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第6回(最終回):
地域医療を構築する
フォロワーシップと
倫理価値観

コラム

地域に求められる歯科医院の未来
第6回(最終回):
地域医療を構築する
フォロワーシップと
倫理価値観

地域に求められる歯科医院の未来<br>第6回(最終回):<br>地域医療を構築する<br>フォロワーシップと<br>倫理価値観
地域に求められる歯科医院の未来
第6回(最終回):
地域医療を構築する
フォロワーシップと
倫理価値観
表紙の写真は、はち歯科(以下、当院)の目の前にある田んぼをバックに当院の敷地内で子どもたちがお菓子を食べている様子を撮影した日常の光景です。当院に来たことがない子どもたちもトイレを借りに来たり、鬼ごっこしたりしています。駐車場なので危ない時は注意しますが、地域の子どもたちの拠り所になっているのであればうれしいことです。

医療人としての倫理・価値観

私は大学時代、経営についていっさい学ぶことはありませんでした。厚生労働省の2016年のデータによると、歯科医師の7割以上が独立して開業します。ほとんどの人が開業直後から経営のことを考えます。私も他の人と同じようにそれまでは医療のことを学んでいたわけですが、今考えると、とても無謀で、開業前にもっと経営のことを勉強できたら良かったと思います。 私は開業時に自分の腕(技術)があればどこでも成功できると過信していました。自分の腕があれば、患者さんもスタッフもついてくると。実際そうではなく多くの挫折を経験しました。思うようにいかなかったり、患者さんやスタッフが離れたりすることがありました。しかし、そこで救ってくれたのは、自分が学んできた医療への想いでした。大学や研修施設、勤務医時代のクリニック、勉強会、研修会でお世話になったほとんどの先生が医療に対して真摯で、向き合っておられました。たまたまかもしれませんが、そのような先生方に育てていただいたので、いつか頑張れば患者さんはわかってくれる、従業員もついてきてくれる、そう希望をもっていました。医療に志をもち、医療にかかわる仕事をできていることは私の誇りになっています。 実はここまで誇りをもてたのは、MBAを学んでいる時でした。MBAの授業の中の一つに「リーダーシップ開発と倫理・価値観」通称「LEV」という授業があります。この授業の中で、リーダーとしての心得をはじめ、倫理や価値観を学びます。その授業ではたくさんの衝撃を受けました。そして、医療を生業にしている私たちの倫理観や価値観が、とても尊く誇り高いものなのだと大きな気づきを得ました。医療も経営もたくさん共通点があります。 例えば、医療における透明性です。なんで治療が必要なのか?どんな治療をするのか?と患者さんに当たり前に説明すると思います。医療と同じく経営でも透明性は大事です。お金の透明性ではどのくらい売上や利益はあるのか?どのくらい経費をかけているのか?そんな数字から企業の成長性を出し、銀行等に決算書を報告します。従業員にもコストを明確化することで、医療にはお金が必要なことを知ってもらうことができます。 実は経営を学んでないと思っていた私ですが、経営の本質の一部は医療とともに学ぶことができていました。MBAを学ぶことで、私が医療から学んだことの大切さを再確認できました。これがMBAを学んで良かったことの1つでした。経営を学ばなくても、医療人としての倫理価値観があれば、経営の本質を理解できる、それが私の今の答えです。 行政が行っているフリーペーパー大野城への参加

これからの地域医療に必要な「フォロワーシップ」

「フォロワーシップ」という言葉はあまり聞き慣れないと思いますが、組織運営にとって、とても大事な要素だと思っています。フォロワーシップとは、チームの成果を最大化させるために、「自律的かつ主体的にリーダーや他メンバーに働きかけ支援すること」と成書等には記載されています。フォロワーというと、若い人には昨今流行っているSNSなどでは聞き慣れている言葉かもしれません。ここでいうフォロワーとは応援してくれている人を指します。組織運営でのフォロワーシップの役割は応援するだけでなく、リーダーを含むすべての人に求められるもので、役職や立場に関係ありません。 具体的には、リーダーの意思決定や行動に誤りがあると感じた場合は、臆することなく提言したり、チームがより良い方向に進むようメンバーに働きかけたりと、自分の置かれたポジションだからこそできることを主体的に実行していくことを指します。状況次第でリーダーがフォロワーとなり、リーダーシップを発揮している部下に対して、健全な批判をしたり、提言したりすることもあります。 この10年で地域に求められるものは大きく変化しました。特にこの2,3年はCOVID-19のパンデミックのなかで、社会環境が目まぐるしく変化しており、地域医療も例外なく、変化に合わせて事業を推進するスピードと柔軟性が求められています。私も年齢を重ねていくと、若いスタッフや若い患者さんとの価値観のズレを感じることも少なくありません。 そのようななかで、若い人たちが主体性と責任をもって仕事を行い、スピード感をもって進めていくためには、権限を移譲することとフォロワーシップを取ることがとても重要になってきました。1人のリーダーだけが頑張るのではなく、組織全員で頑張る、そのためのフォロワーシップが大切であると考えます。これは歯科医院の中だけでなく、地域社会でも同じです。地域医療を良くしようとするためには、私たちがフォロワーとして地域を盛り上げていくことはとても大事なことです。 地域医療に求められるのは何か?地域の中での歯科医院として何ができるのか?と模索する毎日のなかで、自分が地域に対してフォロワーシップができていたのだろうか?自分たちのことだけ考えてなかっただろうか?と自問することがありました。どうしても医療人として医療を中心に考えてしまうのですが、地域あってこその医療だといつも考え直しています。 当院がある大野城市では、市の中でいろいろな業種が協力して街を盛り上げようと会が立ち上がっています。大野城市を良くしようとするメンバーでの多くの取り組みや市への働きかけ、市民への働きかけが盛り上がっています。そのような取り組みのなかで、私たちもたくさんの事を学ばせていただいています。 歯科医療ではみんながリーダーでみんながフォロワーです。社会でも同じです。このような世の中だからこそ、全員で批判より提案をし、笑顔で力を合わせて、楽しんで地域医療にかかわることが大切ではないでしょうか。 最後に、このような私についてきてくれる家族やスタッフに感謝致します。いつもありがとう。これからもよろしくおねがいします(了)。 私についてきてくれる家族やスタッフには感謝しかありません。

著者馬場 聡

医療法人星樹会 はち歯科医院理事長(福岡県大野城市)
経営学修士(MBA)

略歴
  • 福岡歯科大学卒業。
  • 九州歯科大学臨床研修医修了後、福岡県の歯科医院にて勤務。
  • さくら歯科医院を継承後、はち歯科医院として開業。
  • 後に医療法人星樹会 はち歯科医院とし、現在に至る。
馬場 聡

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