口腔機能発達不全症 その3
“口ポカ~ン”の子ども達の食べ方
2020/4/15 デンタル〇〇デザイン

"口腔機能発達不全症"の診断をするうえで、歯科医師には大きな欠点がある。それは、子ども達が食べている様子を見る機会が少ないことだ。 だから、どの食べ方が正常で、どれが異常かわからない。 そこで一つ、読者にお願がある。 もし学校歯科医なら、歯科健診の際に給食風景を見学してはどうだろう。 携わっていなければ、子どもが通園・通学している施設、あるいは、教育や保育関係の知り合いや患者さんにお願してはどうだろう。 なかでもお勧めなのが保育園の見学だ。 2・3歳児に、不自然な食べ方をしている子が多い。 園には、必ず数名いるはずだ。 しかも、現場の保育士は困っている。 もちろん、最初から食べさせ方を提示することは難しい。 歯科医師がこの問題について考える"きっかけ"になれば十分だ。 さて、その代表が"常に口がポカ~ンと開いている子ども達"である。 ここで彼らが、どのような食べ方をしているか紹介する。 5歳女児がバナナを食べる様子を動画撮影し、一部を静止画像にして分析した。 まず図と照らし合わせながら、ご覧いただきたい。 ①:バナナを前歯でかじる寸前。口唇が少し開いている。 ②:バナナをかじる瞬間。 ③:口に入れ右側の臼歯で噛んだが、口唇はしっかり閉じていない。 ④:口を開けたが、中にはバナナが見える。
⑤:もう一度噛んだが、口唇はしっかり閉じていないため少しバナナが見える。 ⑥:口を開けた。中にはバナナが見える。 ⑦:⑤と⑥を数回繰り返し、始めて口唇を閉じて嚥下する。 ⑧:前歯でバナナをかる。(①~⑦を繰り返す。)
この動画から次のことがわかる。 1:食べている間、常に口のバナナが見える。 2:嚥下する時のみ口唇を閉じる。 3:閉口時でも口唇が開いている。 通常、私達は口唇を閉じて咀嚼する。 しかし、この女児は"パクパク食べ"しかできないのだ。 さてこの様子、小学校1年生を受け持つ担任の教師に見ていただいた。 すると、「わかりました!給食で食べるのが遅い子は、みんなこのような食べ方をしています」と言われた。 なるほど!歯科医から見て"口ポカ~ンの子"は、教師から見ると"食べるのが遅い子"と見えるのだ。 「このような子は、クラスに何人いますか?」とお聞きした。 すると「20人中に2名います」との返事だった。 小学校1年生では、約1割にこの様な問題を持つ子がいることがわかる。 そこで教師にお願いし、"その2名のロウソクを吹き消す様子"を撮影していただいた。
すると ①:ロウソクを吹く前 ②:吹く前に、少し口を小さくして息を吸う。 ③:口を開けたまま、吹き消そうとした。 ④:吹き続けるが、火は微動だにしない。 驚くことに、"ハア~"の口で吹き消そうとしたのである。 これでは、消えるわけがない。 さらに"うがいの様子"もお願いした。
すると ①:コップの水を口に入れた。 ②:含んだ途端、吐き出した。 この間わずか1秒。 女児は、ブクブクうがいができなかったのだ。 続く