Dental Life Design

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【Talk Session】
山本敦彦×賴郁樺
レーザー普及へ
日台連携
アジア発の技術を世界へ
ー前編ー

2019/8/23 デンタル〇〇デザイン

いまや先進歯科医療になくてはならないキーテクノロジーとなったレーザー治療。世界トップクラスの治療技術を誇る台湾でも、本格的な普及が始まっています。先陣を切るのは、台湾で72の分院を展開するデンタルクリニックグループ。そのトップである賴郁樺(Yu-Hua Lai)先生が研修旅行で来日し、多忙なスケジュールの中、レーザー臨床応用の第一人者として知られる山本敦彦先生を訪ね、台湾のレーザー事情や今後の展望について意見を交わしました。

■レーザー普及を阻む2つの壁

――まずライ先生に、台湾のレーザー治療の現状をうかがいたいのですが?

ライ:台湾では、まだ日本ほどレーザー治療が普及していません。それでも最近5年ほどの間に、歯周治療やインプラント周囲炎の治療に極めて有効であることが認知され、これから普及が進もうとしている段階です。今回私と一緒に来日した2人の歯科医師も、日本に留学経験もあるレーザー治療のスペシャリストで、開業当初からレーザー治療器を導入し、豊富な臨床経験を有しています。

山本:レーザー治療が台湾で思うほど普及しない理由は、何ですか?

ライ:いちばん大きな理由は、やはり価格です。台湾ではレーザー治療器が日本に比べて非常に高価で、CBCT(歯科用コーンビームCT)よりも高いとされています。そのため開業医の多くが導入に二の足を踏み、「経営に余裕ができてから導入すればいい」と考えています。また台湾では保険診療をメインとするクリニックが大半で、保険適用を受けていないレーザーの導入に大きなメリットを感じないのも大きな理由です。

山本:日本では1990年代から導入が進み、今では歯科医院の3~4施設に1台の割合で普及しています。またレーザーを使った虫歯治療や歯周治療の一部がすでに保険適用を受け、歯科業界では一般的な治療法として広く定着しています。

——当初は、CO2レーザーが主流でしたが…

山本:はい。その後Nd:YAGレーザーや半導体レーザーなど、波長の異なるさまざま種類のレーザーが登場しました。中でも20年ほど前に製品化されたEr:YAGレーザー(エルビウム・ヤグ・レーザー)は、硬組織を切削できる能力と優れた安全性が評価され、海外でも市場を拡大しました。日本では、Er:YAGレーザーを使った齲蝕無痛治療や歯周外科時の根面処理が保険制度にも収載され、さらに再生医療やインプラント周囲炎の治療にも使われています。

ライ:レーザー歯科治療においての台湾の歯科業界は、まだ最初の一歩を踏み出したばかり。日本のように普及するまで、まだまだ多くの時間がかかるでしょう。しかし、レーザーの可能性が否定されるものではありません。今後私たちのグループでも、積極的に導入していきたいと思っています。

■高度先進医療にも応用されるEr:YAGレーザー

――山本先生は、歯科診療にいち早くレーザーを導入され、これまで豊富な経験を積んでこられました。

山本:私がEr:YAGレーザーを導入したのは、23年余り前。その頃は世界標準の医院を目指すべく スウェーデンやイタリアなどヨーロッパで研鑽をしているころでした。 その頃インプラント先進国スウェーデンでインプラントにも歯周病のようなものができる (それが後のインプラント周囲炎)がそれに対する治療法がないという現状を知りました。 その頃私が研究していたEr:YAGレーザーのエネルギーが水に吸収する際に発生する 「water micro explosion」という現象が汚染されたインプラント表面を除染できるに違いない! それから約10年、大学などで基礎研究をし、それが現在の幅広い応用に繋がっています。

――Er:YAGレーザーは、痛みをともなわずに治療ができ、安全性も高いことから、人に最もやさしいレーザーとも呼ばれています。

ライ:台湾の歯科医師の間でも「痛みがなく、速く削れる」レーザーを求める声は強く、ハイパワーを売り物にする海外メーカーの製品が市場に多数でまわっています。価格が比較的安価であることも、注目を集める理由のひとつでしょう。

山本:Er:YAGレーザーは、歯や歯石、骨といった硬組織も削れますが、削るスピードに限っていえば、従来のタービンと比べて遜色があることは否めません。日本でリリースされた頃も、多くの歯科医師がタービンのように高速蒸散が可能なハイパワーな製品を求め、メーカーの開発競争が激化しました。しかしハイパワー競争は、Er:YAGレーザーの最もいい特性を生かす応用方法ではなく、 結果としてEr:YAGレーザーの歯科レーザー治療の発展になんら寄与することなく終わりました。

ライ:それは、大変興味深いお話ですね。

山本:Er:YAGレーザーは、そもそも歯を速く削るためのものではありません。発信波長2.94μmの光は水に吸収されやすく、組織に対して高い蒸散能力を発揮します。また蒸散反応も照射した部位の表層部分に限られ、組織深部への影響が少ないために安全です。そうした特徴を生かし、従来のタービンやその他外科器具ではできなかった繊細な窩洞形成や他のレーザーでは困難なインプラント周囲炎の治療、歯周治療、再生療法など高度先進医療にも対応できるのが、Er:YAGレーザーの最大のメリットなのです。

■レーザー治療は、差別化の有力ツール

ライ:山本先生がEr:YAGレーザーにこだわる理由も、そこにあるのですね?

