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『助成金制度』
~歯科医院経営に
有効な助成金とは~

2021/3/1 歯科医院経営

2020年度はコロナウイルスの影響もあり、“助成金”という言葉が一躍脚光を浴びました。今回のDental Talkでは、「歯科医院にとって有効な助成金」をテーマに制度の概要や申請方法などについて、助成金制度推進センター(以下:助成金センター)の藤田 剛センター長と、歯科医師で助成金制度に詳しい松本 敏先生にお話を伺いました。

歯科医院における助成金の活用状況

藤田 これまでは「助成金」という言葉は聞き覚えがあっても、詳しい内容まではご存じない方が多かったように思います。それが新型コロナウイルスの影響で昨年の春頃からメディアなどで話題になり、全国に広まりました。ただ、正しく理解されないまま「とにかく受給できる」という印象だけが先行して、ハローワークに電話が殺到したり、玄関前に順番待ちの列が延々と続くなど、ある種のパニック状態まで発展したことは記憶に新しいと思います。 松本 私は一昨年からモリタと共同で助成金制度に関する研修会を行うようになりましたが、「助成金」と「補助金」や「給付金」を混同されている方が多くて、まずその部分をしっかり理解していただくことから始めています(表1)。私はこれまで歯科医師として30年間働いてきましたが、助成金制度についてはまったく知りませんでした。おそらく以前から同じような制度はあったのでしょうが、その頃は、私を含めて大半の方がご存じなかったのではないでしょうか。
藤田 どの職種においても助成金制度自体が十分に認知・活用されていないというのが実態なのですが、なかでも医療業界の場合、その業界の知識しか集まらないような仕組みになっていることが多いので、まったくご存知ないというケースが大半ですね。私どもの助成金センターでは、受給対象となる助成金があるかを診断するためにヒアリングを行いますが、「過去に助成金を受給した経験はありますか?」という質問に対して「受給したことがない」という方がほとんどで、情報がうまく先生方に伝わっていないと感じています。 松本 制度の仕組みが難しいイメージがあるようにも思うのですが、専門家のお立場からみていかがでしょうか。 藤田 日頃私たちは、「簡単・難しい」、「遅い・早い」など感覚によって個人差がある言葉はできるだけ使わないようにしています。なぜなら、私たちは簡単だと思うことも他の方にとっては難しいと感じることもあり、トラブルやクレームのもとになりかねないからです。助成金の申請に関して言うと、何もかもご自分で調べて手続きするとなると少々ハードルが高いかもしれません。しかし、確かな専門家の方とタッグを組むなら、手続きのほとんどの部分をフォローしてくれるので難易度は格段に下がりますし、確実に要件を満たすことができれば受給できるのが助成金ですから、そういう意味では決して難しくはないと感じます。

