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2021年5月のピックアップ書籍

2021/4/30 歯科NEWS

歯を保存するために生物学的な歯周環境を整えることを目的として行うMTM
『一般臨床医のためのMTM 増補新版 Minimal Tooth Movement』

このたびは、尊敬してやまない月星先生の書かれた書籍の書評を書くという大変光栄な依頼をいただいた。本書は2003年9月に出版されたものが第5版まで増刷され、今回が増補新版とのことである。約17年以上も前に出版された医学書が現在まで読まれ続けており、さらに増補新版されたことは驚きでしかない。 ある意味、オーラルのプレゼンテーションは自由度がある。年々、新しい症例に差し替えることも可能であり、エビデンスとして確立されていない内容も最新の仮説として披露することもありえるだろう。しかし、書籍は印刷されたものが形として残ることから、一般的には出版されたその日から、日に日に過去の情報となってしまうことは仕方ない。現在は使用していない、5年前に購入したスマートフォンの説明本を大事に保管されていることはない。 その一方で今から約70年前、昭和24年に出版された藤田恒太郎先生の『歯の解剖学』はいまだに評者のデスクの真ん中に鎮座しており、折に触れて手に取っている。つまり、われわれは「変わるもの」と「変わらないもの」を理解し、そのどちらもが必要なものであることを忘れてはならない。かのココ・シャネル女史は「新しいことしかアピールすることがなければ、つぎの新しいものにその地位は簡単に奪われる」という言葉を残したそうである。ましてや科学技術の分野では、最新だから最善であるとは限らないことを肝に命じておく必要があるだろう。 さて、本書の全体構成について評者が一番感銘したのは、第1章が用語の定義、種類、目的から始まっていることである。そもそも論として、使用している用語の定義や解釈が異なっているとか、術式の目的が異なっていれば議論が成立しない。また、最終の第9章には必要な器具と材料についての記載がある。つまり症例のショーケースではなく、理論だけを述べているのでもなく、本書から学んだことをすぐに実践できるように配慮されている。用語解説から始まり器具紹介で終わるとは、まさに教育の王道である。 本書において終始徹底しているMTMのコンセプトは、「不正咬合を是正することを目的としているのではなく、歯を保存するために生物学的な歯周環境を整えることを目的として行う」ことである。歯の位置を変更することで咬合力を適正化し(力のコントロール)、歯周組織の形態を変えることで清掃性を高める(炎症のコントロール)ことが可能となり、まさにMTMは歯周治療における重要な治療オプションといえる。歯の保存を断念し、簡単に抜歯を行うのではなく、さまざまな手法を用いて「歯の保存の重要性」、「補綴環境の整備の意義」、「インプラント前処置の重要性」を説いていることは歯周病専門医の評者が読んでいても、とても心地よい気分になれる。 今後も本書が読まれ続け、50年先、100年先の後輩たちが「歯の保存」に努めていることを心から念じている。 評者:牧草一人 (京都府・牧草歯科医院) 月星光博/月星千恵/月星陽介・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:11,000円(本体10,000+税10%)・192頁

