歯科医院には、歯科医師だけでなくほかにも役割を与えられた複数のスタッフがそれぞれ仕事を行っています。
しかし患者さんからすれば、歯医者にはどのような職種のスタッフがいるのか一見するとわかりにくい現状があります。
歯医者にはどのようなスタッフが働いているか訪れた患者さんにわかってもらうことが大切です。
ここでは、改めてスタッフの仕事の内容を再認識できるように、歯医者のスタッフの役割とそれぞれが担当している仕事の中身、スタッフが抱える問題について紹介します。
1.歯科医院で働くスタッフの役割
一般的な歯科医院の場合は、患者さんひとりに対して治療を行う歯科医師が1名、さらに歯科医師をサポートする歯科衛生士1名、歯科助手1名で診療を行います。
歯石の除去や歯の磨き方の指導といった予防処置や保健指導などは、歯科衛生士がひとりで対応することが多いです。
院内に歯科技工士が常駐している場合は、歯科医師の指示や患者さんの要望を聞きながら患者さんの技工物を製作します。
大規模な歯科医院であれば、複数の歯科医師やスタッフが常駐し、たくさんの患者さんを受け入れて治療を行います。
小規模な歯科医院であれば、歯科衛生士や歯科助手がそれぞれの仕事をサポートし、歯科医院全体の業務が円滑に回るように柔軟に動きます。
さまざまな役割のスタッフがいるからこそ、歯科医院は運営できています。
まずは、歯科医院で働いているスタッフのそれぞれの役割を再確認しておきましょう。
1-1.歯科医師
歯科医師とは、大学で6年間専門の教育を受けて歯科医師国家試験に合格した公的な資格をもつ医師です。
歯科医師は虫歯の治療を行うだけでなく歯並びを正す歯科矯正、歯を美しく見せる審美歯科、人口の歯を装着するインプラント治療などを行います。
また、院長である歯科医師は、歯科医院の経営者としてほかの医院との差別化を図り経営戦略を練る必要があります。
1-2.歯科衛生士
歯科衛生士とは、口の中のケアを通じて多くの人の健康をサポートする職業です。
歯科衛生士になるには、高校卒業後に専門学校に通い、国家試験に合格する必要があります。
歯科衛生士の具体的な仕事の内容は、主に「歯科診療補助業務」と「歯科予防処置」と「歯科保健指導業務」の3つに分けられます。
具体的には、歯科医師が治療を行う際に、器具を渡したり吸引機で患者さんの唾液を除去したりします。 ほかにも、歯石の除去や歯磨きや栄養指導を行うなど、歯科衛生士の仕事は多岐に渡ります。
1-3.歯科助手
歯科助手とは、歯科医師や歯科衛生士の補助業務を行う職種です。
歯科医師や歯科衛生士と違って公的な資格はなく、医療行為を行うことはできません。
歯科助手は、歯科医師や歯科衛生士が治療に専念できるようにサポートし、治療環境を整える役割があります。
主な仕事内容としては、治療で使用した器具の洗浄や滅菌処理、治療の準備や清掃、患者さんの誘導やさまざまな治療行為のアシスタント業務などを行います。
また、歯科医院によっては、歯科助手が受付業務まで担当しているケースもあります。
患者さんが歯科医院に訪れてまず初めに接するのが受付の方です。
受付業務では患者さんの診察券や保険証を確認します。また電話対応や予約の調整・管理、薬の提供、会計処理などを行います。
治療後は、診療報酬明細書を作成し、保険者に治療費の請求を行うレセプト業務を行います。
締め切り間際にはレセプト業務は忙しくなる傾向があります。
1-4.歯科技工士
歯科技工士は、歯科医師の指示に従い、入れ歯や歯の被せ物、歯の詰め物、装着装置などの作成・修理・加工作業を行います。
歯科技工士になるには専門学校や大学、短大などの歯科技工士教育機関で2年以上学び、国家資格に合格する必要があります。
患者さんの要望に沿った技工物を制作する必要があるため、技術力の高さが求められます。
歯科技工士は歯科医院内にある技工室で加工作業を行なう場合もあれば、歯科医院とは別にある歯科技工所で作業を行う場合もあります。
