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歯科医院における
コロナ禍での労災補償の考え方とは?
安全配慮義務についても解説

2020/8/5 歯科医院経営

新しい感染症である新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、日常生活に多くの影響を及ぼすようになりました。
新型コロナウイルスは未知な部分が多いため、人々の生活スタイルも一変し、あらゆる場面で適切な感染症対策が求められています。

歯科医院の現場においても、消毒の徹底や飛沫対策などの感染症対策が行われているものの、万が一歯科医院の従業員がコロナにかかってしまった場合、労災はおりるのでしょうか。

ここでは、コロナ禍における歯科医院の安全配慮義務や、労災補償の考え方について解説します。

 

歯科医院における労災(労働災害)とは

労災とは『労働者災害補償保険』の略称で、労働者災害が発生した場合に給付が支払われる制度です。 業務上もしくは通勤途中に起きた事故により負傷した場合や病気になった場合、死亡した場合に、労働者やその家族を守るために設けられています。 労災が認定された場合、具体的に以下の給付が行われます。 ・療養給付(療養補償給付) 労働者が業務上または通勤時の怪我や病気により通院・入院した場合に、発生する治療費や入院費、看護費や移送費など、療養のために必要な費用が支給されます。 ・休業給付(休業補償給付) 労働者が業務上または通勤時の怪我や病気によって休業した場合、賃金を受けない日の4日目以降から支給されます。 この場合、休業1日につき給付基礎日額の60%が支給され、さらに給付基礎日額の20%が特別支給金として支給されます。 ・遺族給付(遺族補償給付) 労働者が業務上または通勤時の怪我や病気により死亡した場合に、労働者の遺族に支給されます。 遺族給付には、遺族年金と遺族一時金の2種類があります。 ・葬祭給付(葬祭料) 労働者が業務上または通勤時の怪我や病気により死亡して葬祭を行なった場合に支給されます。 ・障害給付(障害補償給付) 怪我や病気が治癒した際に、一定の障害が残った場合に支給されます。 ・傷病年金(傷病補償年金) 療養を開始して1年6か月経過しても治癒することなく、傷病等級に該当する際に支給されます。 ・介護給付(介護補償給付) 障害補償や傷病補償を受けている場合で、現在介護を受けている場合に支給されます。  

労災保険の加入義務

常勤やパート・アルバイトなど勤務形態にかかわらず、1人でも従業員を雇用する事業所は労災保険に加入することが法律上義務づけられています。 したがって従業員を雇用している歯科医院は、必ず労災保険に加入する義務があり、毎月保険料を納付しなければなりません。 雇用保険は事業者と従業員が双方で保険料を負担しますが、労災保険は事業者が保険料を全額納付する必要があります。 万が一加入手続きを怠った場合には、手続きを行なっていなかった過去の期間に遡り保険料が徴収されます。 さらに、追徴金の徴収も行われます。

コロナ禍での労災補償の考え方

日本国内における新型コロナウイルスの感染状況や今後の感染リスクを鑑みて、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症に対する労災補償の考え方を記載した通達を発出しました。 通達の内容によると、調査によって感染経路が特定されなくても、業務によって感染した可能性が高く、業務に起因したものと認められた場合には労災保険給付の対象となります。 このため、新型コロナウイルス感染症の実態が正確につかめていない現状においては、コロナウイルスに感染したと認められた場合には、たとえ感染経路が曖昧だとしても広く労災補償を認めるスタンスを取っていることがわかります。  

労災保険給付の対象となる条件

新型コロナウイルス感染症が労災保険給付の対象となる条件について、厚生労働省の通達をもとに代表的な例を紹介します。 ・医療従事者 患者さんの診療や看護、介護業務に従事する医師や看護師、介護従事者が新型コロナウイルスに感染した場合、業務以外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。 上記の規定を元に判断すると、歯科医院で働いている歯科医師や歯科衛生士、歯科助手などの医療従事者が日常的な業務を行なっている際に新型コロナウイルスに感染した場合には、労災保険給付の対象になると判断することができるでしょう。 ・医療従事者以外の労働者 医療従事者以外の労働者の場合、感染源が明らかであり特定されているケースでは、労災保険給付の対象になります。 感染源が明らかでない場合であっても、複数の感染者が確認された労働環境や顧客との接触が多い労働環境で働いている労働者に対しては、個々のケースごとに適切に判断します。 この規定では、歯科医院の受付をしている方が新型コロナウイルスに感染した場合、感染源が特定された場合には労災保険給付の対象になることが分かります。  