従業員を雇用していれば何らかの助成金は申請可能

松本 昨年は「働き方改革推進支援助成金」が話題になりましたが、歯科医院にとって有効な助成金制度にはどんなものがありますか。 藤田 近年、国内では少子高齢化に伴う労働人口減少が深刻な問題となりつつあり、個々の労働生産性を上げることが急務になっています。政府が数年前から取り組んでいる「働き方改革」はその対策の一つです。一般的に労働生産性を上げるためには、コンピューターやIT機器をはじめ、さまざまな設備投資が必要になります。「働き方改革推進支援助成金」はそうした活動を支援する目的で設けられたものです。 また、従業員に対して受給できる制度が比較的充実していますから、従業員を雇用していれば何らかの制度は適用できる可能性が高いです。例えば、スタッフをパートで雇っている医院の場合、スタッフが健康診断を受診した際に助成してくれる制度や、時給アップした際に受給できる制度などがあります。さらに、歯科医院では女性スタッフの占める割合が多いと思いますが、例えばスタッフが妊娠・出産して育児休暇を取った場合に支給される助成金もあります。加えて、スタッフ同士の仲が良く何年も人の入れ替わりがないところでは「人材確保支援等助成金」という離職率が低い医院を支援する制度もあります。小規模で長期間同じメンバーで運営している医院もあれば、事業拡大によってどんどん人が増えている医院もあり、医院の特色にもよりますが、持っているカラーによって使える助成金は変わってきます。 助成金センターでは、申請可能な制度を調べる「対象診断サービス」を行っていますが、約90%の確率で申請できる制度は見つかります。とにかく従業員を雇用していれば何らかの助成金は申請できると思ってくださって結構かと思います。 松本 それだけ手厚い制度にもかかわらず多くの先生方がご存じないのは残念ですね。私は静岡県で開業していましたが、実際に申請する医院はほとんどなかったように思います。先日もある院長先生とお話する機会がありました。そこで、産休・育休に対して受給できる制度についてご案内すると、大変驚かれて「ちょうど今産休中のスタッフがいます。今から申請しても間に合いますか」とお尋ねになりました。このケースではあいにく事前申請が必要で不可でしたが、こうした残念な場面に出会うことがとても多いんです。 藤田 そうですね。ちなみにこの助成金制度は女性だけでなく、例えば男性の勤務医の先生なら、その配偶者が出産した場合、育児休暇を取得する際にも申請することができます。 松本 その場合、出産日後、8週間以内に、男性の勤務医の先生が5日間連続で育児休暇を取得すると助成金が受給できます。現在は、出産、育児の後に復帰するスタッフも多いですし、とりわけ歯科衛生士が不足するなかで、能力も高く息のあったスタッフに戻ってきてほしいという院長先生の気持ちもあると思います。そういう時に助成金制度はとても有効ですので、先生方にはもっと知っていただいて十分活用してほしいですね。 藤田 そこには実は国も力を入れていて、「両立支援等助成金」といって仕事と家庭の両立や女性の活躍推進に取り組む事業主を支援する制度もあります。日本の場合、男性が育休を取る慣習があまりありませんが、欧米では高いところで90%ぐらいの男性が育休を取っている。それくらい当たり前なんですね。日本では少子化の問題も深刻ですから、そうした欧米の慣習も参考にして比較的手厚い制度を設けています。

なぜ普及しないのか助成金の申請方法と注意点

松本 いろんなシーンで有効な助成金制度ですが、それほど普及が進んでいないのはなぜでしょう。 藤田 大きな理由として補助金制度など別の制度と混同してしまっていることが挙げられます。助成金の財源は雇用保険で、基本的には保険と同じルールになっていて、助成金ごとに設定された要件を満たしたうえで正しく申請すれば受給できる仕組みになっています。要は、要件が満たされていれば確実に支給されるんです。一方、補助金は採択制を採っているので審査に通らなければ受給することはできません。こうした助成金と補助金の仕組みを混同してしまって、比較的受給しやすい助成金のハードルを上げてしまっているように感じます。 松本 申請方法についても自己申請と代行申請があり、煩雑なイメージをお持ちなのかもしれません。 藤田 代行申請の場合、お出入りの税理士さんか社会保険労務士さんに相談することが多いと思います。社長さんや院長先生は「税理士さんは何でも知っている」と思っておられる節がありますが、実は税理士さんは税金のことが専門なので、助成金については詳しくないことが多いんです。でも、比較的身近な存在なので、どうしても税理士さんに頼んでしまう。その結果、うまくいかないことが多いようです。 一方、社会保険労務士さんの場合、「給与計算」「保険手続き」「労務相談」の3つが主な契約項目で、助成金のプロではありません。ただ、社会保険労務士さんには私たちにはない代行申請の権利があるので、厚労省もきちんとミスなく申請してくれると思っているのに、不正や間違いが多いということで、2年前から、不正受給、不正な申請に関わった社労士さんはネット上に名前を公表され、5年間業務停止という厳しいルールが決まっています。この時から社会保険労務士さんはよほど専門的な知識がないと引き受けられない状況になっていて、去年あたりから一斉に手を引いているようです。 最後に個人申請の場合ですが、実は厚労省が出している助成金制度は約60種類にのぼり、その詳細を解説している冊子の総ページ数(令和2年度版)はなんと355ページもあります。この中から自分の医院に合うものを探すのは至難の技です。助成金センターではモリタからのご紹介であれば、その膨大なリストから、「誰も当てはまらない」「当てはまるけど労力の割に金額が低い」といったものを除いて、お勧めできる制度だけをご提案します。全てを個人で行うのは大変ですが、信頼できるプロと組めばそんなに難しいものではないと思います。 松本 上手に申請するためのタイムスケジュールがあれば教えてください。 藤田 助成金の申請は過去に遡ることはできません。つまり、すでに機器を購入してしまった、スタッフを雇用してしまった後に申請することはできないんです。ルールとして必ず事前にエントリーシートという書類を準備、提出するところからスタートします。大事なのはそのタイミングで、基本的には新年度の4月に新しい助成金が発表されますから、その時点で情報が得られれば、1年間の余裕があるわけです。それがもし年度の後半頃だった場合、提出期限に間に合わせるのが非常に大変になってきます。機器の導入時期があらかじめ決まっている場合、それに合わせて動くこともできますが、導入時期を助成金受給のタイミングに合わせていただく方がよりスムーズです。さらに、情報をつかんだ時点で予算が切れていれば申請できませんので、いかに早く情報を得られるかが重要です。年度明けの早い時期にスタートした方が余裕を持って取り組めることと、その時期なら申請が始まったばかりなので予算がショートする心配がありません。何よりロケットスタートが肝心です。