山本:私がEr:YAGレーザーを導入したのは、発売されたばかりの頃でした。当然保険診療の対象ではないので、いくら治療しても収益には結び付きません。それでもEr:YAGレーザーにこだわったのは、他の医院との差別化で絶対的な強みになると考えたからです。患者さんが来院する時、最も気に病むのは、タービンで歯を削る時の不快な音や痛みです。しかしEr:YAGレーザーを正しい方法で使いこなせば、不快な音も振動もなく、痛みさえほとんど感じずに安全に治療を行えるのです。「ナンバー1」ではなく、他のどの医院とも違う「オンリー1」をめざそうとした私の経営方針にピッタリ合致するのが、Er:YAGレーザーだったのです。

ライ:思いきって導入したその経営判断は、どのような結果をもたらしましたか?

山本:Er:YAGレーザーを導入してから、『イヤな音も痛みもなしに治してくれる』という評判が口コミで伝わり、全国から患者さんが来られるようになりました。レーザー治療機は、確かに大きな初期投資を必要としますが、歯科医師も独立開業すれば一人の「経営者」。目先の損得勘定に目を奪われ、将来への投資を怠ることは、未来の可能性を自ら閉ざすことに他なりません。競合との違いを明確化し、強みをアピールする手段として、レーザーは極めて有効なツールになり得ると確信しています。

後編へ続く>>>>
【Talk Session】山本敦彦×賴郁樺レーザー普及へ日台連携アジア発の技術を世界へー後編ー

ープロフィールー

山本敦彦
医療法人成仁会
藤沢台山本歯科
理事長 医学博士
朝日大学歯学部歯周病学科客員教授
1984年、岐阜歯科大学(現朝日大学)卒。1985年から、大阪府富田林市で「藤沢台山本歯科」を開業。歯科レーザー治療の第一人者として、欧米、アジアの大学、学会、シンポジウムから講演依頼も多い。日本口腔インプラント学会、国際歯科レーザー学会に所属。日本レーザー歯学会では代議員を務め、専門医・指導医として活躍。「Er:YAGレーザーの基礎と臨床」「歯科治療インプラント治療におけるEr:YAGレーザーの使い方」など著書多数。


賴郁樺(Yu-Hua Lai)
康緹牙醫診所 院長
亞太口腔臨床醫學會 理事長
2001年に歯学系大学を卒業して、2003年にデンタルクリニック「康緹牙醫診所」を開業。いち早くフランチャイズ経営を導入し、チェーン展開で急成長。いまやグループ傘下の分院は72を数え、500名の歯科医師と700名の歯科助手を擁する台湾で唯一最大のデンタルクリニックグループへ成長を遂げた。また独自の教育機関「WICC」と臨床研究の学術発表会として「APACD」を立ち上げるなど、次世代を担う歯科医師や歯科衛生士の育成にも力を注ぐ。

ーコラムー
【Er:YAGレーザー(エルビウム・ヤグ・レーザー】
水への吸収性がCO2レーザーの10倍、Nd:YAGレーザーの1.5万~2万倍も高く、水分を多く含む生体組織に対する蒸散能力が高い(発信波長2.94μm)。そのため熱の発生が少なく、痛みも軽微。軟組織だけでなく歯や骨、歯石といった硬組織も蒸散(分解)できる。硬組織を蒸散可能な唯一のレーザー治療器。また照射部分の表層に限定して蒸散反応が起こるため、他のレーザーと比べて透過光による組織深部への影響が少なく、安全性においても優れている。

【Erwin AdvErL EVO(アーウィン アドベール)】
大学との共同研究の末、モリタが日本で初めて製品化に成功したEr:YAGレーザー治療器の最新機種。虫歯、歯周病、根管治療、口内炎、知覚過敏などの治療、また歯肉のメラニン色素除去、軟組織の切開などに有用。数ある歯科用レーザー治療器の中で唯一、厚生労働省の認可を受けている。レーザー治療に必要な機能をスタイリッシュなボディに集約し、さまざまな治療シーンに対応できる多彩なコンタクトチップとフレキシブルな操作性を誇る。

製品情報はこちら https://www.dental-plaza.com/article/adverl_evo/

【藤沢台 山本歯科】
当時人気を集めたテーマパークをお手本に、人を楽しませる空間づくりやサービスのノウハウを学び、1985年開業。 わずか10年で、1日の来院患者数250人を誇る有名クリニックに。 その後は世界基準の歯科医院をめざし世界中で研鑽を積み2004年に全面改装。 現在はレーザー治療器や歯科・頭頚部用3次元CTなど、最先端の治療機器を導入し、インプラント治療、歯周治療など自由診療をメインとするデンタルクリニックとして クオリティ−を第一と考える患者を中心に支持を集める。 (診療室は、プライバシー保護のため完全個室。全室にレーザー治療器を完備し、季節に応じたコーナー展示が訪れる人の目を楽しませる。) すべての歯科治療をバランスよく組み合わせた「包括的先進歯科医療」を掲げ、最先端、最高水準の診療をめざす。