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口腔機能発達不全症 その3”口ポカ~ン”の子ども達の食べ方

口腔機能発達不全症 その3”口ポカ~ン”の子ども達の食べ方
口腔機能発達不全症 その3”口ポカ~ン”の子ども達の食べ方
"口腔機能発達不全症"の診断をするうえで、歯科医師には大きな欠点がある。



それは、子ども達が食べている様子を見る機会が少ないことだ。
だから、どの食べ方が正常で、どれが異常かわからない。
そこで一つ、読者にお願がある。

もし学校歯科医なら、歯科健診の際に給食風景を見学してはどうだろう。
携わっていなければ、子どもが通園・通学している施設、あるいは、教育や保育関係の知り合いや患者さんにお願してはどうだろう。
なかでもお勧めなのが保育園の見学だ。
2・3歳児に、不自然な食べ方をしている子が多い。
園には、必ず数名いるはずだ。
しかも、現場の保育士は困っている。
もちろん、最初から食べさせ方を提示することは難しい。
歯科医師がこの問題について考える"きっかけ"になれば十分だ。

さて、その代表が"常に口がポカ~ンと開いている子ども達"である。
ここで彼らが、どのような食べ方をしているか紹介する。
5歳女児がバナナを食べる様子を動画撮影し、一部を静止画像にして分析した。
まず図と照らし合わせながら、ご覧いただきたい。

①:バナナを前歯でかじる寸前。口唇が少し開いている。
②:バナナをかじる瞬間。
③:口に入れ右側の臼歯で噛んだが、口唇はしっかり閉じていない。
④:口を開けたが、中にはバナナが見える。



⑤:もう一度噛んだが、口唇はしっかり閉じていないため少しバナナが見える。
⑥:口を開けた。中にはバナナが見える。
⑦:⑤と⑥を数回繰り返し、始めて口唇を閉じて嚥下する。
⑧:前歯でバナナをかる。(①~⑦を繰り返す。)




この動画から次のことがわかる。
1:食べている間、常に口のバナナが見える。
2:嚥下する時のみ口唇を閉じる。
3:閉口時でも口唇が開いている。

通常、私達は口唇を閉じて咀嚼する。
しかし、この女児は"パクパク食べ"しかできないのだ。

さてこの様子、小学校1年生を受け持つ担任の教師に見ていただいた。
すると、「わかりました!給食で食べるのが遅い子は、みんなこのような食べ方をしています」と言われた。
なるほど!歯科医から見て"口ポカ~ンの子"は、教師から見ると"食べるのが遅い子"と見えるのだ。
「このような子は、クラスに何人いますか?」とお聞きした。
すると「20人中に2名います」との返事だった。
小学校1年生では、約1割にこの様な問題を持つ子がいることがわかる。

そこで教師にお願いし、"その2名のロウソクを吹き消す様子"を撮影していただいた。



すると
①:ロウソクを吹く前
②:吹く前に、少し口を小さくして息を吸う。
③:口を開けたまま、吹き消そうとした。
④:吹き続けるが、火は微動だにしない。

驚くことに、"ハア~"の口で吹き消そうとしたのである。
これでは、消えるわけがない。

さらに"うがいの様子"もお願いした。



すると
①:コップの水を口に入れた。
②:含んだ途端、吐き出した。
この間わずか1秒。
女児は、ブクブクうがいができなかったのだ。

続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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