今後導入が期待される助成金

松本 2021年度以降に導入が期待される制度についてお聞かせください。 藤田 3月の時点でどういう状況になっているか分かりませんが、まず新型コロナウイルス対策が喫緊の課題でしょう。さらに、国の生産性を上げるために、「働き方改革」推進の流れがより加速していくと考えられます。そう考えると、制度の名称は変わるかもしれませんが、労働効率アップに寄与する製品に対して何らかの助成制度が設けられる可能性は非常に高いと思います。 松本 やはり新型コロナウイルスに伴う不況を少しでも緩和することが最優先になってくるでしょうね。 藤田 新型コロナウイルスの影響で失業率が一気に上がってしまったので、例えば、新規雇用すれば受給できるとか、求人にかかる費用に対する経費に対して受給できるとか、3月の時点で雇用を取り戻す流れになっていれば導入される可能性はあると思います。雇用促進は急務になってくると思うので、新型コロナウイルスの影響で一時解雇されている方々を企業は再雇用しなければなりませんから、それにサポートする「キャリアアップ」のような助成金が導入されることは予測されます。

先生方へのメッセージ

松本 最後に先生方にメッセージをお願いします。 藤田 助成金制度は「理解して正しく活かす」ことが重要です。何より日本国内で活動している限りはそのルールにしたがって運営することが健全な経営の近道です。言い換えれば、助成金を活用しながら経営するということは、一つは国の方針に沿って経営できている証しになるということと、もう一つは助成金によって本業の利益とは別の純利益が増えることになるということです。このことを経営者が理解できているかで大きな差が出てきます。現在は情報化社会ですから情報はネットでいくらでも出てきます。ただし、正しく情報を発信して、きちんと説明してくれるところから情報を取らないと、思わぬトラブルになる可能性もあります。私たちはこれまでSNS等を使った情報発信を行っていません。あらぬ誤解を受けたり、間違った解釈で受け取られてしまうことで、結果として被害者を作ってしまうことを避けるためです。逆に、対象診断を受けていただいた方には詳しい解説や、手厚いサポートを行っています。ぜひ先生方の今後の経営に活かしていただければ幸いです。 松本 新型コロナウイルスの影響は今年も続くでしょう。こんな時こそ助成金制度を有効に活用してこの難局を乗り越えていきましょう。申請にあたってはお出入りのディーラーさんなどにご相談いただければ信頼できるパートナーを紹介していただけると思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。
「歯科医院で活用できる助成金特集」の詳細はこちら https://www.dental-plaza.com/article/subsidy/ 藤田 剛 助成金制度推進センター 理事長兼センター長 松本 敏 (株)モリタ顧問 CROSS M合同会社CEO 歯科医師/朝日大学医科歯科医療センター非常勤講師 松本 敏先生のプロフィール 30年間の歯科医院開業の傍ら法律を勉強した後、大手監査法人ヘルスケア部創設に顧問として参加。 病院、社会福祉法人に対して監査を拡める支援や病院M&Aのデューデリジェンスにも関与。 現在は複数の病院グループや上場企業の顧問、社外取締役に就任。 海外の病院、介護企業のサポートなども行っている。