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Withコロナ時代のNew Standard Er:YAGレーザー治療のメリットと使い方について

Withコロナ時代のNew Standard Er:YAGレーザー治療のメリットと使い方について
Withコロナ時代のNew Standard Er:YAGレーザー治療のメリットと使い方について

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの歯科医院に少なからず影響が出ています。そんな中でエアゾルをほとんど出さないEr:YAGレーザーは、これからのWithコロナ時代に最適な治療器具といえます。今回はその Er:YAGレーザーアーウィン第1世代を日本で初めて導入され、さらに第2世代、第3世代と数々の臨床経験を重ねて、Er:YAGレーザーの良さを世界に広げてきた医療法人成仁会の山本敦彦先生に、そのメリットや活用法、患者さんへの対処の仕方などについてお聞きしました。

■従来法では原理的に不可能な治療が可能に

―改めてEr:YAGレーザー治療のメリットを教えてください。

山本先生:患者さんにとってのメリットは大きく2つあります。第1はなんといっても痛くなく虫歯を削れる(蒸散できる)ことです。虫歯治療特有のタービンや5倍速コントラで削る痛みや音を嫌う人は多くおられますが、それを克服できるのは、ある意味画期的です。

■歯周病の最大の目標、バイオフィルムの除去とエンドトキシンの不活化

―もう一点のメリットは何でしょうか。

山本先生:それは歯周病関連です。多くの先生はいまだに歯周治療を、歯垢や歯石の除去だと思っていますが、歯周病の原因は歯垢や歯石だけではなく、それらに含まれる菌が持つ毒素のエンドトキシンです。従来手法でもバイオフイルムはなんとか剥がせますが、エンドトキシンの不活化まではできません。なぜならエンドトキシンは、菌の細胞壁を構成するリポ多糖(LPS)で、高い熱耐性を持つからです。仮に熱を加えてエンドトキシンを不活化しようと思えば、200℃の熱を30分間かけ続ける必要があります。つまり現実的には口腔内では不可能です。
ところがEr:YAGレーザーを使えば、その波長2.94μmがエンドトキシンの吸収波長2.92μmに偶然にも近似しているため、レーザーが吸収されるのです。Er:YAGレーザーはパルスレーザーなので、200~300マイクロセカンドと瞬間的かつ加速度的に700℃まで温度を上げてエンドトキシンを不活化できます。わずか1万分の2~3秒の処置でありトータルの温度上昇は2〜3℃に収まるため、周辺組織に熱的損傷を与えません。こうした治療は、従来法では絶対に実現不可能で、Er:YAGレーザーを活用する最大のメリットといえます。

 

■Withコロナ時代に最適な治療法

―コロナ禍の歯科治療ではエアゾルの問題がにわかにクローズアップされました。

山本先生:その意味では、まさにEr:YAGレーザーこそ、これからのWithコロナ時代にふさわしい歯科治療機器といえるでしょう。

―Er:YAGレーザーはコロナ時代に強いのですか。

山本先生:通常の歯科治療におけるコロナ感染予防では、まずエアゾル対策が必須となります。ところがEr:YAGレーザーなら、虫歯を削ったり歯石を取ったりする場合に、エアゾルがほとんど出ません。完璧にゼロとはなりませんが、エアタービンの数百分の1レベルしかエアゾルは出ません。感染予防、感染リスク低減の観点から、Er:YAGレーザーには決定的なアドバンテージがあるといえます。

―世界にはいろいろなEr:YAGレーザー機器がありますがどれも安全ですか。

山本先生:「Er:YAGレーザーを使えばエアゾルが少ない!」というのは、まさにそのとおりで患者さんはもちろんのこと、ドクターやスタッフに対しても安全性は一気に高まります。コロナに関してはワクチンの開発や決定的な治療薬ができるまで、まだしばらく時間がかかるでしょうから、その対策は歯科診療においては必須です。ただし、Er:YAGレーザーならどれでも良いというわけではなく、アーウインアドベールに限ってなし得ることなのです。その理由はアーウインアドベールの世界に類を見ないチップ構造にあります。つまり同軸上で極細のチップを使い、水とエアーとレーザーを先端で水を出す独自の形式だから、エアゾルが出ないのです。我々の実験では他のEr:YAGレーザー機器ではタービン以上にエアゾル が発生していました。



