オーラルフレイルとは「口のささいな衰え」を意味し、全身のフレイルに先行して現れる重要な概念です1。身体的・心理的・社会的フレイルの3つの側面のうち、口腔機能はもっとも早期に変化しやすい領域であるといえます。 このオーラルフレイルの厄介な点は、患者さん自身がその変化に気づきにくいことです。一方で、薬剤師は患者さんとの日常的な会話の中から「初期サインを拾いやすい」という特性があります。 たとえば、「最近、噛みにくい食品が増えた」「食事に時間がかかる」「滑舌が悪くなった」「飲み込む時にむせることが増えた」「口が乾いて飲みにくい」といった何気ない訴えは、歯科と薬局が連携して対応することができます。 口腔機能の低下は、栄養摂取の質を下げ、「タンパク質不足→筋力低下→転倒→要介護」という「負の連鎖」に直結しますので、早期発見・防止はとても重要です。 特に薬剤師が気づきやすいのは、錠剤嚥下の変化ではないでしょうか。錠剤が飲みにくい背景には、薬による副作用が悪影響を及ぼしている場合がありますが、舌圧低下や唾液量の減少、口腔内感覚の低下など、まさにオーラルフレイルの初期症状が潜んでいることも少なくありません。 薬局カウンターは「日常と医療をつなぐかなめ」であり、窓口で対応する薬剤師は患者さんの生活のささいな変化をもっとも早く察知できるはずです。「最近、お薬を飲む時にむせることはありませんか?」「お薬が喉に残る感じはしませんか?」といった何気ない問いかけが、オーラルフレイルの早期発見につながるでしょう。 そして、薬局から歯科へ早期につないでもらうことで、咀嚼機能評価、義歯調整、口腔筋トレーニング、舌圧向上訓練など、歯科医療として多面的な介入につなげることが可能です。また、オーラルフレイルは「可逆性が高い」段階ですので、それぞれの地域における連携から早期介入がもっとも効果を発揮する可能性があります。さらに2024年度診療報酬改定では、歯科における「診療情報等連携共有料1」の連携先に保険薬局が追加され、歯科医師と保険薬局との服用薬の情報共有が評価されました。このように制度上の後押しもあり、より連携がしやすくなっています。 地域を見渡すと、オーラルフレイルの初期サインをもっとも見つけやすいのは医科や歯科の診療所を除けば薬局です。そして薬剤師は、住民の「食べる力」「飲み込む力」をも支える私たち歯科医師の重要な協働パートナーと言っても過言ではありません。 今後、さらなる歯科と薬局の日常的な連携によって、地域におけるフレイル予防がよりたしかなものとなり、ひいては「医歯薬連携」がさらに広がることで住み慣れた地域で生涯にわたって口から食べ続けられる未来を支えていくことが期待されます。 参考文献 1.日本老年歯科医学会.オーラルフレイルを知っていますか?https://www.gerodontology.jp/committee/002370.shtml(2026年2月10日アクセス)
TOP>コラム>薬剤師×歯科医師がつくる「地域で支えるお口の健康」 第5回:オーラルフレイル——薬局だから気づける“未病のサイン”
著者後藤 大
ごとう歯科医院院長(宮崎県宮崎市)
略歴
- 神奈川歯科大学卒業
- 日本歯科医師会災害時対策・警察歯科総合検討会議委員
- 宮崎県歯科医師会 警察歯科及び災害時対策会議副委員長
- 宮崎市郡歯科医師会地域歯科担当理事
- 日本災害時公衆衛生歯科研究会(DPHD)世話人
- 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士
災害時の歯科医療支援体制や警察歯科活動の整備に携わるとともに、地域における口腔保健・嚥下リハの連携強化をつうじて、平時・有事をとおした歯科の社会的機能向上に取り組んでいる。













