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働き方改革 in デンタル Vol.1

2018/12/4 デンタル〇〇デザイン

歯科技工所 株式会社LAZARUS(ラザロ) 代表取締役 村田彰弘氏インタビュー 前編

  • ●歯科技工所「LAZARUS」設立の経緯
  • ●独立当初について
  • ●歯科技工士の働き方についての考え
  • 2010年、大阪市中央区に、歯科技工所の株式会社「LAZARUS」(ラザロ)を設立した村田彰弘さん。歯科技工士になるまではバンドマンをしていたという異色の経歴の持ち主です。歯科技工士業界は以前から、長時間労働が蔓延していることが問題となっていましたが、村田さんは効率化とデジタル化によって会社全体を効率化。「正しい仕事をすることで、歯科技工士がそれに見合った給料をもらえるようにしたい」と語ります。歯科技工士の「働き方改革」の先陣をきりひらく、「LAZARUS」の取り組みをうかがいました。

    −−まず初めに、LAZARUSを創立された経緯について、お聞かせください。

    会社名の英語表記である「LAZARUS」は、昔、私がギタリストをしていたバンド名からとりました。反社会的な歌詞を叫ぶパンクバンドで(笑)、かなり真剣に取り組んでいたのですが、音楽の道で生きることはやはり難しく、26歳のときに専門学校を出て歯科技工士になりました。バンド仲間の先輩に歯科技工士の人がいて、「やってみたら?」と誘われたのがきっかけです。
    技工士になってすぐは、デンチャー(入れ歯)を専門とする個人のラボで働いていたのですが、クラウン・ブリッジ(差し歯)の技術を身につけたかったことから、1年で別の技工所に移りました。大きな転機は28歳のときに、渡米したことです。知人にアメリカ在住の腕の良い技工士がいると聞き、「タダでもいいから働かせてください」と頼み込んで、現地で修行することにしたんです。思い切った決断でしたが、3ヶ月間のスパンで2回アメリカに渡りました。慣れない異国での暮らしと仕事は苦労しましたが、そこで教えてもらった経験と技術は、今も生きていますね。
    日本に戻ってしばらくしてから、2010年にLAZARUSを立ち上げました。きっかけは開業を検討していた頃、大好きだったプロレスラーの三沢光晴さんがリング上の事故で亡くなられたことです。それまでは「10年以内に独立できればいいな」と考えていたのですが、「人生、先はどうなるかわからない。やりたいことを先送りしている暇はない」と思って、独立を早めました。

    −−独立当初は、どんな感じだったのでしょうか?

    最初は大阪の西本町にあるマンションの1室を借りて、一人で作業していました。1年ぐらい経って仕事が増えてきたこともあり、初めて社員を雇ってみたら、作業がうまく回り始めたので、それからどんどん人を増やしていきました。創業から現在8年が経ちましたが、これまでのところ、人を雇えば雇うほど、それとともに仕事も増え、いい感じで成長を続けています。
    技工士の採用は今も随時行っています。ホームページに力を入れているのも、仕事を得るためではなくリクルートのためです。独立して間もない頃に、仕事をもらおうと200軒近くの歯科医さんに自分で営業をかけましたが、結局、仕事にはまったくつながりませんでした。その理由は、他の技工所に比べて、うちが提示する値段が高かったからです。「今つきあいがある技工所より、もっと安くしてくれたら仕事を出すよ」と何度も言われましたが、価格競争に加わる気はありませんでした。浮気性は繰り返すのと同じで(笑)、安い値段で仕事をとっても、そのクライアントはさらに安い値段を提示してくるところがあれば、すぐにそっちに乗り換えます。だからこそうちは、「技術と品質」で勝負しようと決めて、「LAZARUSだからお願いしたい」という歯科医さんとお付き合いさせて頂いています。自費診療のための製品に特化しているのも、他の技工所と値段の叩きあいになることを避けるためです。ありがたいことに、これまで仕事は途切れることなく、年々増え続けています。私が登壇するセミナーや勉強会に参加された歯科医さんからお声掛けいただいたり、紹介や口コミで新たな仕事をいただくことがほとんどです。自分たちの技術に誇りと自信があるなら、安売りをする必要はないはずです。

    −−歯科技工士の職場は“ブラック”なところが少なくない、と聞きます。LAZARUSさんは職場環境、労働時間の改善に力を入れているそうですが、具体的にはどんな取り組みをされているのでしょうか。

    昔と比べれば、歯科技工士全体の労働環境は良くなってきていると思います。私が業界に入った頃は、一週間のうち1日か2日は徹夜で作業することが普通でしたし、土日に仕事をするのも当たり前でした。社会保険などの福利厚生もなくて、最初の私の給料はコミコミの手取りで12万円でした。
    私がLAZARUSを開業したのは、そうした業界の構造を変えて、歯科技工士の仕事を「世間一般並」にしたかった、というのも大きな理由です。少なくとも仕事の相手先である歯科医院で働くスタッフとは、同じ程度の給料が得られ、同様の労働環境にしたいと考えています。当社は受付のデザインにお金をかけていますが、それも多くの歯科医院の受付がきれいなのを見ていて、影響を受けたからです。
    LAZARUSでは従業員の働き方改革にもいろいろと取り組んでいます。まず労働時間をきっちりと決めて、毎日18時〜遅くとも20時には帰れるように徹底しています。歯科技工士業界はこれまで「有給休暇? 何それ?」というのが一般的でしたが、当社ではスタッフ全員が当たり前の権利として有休を取得しています。また、女性スタッフが快適に安心して働けるように、更衣室やトイレを男女別に分けたり、お弁当などを食べる休憩室を設けたりといった設備投資も行いました。私は出張でよく海外に行くのですが、オーストラリアの歯科技工所は毎日8時半に始業し、午後16時半には仕事を終えて全員帰宅しています。きっと日本でも出来るはずです。いつかLAZARUSも、17時にはみんな仕事を上がれるようにするのが目標です。報酬に関しても当社はボーナスを年に2回、きっちり支払っていますが、歯科技工所でボーナスを支払っていない所も、現状ではまだまだあると聞いています。

    ここまで独立されるまでの経緯と働き方に関するお考えをうかがいました。
    さらにどのような取り組みをされているのかお話は後編に続きます。

    後半はこちらから
    働き方改革 in デンタル Vol.2

    株式会社LAZARUS
    URL : https://www.lab-lazarus.com/
    代表取締役/歯科技工士など
    村田 彰弘 AKIHIRO MURATA

    ■略歴
    ・2002年3月
    兵庫歯科学院専門学校卒業
    ・2002年
    保険技工所にてデンチャー担当
    ・2003 - 2005年
    伊藤歯科医院(大阪・新大阪)
    ・2005 - 2006年
    Au Ceram(USA・サンタモニカ)
    ・2006 -2010年3月
    カツベ歯科クリニック(大阪・本町)
    ・2010年5月6日
    LAZARUS開業

    ■所属学会・講習会受講歴
    大阪SJCD会員
    顎咬合学会会員
    顎咬合学会認定技工士
    スタディグループN・H・K会員
    Amorphous 会員
    咬合・補綴治療計画セミナー 本多正明先生