■自己流は禁物、基礎をマンツーマンで学ぶ

―ではEr:YAGレーザーを使う上で、他に何か注意すべき点はあるでしょうか。

山本先生:Er:YAGレーザーは、虫歯無痛蒸散から歯周再生治療まで幅広く応用できる可能性のある唯一のレーザーです。ただし、これを使いこなすためには、正しい動かし方やチップの適切な扱い方を、術者が最初にきちんと学ぶ必要があります。CTやパノラマレントゲンなどの装置はマニュアル通りに設定して撮影すれば、誰がやっても同じ画像を得られるようにできています。ところがEr:YAGレーザーは、そうではありません。例えばレーザーハンドピースの持ち方一つをとっても、人により違ったりします。ありえないとは思いますが、なかにはグーで握りしめる人もいるかもしれない。我流は絶対に禁物で、正しくはライトペングリップで持つのが基本です。ボールペンで文字を書くような繊細な操作が、治療時に求められるからです。

―正しい持ち方を身につけたうえで、動かし方についてもコツのようなものをマスターする必要があるのですね。

山本先生:ゴルフを初めて習うときと同じですよ。まずグリップ、スタンス、そしてクラブの振り方を習い、コースに出る前に打ちっぱなし練習場で何度も練習するでしょう。基礎訓練を飛ばして、いきなり自己流で始めたりすると妙なクセがついてしい、後々苦労することになるのと同じです。

―基本技術を身につけるためには、やはり対面のセミナーなどで実技指導を受けるのが良さそうですね。

山本先生:はい、その通りです。とはいえ、コロナ禍のなかでは、大勢が集まってのセミナーを敬遠する先生もいると思います。しかし、我々はフィジカルディスタンスや徹底的な消毒、会場の空気循環、衝立の使用、フェイスガードなど、今考えられる全ての感染予防対策をとり入れた対面での少人数制セミナーをすでに開始しました。コロナ時代にふさわしい新しいタイプの実習付きセミナーとなっています。

■「電気で削りますよ」をマジックワードに

―いざ患者さんと向き合うときには、どのように説明すればよいでしょうか。

山本先生:日本における第1世代の1号機を買ってから約50万症例の経験を踏まえるなら、あえて「Er:YAGレーザー治療します」とはいわないほうが良いと思いますね。

―「Er:YAGレーザー」という言葉を封印するわけですか。

山本先生:それほど大層な話ではありません。ただ、一般の方が「レーザー」と聞かされると、どのようなイメージを持つでしょうか。レーザー光線といえば、なんとなく兵器を連想して「熱そう・怖そう・痛そう」と感じがちです。実際はまったく違うにもかかわらず、いったんそんな感情にとらわれてしまうと、得体のしれない恐怖感をくつがえすのに時間がかかります。

―だから、あえて「Er:YAGレーザー」とはいわないのですね。

山本先生:ご高齢の方には「最新の電気で削りますね」とひと声かけるようにしています。Er:YAGレーザーは虫歯治療や歯石除去に関して保険収載されているわけで、エビデンスが確立された、つまり国のお墨付きの治療法なのです。実習を受けて正しい手法を身に付けた後に施術をすれば、麻酔をかけないのに痛みはなく、あっという間に処置が終わってしまう。終わった後に患者さんが「電気で削るってどういうことだったのですか」と聞いてこられたら、「電気を使ったEr:YAGレーザーという新しい治療機器なんですよ」と説明すればいいのです。さらにこのWithコロナの時代においては「エアゾルの少ない歯科治療機器なんですよ」と説明を加えるのもいいかもしれません。

―患者さんにとっては納得感があり、確かな価値を提供できるのがEr:YAGレーザーのメリットですね。

山本先生:Withコロナの時代に患者さんや医師の安全性の確保を考えれば、Er:YAGレーザーがデフォルトになっていく可能性が大いにあります。我々は歯科医師であると同時に「科学者」でもあり、そうでなくてはなりません。コロナに対してただ恐れるのではなく「科学者として正しく理解し正しく恐れ、そして正しく攻めて勝ち抜く!」という挑戦を忘れてはいけません。確かな知識と技術をマスターしてコロナ禍を勝ち残り、ぜひとも一人でも多くの患者さんに価値を提供し明るい歯科界を作っていこうではありませんか!Er:YAGレーザーはその一翼を担う歯科診療機器だと私は確信しております。

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更に、レーザーについて詳しい情報はこちらのページでご紹介しています。

著者竹林 篤実

京都市在住。
理系・医学系の研究者取材、企業トップ取材を手がける。
過去25年のライター生活でのインタビュー総数は1000件を超える。
理系ライターズ「チーム・パスカル」所属。
http://teampascal.jimdo.com
竹林 篤実

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