高齢の患者さんの服薬ケアにおいて、薬剤師は日々さまざまな副作用を確認していますが、その中でも「見落とされやすく、かつ生活の質を大きく左右する」のが口腔にかかわる副作用です。 口腔乾燥を引き起こす薬剤は、500種類以上あるとされています。唾液量の低下はう蝕をはじめ口臭、義歯の不調、嚥下障害、味覚の変化など、多方面のトラブルへとつながります。薬剤師は、服薬指導の場で「口が乾く」「飲み込みにくい」「味が薄く感じる」などの訴えを受ける機会が多く、早期発見のキーパーソンといえるでしょう。 歯科診療で多くみられる口腔粘膜炎や口腔カンジダ症は、抗菌薬・吸入ステロイド・免疫抑制剤などで生じやすく、痛みによる食事量の低下が栄養状態の悪化を招きます。薬剤師は舌苔の増加、口角炎、義歯下の発赤など、初期変化に気づきやすいため、適切な受診勧奨によって早期治療につなげることが可能です。 また、抜歯などの外科処置後の「顎骨壊死」についても注意すべき1つです。骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート製剤、デノスマブ)を使用している患者さんでは、抜歯後の顎骨壊死リスクが上昇するため、全身状態の把握や薬剤情報を共有したうえで、適切な口腔衛生管理や慎重な外科処置、術後の経過に関する患者さんへの説明を行うことが重要となります。 さらに、薬局で特に重要な支援が「錠剤嚥下困難」への対応です。2018年に保険収載された「口腔機能低下症」で注目を集める嚥下機能の低下は口腔機能の衰えと連動しており、咳き込みやむせを繰り返す患者さんには、剤形変更(粉砕・OD錠・シロップ)、服薬時の姿勢指導、服薬補助製品の活用などが大きな助けになります。また、薬剤性の嚥下障害が疑われる場合には、歯科のみならず医科とも連携し、薬剤を変更することで嚥下機能が改善するなど、高齢者に多い誤嚥性肺炎の予防を図ることも可能となります。 このように、地域の歯科医師と薬剤師が情報を共有することで、患者さんの“食べること”や“飲み込むこと”の安全を保ち、全身の健康管理へとつなげることができます。薬剤師は、口腔内の副作用についての最初の発見者であり、歯科医師はその原因に専門的に介入できる存在——この連携こそが、地域医療の質を大きく引き上げる鍵といえるでしょう。
TOP>コラム>薬剤師×歯科医師がつくる「地域で支えるお口の健康」 第4回:口腔機能と服薬支援——薬剤師が支える“食べる”の安全性
著者後藤 大
ごとう歯科医院院長(宮崎県宮崎市)
略歴
- 神奈川歯科大学卒業
- 日本歯科医師会災害時対策・警察歯科総合検討会議委員
- 宮崎県歯科医師会 警察歯科及び災害時対策会議副委員長
- 宮崎市郡歯科医師会地域歯科担当理事
- 日本災害時公衆衛生歯科研究会(DPHD)世話人
- 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士
災害時の歯科医療支援体制や警察歯科活動の整備に携わるとともに、地域における口腔保健・嚥下リハの連携強化をつうじて、平時・有事をとおした歯科の社会的機能向上に取り組んでいる。












