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薬剤師×歯科医師がつくる「地域で支えるお口の健康」 第2回:世界標準の「正しい歯磨き」と薬剤師が支える生活習慣ケア

薬剤師×歯科医師がつくる「地域で支えるお口の健康」 第2回:世界標準の「正しい歯磨き」と薬剤師が支える生活習慣ケア
薬剤師×歯科医師がつくる「地域で支えるお口の健康」 第2回:世界標準の「正しい歯磨き」と薬剤師が支える生活習慣ケア
近年、歯磨きに関する国際的な推奨が整理され、FDI(国際歯科連盟)のガイドラインによって「世界標準の歯磨き」が明確になりました。今回はそのポイントを紹介するとともに、「薬局でのお声かけが、患者さんのう蝕リスクを大きく低減させる一助となる」という視点についてお伝えします。

まずもっとも重要なのが「就寝前の歯磨き」です。就寝中は唾液分泌が大きく低下し、口腔内が細菌増殖の温床となります。どれだけ楽しい食事や晩酌の後でも、この1回を怠ると、う蝕や歯周病のリスクが一気に高まります。さらにFDIは“1日2回以上・各2分以上”を推奨しています。これは単なる生活習慣ではなく、「歯面全体をまんべんなく清掃するために必要な、根拠に基づいた時間設定」です。

薬剤師が患者さんへ伝えやすいポイントの1つに「うがいをしすぎないこと」があります。歯磨き後に強くブクブクうがいをしてしまうと、せっかく口腔内に残っているフッ化物が洗い流されてしまいます。ガイドラインでも「余分なペーストだけを吐き出す」と明記されており、これはフッ化物効果を最大化するうえで非常に重要な習慣です。薬局ではフッ化物濃度の説明や、小児への適切量の指導、保護者による見守りの必要性などを加えることで、より理解が深まります。

また、歯ブラシの種類——すなわち「電動 vs. 手動」の優劣については、結論として「どちらでもよい。ただし使い方が重要」とされています。高価な電動ブラシでも、軽く当てているだけでは十分な効果は得られません。一方で手磨きでも、小刻みに正しく動かすことで十分にプラーク除去が可能です。薬剤師がアドバイスする際には、患者さんの手指の動かしやすさ、介護の必要性、歯列の状態などをふまえた個別提案が効果的です。

さらに、歯ブラシだけでは口腔内の汚れの“60%”しか落とせないという事実も、患者さんの行動変容を促しやすい重要な情報です。残り40%は歯間部や歯の境目に残るため、フロス・歯間ブラシ・ワンタフトブラシの併用が不可欠です。薬局でも実際の商品を手に取ってもらいながら、歯間の広さに応じた器具選択のポイントを説明すると、理解はさらに深まります。

加えて、感染症流行期には家族間での歯ブラシの接触を避ける保管方法や、ブラシの交換時期(毛先の広がり、あるいは3〜4か月ごとの交換)も、薬剤師が伝えやすい実用的なアドバイスとなります。

薬局のカウンターは、日々の生活にもっとも近い「生活支援の場」です。薬剤師のひと言が、患者さんの歯科リスクを確実に下げる力をもっています。世界標準の歯磨きを地域に根付かせる取り組みは、歯科医師だけでなく薬剤師とともに進めるべき「地域の健康づくり」の第一歩なのです。

著者後藤 大

ごとう歯科医院院長(宮崎県宮崎市)

略歴
  • 神奈川歯科大学卒業
  • 日本歯科医師会災害時対策・警察歯科総合検討会議委員
  • 宮崎県歯科医師会 警察歯科及び災害時対策会議副委員長
  • 宮崎市郡歯科医師会地域歯科担当理事
  • 日本災害時公衆衛生歯科研究会(DPHD)世話人
  • 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士

  • 災害時の歯科医療支援体制や警察歯科活動の整備に携わるとともに、地域における口腔保健・嚥下リハの連携強化をつうじて、平時・有事をとおした歯科の社会的機能向上に取り組んでいる。
後藤 大

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