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勤務態度等に問題のある社員の対応方法④
~試用期間中に能力不足や勤務態度不良が
発覚した社員の対応方法~

2021/7/20 歯科医院経営

こんにちは。弁護士の佐賀寛厚です。

「問題社員の対応方法」についてコラムの第4回目となります。この時期は、新入社員・中途社員を問わず、新しく入社した社員が、期待していた能力を全く備えていなかったり勤務態度が不良であるなど、採用時の想定と異なっていたとして、その対処方法について相談が増える時期でもあります。そこで、今回は、具体的な問題社員のうち、「試用期間中に能力不足や勤務態度不良が発覚した社員の対応方法」についてご説明します。

~目次~
 1無期契約社員(正社員など)の場合
 (1)解雇できるのはどのような場合か
 (2)退職勧奨をする場合の注意点
 (3)問題社員を退職させることができない場合の対応方法
 (4)具体的な問題社員のパターンごとの対応方法
 ①試用期間中に能力不足や勤務態度不良が発覚した社員
 2有期契約社員(契約社員やパート社員など)の場合


●試用期間とはなにか
会社の就業規則や労働条件通知書を見ると、勤務開始後一定期間(3か月か6か月が多いです)を試用期間と定めていることが多いです。試用期間が経過すると、いわゆる本採用になるところ、「試用期間中であれば自由に解雇をしてもいいんですよね?」という質問をよく受けますが、これは間違いです。そもそも、試用期間中の労働契約については、一般的には、「採用決定段階では十分に調査ができなかった資質、性格、能力等について、実際の勤務において調査したうえで、最終的な採否を決定するための解約権が付いた労働契約」であると考えられています。そのため、有期雇用のように、期間が満了したことを理由として当然に労働契約を終了させることが認められるわけではなく、上記の解約権の行使が認められる場合でないと解雇(本採用拒否)は認められないのです。

●経歴詐称や能力不足の場合に本採用拒否は認められるか
上記のように、一般的に、試用期間中の労働契約は解約権付きの労働契約と考えられているため、本採用拒否は解約権の行使による解雇となります。そのため、本採用拒否については、正社員に対する解雇よりは会社の裁量の幅が広いものの、解雇の要件である「客観的に合理的な理由」が必要とされています。

(1)経歴詐称の場合
労働者に重大な経歴詐称があり、職務との関係から、
①労働者の能力や資質に疑義が生じるような場合
②会社の秩序維持に重大な支障が生じるような場合
には、本採用拒否が認められる場合が多いと考えられます。
具体的には、
①重大な学歴詐称や職務経歴詐称がある場合
②犯罪歴や前職での解雇の事実等を秘匿していた場合
には、本採用拒否が認められやすいと考えられています。

(2)能力不足の場合
労働者が、期待していた能力・資質を有していなかった場合には、その能力・資質がどれだけ低いのかや、改善の見込みがあるかどうかによって本採用拒否が認められるかが判断されますが、実務上、能力不足を理由とした本採用拒否は、ハードルが高く、認められない場合が多いです。裁判例においても、労働者の中で下位10%未満の考課順位であった者について、教育、指導を実施することで労働能力を向上する余地があったとして本採用拒否が無効とされたものや、低い考課の労働者に対しては降格などの処分をすることもできたなどとして本採用拒否が無効とされたものなどがあります。これらの裁判例などを踏まえると、能力不足が著しいだけでなく、教育・指導を継続しても改善する見込みがないということまで立証できるような場合でなければ本採用拒否は難しいと思われます。

●新卒社員と中途社員で対応が異なるか
新卒社員の場合、能力や資質については、会社が教育・指導し、労働者が習得することが予定されていますので、遅刻や無断欠勤が度重なり教育・指導をしても改善されないような悪質な場合はともかく、単に、勤務成績が不良であるとか能力が低いというだけでは、本採用拒否は認められないことが多いです。一方、中途社員の場合、特定の能力・資質等を保有していることを前提として採用したものの、経歴詐称により当該能力・資質等を保有していない場合はもちろん、当該能力・資質等を明らかに保有しておらず、教育・指導をしても改善することを見込まれない場合には、本採用拒否は認められやすいと考えられます。

●まとめ
以上のとおり、重大な経歴詐称の場合には本採用拒否は認められやすいですが、能力不足を理由とした本採用拒否はハードルが高い場合が多いです。そのため、能力不足を理由として本採用拒否をする場合には、ⅰ能力・資質等が明らかに不足していること、及び、ⅱ教育・指導をしたものの全く改善されていないことについて、客観的な証拠を残しておくことが必要となります。また、能力不足の労働者に対しては、試用期間延長をしたうえで、さらなる教育・指導をするとともに、それでも改善しない場合には退職勧奨を並行して行うという方法が適切な場合も多いです。このように、本採用拒否については、解雇と同様に、専門的な知識や経験に基づいた対応をする必要がありますので、本採用拒否についてお困りの際には、お気軽にご相談ください。