労災保険給付の対象とならないケース

新型コロナウイルスに感染したとしても、労災保険給付の対象とならないケースがあるため注意が必要です。 厚生労働省のホームページ上にある『新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)』によると、業務ではない私的行為中に感染者に接触したことが明らかであり、業務においては感染者との接触や接触の機会がなく新型コロナウイルスが発症した場合は、労災保険給付の対象とならないと判断されています。 例えば、歯科医師が休日に接待を伴う飲食店に訪れ、感染者と接触の機会があったことが明らかな場合には、労災保険給付の対象にはならないと判断されるでしょう。

歯科医院のスタッフがコロナに感染した場合の労災保険の申請方法

万が一、歯科医院のスタッフがコロナに感染した場合、歯科医院の事業者・院長は速やかに労災保険の申請を行う必要があります。 一般的に労災保険の申請は、労災にあった本人やその家族が行いますが、事業主が労災にあった本人の代わりに申請することも可能です。 多くのケースでは事業主が代行して労災の申請を行っています。 歯科医院のスタッフが業務中または通勤中コロナに感染し、スタッフから報告を受けた後の労災保険の申請の流れは以下の通りです。 1.労働基準監督署長への書類提出 2.労働基準監督署の調査 3.保険金の給付 以下、それぞれの内容を具体的に解説します。  

労働基準監督署長への書類提出

労災手続きに必要な書類を用意して、労働基準監督署長宛もしくは受診した医療機関に提出します。 必要な書類は希望する給付内容によって異なります。 代表的な給付における必要書類は以下の通りです。 ・療養補償給付の場合:療養補償給付たる療養の費用請求書 ・休業補償:休業補償給付支給請求書 ・障害補償給付:障害補償給付支給請求書  

労働基準監督署の調査

必要な書類を提出したのち、労働基準監督署の調査が行われます。 原則、予告なしに労働基準監督官が2名訪れ、労働関係帳簿の確認や関係者に対する聞き取り調査、事業所内への立ち位置調査が行われます。  

保険金の給付

請求内容等を審査した結果、労災保険の適用が認められれば保険金の支給手続きが行われます。 災害発生状況により調査内容が違うため、請求書の受付から支払までの期間は個々のケースごとに異なります。 支給時期は申請した労働基準監督署に問い合わせると良いでしょう。

歯科医院におけるコロナ禍の安全配慮義務とは

使用者である企業は労働契約上の信義則に基づいて、労働者の生命や健康を危険から保護する義務を負うとされています。 労働契約法上でも、使用者は労働者の生命や身体の安全を確保しつつ労働することができるように、必要な措置をとるよう規定されています。 歯科医院においてもこれらの規定に基づき、従業員が新型コロナウイルスに感染することを防ぐための合理的な措置をとる対応が求められています。 したがって歯科医院を経営する院長は、コロナ禍における安全配慮義務の中身をきちんと認識する必要があるでしょう。 院内での安全配慮(感染予防対策)として、除菌の徹底や医療用マスク・感染症対策防護服の支給、飛沫対策パネルの設置、空気清浄機の設置、定期的な換気などがあげられます。 また、感染者の早期発見を図るため、感染拡大防止のため、体温測定や体調管理を定期的に行います。 そのほか、感染リスクの高い通勤ラッシュを避けるためにスタッフのシフトを調整し、時差通勤制度を導入するなどの施策も効果があるでしょう。 ※具体的なコロナ感染対策については、後日記事公開予定です。

まとめ

今回は、歯科医院におけるコロナ禍での労災補償の考え方について解説しました。 新型感染症であるコロナウイルスの実態は未だに解明されておらず、慎重な対策を立てて実行することが大切です。 特に歯科医院は狭い空間で治療が行われる傾向があり、飛沫感染のリスクが高いことから、より一層配慮をする必要があります。 歯科医院で働く従業員をコロナウイルスの感染から守ることも、事業主・使用者である歯科医院の務めだと言えます。 今後も信頼できる歯科医院を維持・継続するために、安全配慮義務を守りつつ、快適な職場環境を維持することを心がけましょう。