2.歯科医院スタッフを取り巻く問題
ここまで紹介したように、歯科医院にはざまざまな職種のスタッフが働いています。
しかし歯科医院の中には、スタッフをきちんと教育することができず、その結果スタッフが思うように働いてくれないと頭を悩ませている歯科医院も数多くあります。
具体的にどのような問題が発生しているのでしょうか。
ここではスタッフが抱える問題をいくつか紹介します。
2-1.教育
スタッフのスキルがなかなか伸びず、思うように動いてくれないという問題を抱えている歯科医院も多いのではないでしょうか。
日々忙しく業務に追われているため、なかなかスタッフを育成する時間を確保できず、スタッフに対する教育が手薄になっているケースもあるようです。
スタッフを雇っている歯科医院は、定期的に講習会やセミナーに参加したり、外部のコンサルタントや教育機関を利用するなど、意識してスタッフを育成する必要があるでしょう。
2-2.採用
歯科医院を運営するためには複数の職種のスタッフが必要になるため、院長はできるだけ長く務めてくれる優秀な人材を採用する必要があります。
そのためには採用面接に力を入れるだけでなく、気持ちよく働けるような環境を用意したり十分な給与を支払うなど、条件面でも満足いく職場作りを心がける必要があります。
2-3.退職
多くの歯科医院が抱える問題点として、スタッフが頻繁に退職することがあげられます。
特に歯科助手や歯科衛生士のほとんどは女性であるため、結婚や出産を理由に退職するケースが見受けられます。
それだけでなく、スタッフ間の人間関係のトラブルが原因で退職するケースや、ひとりで抱える業務量が多く思うように休めないため退職に至るケースもあります。
2-4.人間関係
歯科医院という決して広くない空間に複数のスタッフが働いているため、院長とスタッフ間とのトラブルやスタッフ同士のトラブルなど、さまざまな人間関係のトラブルが発生する可能性があります。
トラブルの内容としては、いじめや恋愛問題、パワハラ・セクハラなどさまざまなケースがあり、一度問題が発生すると解決することは容易ではありません。
院内の人間関係が良好になるように常にコミュニケーションを取るように心がけ、定期的な面談を行うことでトラブルの種を未然に取り除く必要があります。
2-5.モチベーション
毎日同じ業務を繰り返す中で、スタッフの仕事に対するモチベーションが下がり、歯科医院内の雰囲気が悪くなる問題には注意が必要です。
仕事に対する動機付けは非常に重要です。
「なんのために働くのか」「仕事を通じて何を得ることができるのか」、スタッフひとりひとりに認識してもらうことが大切となります。
歯科医院はさまざまな役割のスタッフで構成されており、チーム医療が不可欠です。
院長だけでなくスタッフも外部の研修を受講する機会を設け、チーム全体のモチベーションの向上を図る工夫が必要となります。
3.歯科医院スタッフの問題を解決するには?
先述したような歯科医院で働くスタッフが抱える問題を解決するためには、普段からしっかりとコミュニケーションをとることが大切です。
定期的に個別面談を行い不満や悩みを言いやすい環境を作り上げることが必要でしょう。
勉強会やイベント、食事会などスタッフ間の交流や学びを深める工夫を行い、早い段階で問題を解決すようにに心がけるようにしましょう。
また、良い人材を集め、定着を促すために、求める人物像の策定や雇用条件の明確化を行い、社内環境を整備しましょう。
4.まとめ
歯科医院には、歯科医師だけでなくさまざまな職種のスタッフが働いています。
それぞれが自分の仕事を行うだけでなく、円滑なコミュニケーションを心がけ、互いの業務のサポートを行いながら柔軟に仕事を進めることが大切です。
歯科医院で働くスタッフは、自分の仕事だけでなく自分以外の業務の内容も理解して配慮し合いながら、日々の仕事に取り組むことが求められます。