道逆流症には、以下の3種類に分類されます。
①食道炎(食道粘膜のただれ)がなく自覚症状のみがあるタイプ(これを「非びらん性胃食道逆流症」、Non-erosive reflux disease, NERD ナードともよばれます)
②食道に炎症所見があり、かつ自覚症状があるタイプ
③自覚症状はなく、食道粘膜の炎症所見のみがあるタイプ

食道粘膜にびらんがある②③を「逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)」と言います。胃食道逆流症は生命に関わるような疾患ではありませんが、日常生活の質(QOL)をさまざまな影響をおよぼすため適切な対処が必要です。(日本消化器病学会ガイドライン:https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/gerd.html)

歯科の先生方に良く知られている逆流性食道炎患者の口腔内の所見として「酸蝕歯(Tooth erosion)」があります。釈迦に説法ですが、酸蝕症の原因は、酸が体内から口腔に出ていくる内因性と、酸性度の強いものを口にする外因性のものに分類されます。

内因性:胃食道逆流症、摂食障害による嘔吐など
外因性:酸性度の高い飲食物や医薬品、サプリメントなどの摂取

ここで気になるのが、咬耗(Tooth wear)と酸蝕歯の違いなのですが、そもそも併存することもありますから、明確に区別できるものでもないと思います。将来のことを考えると、進行を抑制するための対策は必要かと思います。

逆流性食道炎と歯ぎしりについては、その両方が観察されることが多く、関連があると推測されます。これについては「胃酸によって酸性になった口腔内を中和しようとして、唾液腺を刺激して唾液の分泌を活発化するために無意識に歯ぎしりする」という説をご存じの方がいるかと思います。

その理屈では、胃酸を抑制すれば歯ぎしりが改善するということになります。これまでに逆流性食道炎と診断されていて、かつ歯ぎしりがある方に強力な胃酸分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬(Proton pump inhibiter:PPI)を投与し、歯ぎしりが減少するかどうか試したことがあります。しかし結果として、歯ぎしりが減ったような実感は得られていません。

「ゲップが多い人は噛みしめ癖がある」ということを、歯科医師のコラムで読んだことがあります。検索してみるとゲップや排ガスと噛みしめ癖についての記述がたくさん見つかり、「噛みしめ呑気症候群」という記載も出てきます。

噛みしめ癖や上下の歯列接触癖(Tooth contacting habit: TCH)があると、呑気症や空気嚥下症をきたし、ゲップや排ガスが増えるということですが、私の日々の臨床実感ではまちがいなく関連があります。TCHに対する意識付けと是正指導によりゲップ・排ガスが改善するケースは日常的に経験するのですが、ほとんどの内科医はこのことを知らないと思います。

また、逆流性食道炎と併存しやすい疾患として気管支喘息があり、気管支喘息の悪化要因と考えられています。気管支喘息患者の口腔内所見として、軟口蓋が深く、鼻閉気味で口呼吸が多いという臨床的実感があります。これは気管支喘息患者が幼少期からアレルギー性鼻炎を合併していて、鼻閉のため口呼吸の習慣となりやすいことが多いことも一因だと思われます。

このように、歯科口腔に興味をもち、歯科医師・歯科衛生士だったらどのようなところが気になって深堀りするのだろうと想像しながら診療に臨んでいます。

そこで、歯科医師・歯科衛生士の皆様にご提案したいのは、その逆をやってみることです。医科の医師であれば、この患者さんのどのようなことに興味をもって診療するのかと想像しながら歯科診療にあたると、口腔疾患や所見と全身疾患の新たな関連性を発見できるかもしれません。

そもそも一つの体ですから、Oral(口腔)⇔Total(全身)にボーダレスに眼を向けていきたいものです。

著者細田正則

ほそだ内科クリニック 院長・医師・医学博士

略歴
  • 1964年 米国ミシガン州生まれ
  • 1990年 京都府立医科大学卒業
  •     医師免許取得
  •     京都府立医科大学第三内科(現在の消化器内科)入局
  • 1998年 京都府立医科大学大学院修了 医学博士号取得
  • 2011年 ほそだ内科クリニック 開院
所属学会・専門医など
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本消化器病学会認定消化器病専門医・指導医
  • 日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医
  • 日本医師会認定産業医
細田正則

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