日本人の日本人による日本人のためのCAD/CAM冠
『保険診療でできるメタルフリー修復治療』

タイトルから本書を手に取る先生(≒本書評に目を通している読者)の多くが、保険診療を主体に治療を行っていると考える。逆に自費を中心に診療されている先生は、気にされないかもしれない。また、保険治療を行っていても、CAD/CAM冠を避けている先生も少なくないであろう。本書はサブタイトルにあるとおり「CAD/CAM冠のすべて」について記されている。しかしながら、CAD/CAM冠を採用していない先生にもぜひともお勧めしたい。 ・CAD/CAM 冠治療に積極的な方へ:2014年からのデータ蓄積による進化 小臼歯CAD/CAM冠が保険導入された当時は、この補綴装置に関する研究発表は乏しく、十分な情報がある状態とはいえなかった。その後、わが国においてさまざまな基礎研究が行われるとともに、臨床経過も明らかとなった。それらの成果が本書では「材料を理解する」、「適応症を知る」、「臨床に生かす」と明確に分けられて収載されている。緒言に「保険診療におけるメタルフリー治療の"バイブル"となることを期待している」とあるように、CAD/CAM冠の信者はアップデートされた"バイブル"を熟読されたい。 ・CAD/CAM 冠を避けている方へ:事態は7年間前と同じではない! CAD/CAM冠は大臼歯、前歯部へと適応範囲が拡大されているが、「臼歯部の咬合力に耐えられるはずがない」や「審美性が不十分」との考えが根強くあり、まだ積極的に取り入れていない先生も多いであろう。本書では一貫して「的確な診断の必要性」が解説されている。そして、日本補綴歯科学会から発表された「保険診療におけるCAD/CAM冠の診療指針2020」を基に、「CAD/CAM冠を推奨できない症例」が明記されている。現状における本治療法の限界を正確に認識することは、逆に積極的に取り入れるべき症例を判断できることを意味する。また、掲載されている美しい臨床写真から、CAD/CAM冠に対する疑念がとけることを期待する。 ・自費診療主体の方へ:CAD/CAM冠はただ単に「質の低い補綴装置」? 「保険で白い歯はできない」、「きれいな歯にするには自費しかない」と、シンプルに患者に説明できる時代は終焉している。そして、金属価格の高騰、メタルフリーへの移行、デジタル化の波(ロストワックス法からの脱却)など、避けることのできない潮流において、日本におけるCAD/CAM冠の普及は世界的にみても独特である。日本人としてこの治療法の「現在の到達度」および「進化の可能性」を正確に知るために本書は有用である。さらに、真の意味での「患者にとってベストの治療」を広い視野、長いスパンで考えるために不可能な情報が満載である。 これらの理由から「本書は日本人であるならば要チェック!!」と、自信をもっていいきれる。 評者:峯 篤史 (大阪大学大学院歯学研究科クラウンブリッジ補綴学分野) 小峰 太・監著 藤澤政紀/二瓶智太郎/疋田一洋/ 宮地秀彦/竹市卓郎/新谷明一/ 今村光志/加藤正治/中村昇司・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:7,480円(本体6,800円+税10%)・100頁

骨補填材料&メンブレンの最新情報とテクニックを学んで、臨床に生かしたい
別冊ザ・クインテッセンス『最新 骨補填材料&メンブレンYEARBOOK 2021/2022 骨増生術式の変遷と臨床応用』

高齢者の増加とともにインプラント治療を希望される割合が増えている。これにともなって、骨増生のニーズも高まるわけであるが、近年、その骨増生は適応範囲が拡大し、再現性の高い治療になってきている。 その理由のひとつは、デジタル化の普及である。CBCTによって歯槽骨の状態を正確に把握できるようになった。シミュレーションソフトも進歩し、インプラントの埋入位置、求められる骨増生の形状やボリュームなどを具体的にイメージでき、正確な診査・診断が可能となった。さらに、サージカルガイドおよびガイド用ドリリングシステムも充実してきたことで、低侵襲で、より安心・安全なインプラント埋入が可能になってきている。つぎに、骨増生の術式が進歩していることが挙げられる。超音波振動骨切削器具や安全性の高い外科器具に加え、ソーセージテクニックなどの新たな術式、すぐれた骨補填材料やメンブレンが用いられるようになってきている。 このような背景から、今回紹介するのが、『最新 骨補填材料&メンブレン YEARBOOK 2021/2022 骨増生術式の変遷と臨床応用』である。『インプラントYEARBOOK』はインプラントの選択や臨床に役立つ書籍として、すでに2002年から発行されている。しかし、骨補填材料に関する『YEARBOOK』は本書がはじめてである。本書の監著である岩野義弘先生は、これまでにも『骨補填材料&メンブレンの歴史的変遷と最新トレンド』、『骨増生テクニック&骨補填材料国内トレンド』(いずれもクインテンッセンス出版刊)などのすばらしい書籍を上梓されており、わが国での骨増生および骨補填材料における第一人者である。 その岩野先生がまとめられた本書は、巻頭企画として骨増生の基本知識と自身の症例を供覧しながら骨増生のポイントを解説されている「骨補填材料とメンブレンを用いた骨増生術式の変遷と臨床応用」と、国内メーカー5社の5種類の骨補填材料と2社の2種類のメンブレン(以下に列挙)の最新の"Product Information"に加えて、それらを臨床応用された6名のドクターによる"Clinic Report"から構成されている。 ・ジーシー「サイトランスグラニュール、サイトランスエラシールド」/東洋紡「ボナーク」/プラトンジャパン「PLATONパールボーン」/ブレーンベース「Arrow Bone-β-Dental」/HOYA Technosurgica「lリフィットデンタル」/モリタ「Tiハニカムメンブレン」 これまで、インプラント治療に用いる骨補填材料とメンブレンは海外メーカーに押され気味であった。しかし、本書で紹介されている製品をはじめ国内メーカーからもすぐれた製品がつぎつぎと開発され、承認・発売されている。ぜひ、本書で骨補填材料とメンブレンの最新情報と骨増生のテクニックを学んで、臨床に生かしていただきたい。 評者:松野智宣 (日本歯科大学附属病院口腔外科) 岩野義弘・監著 石川知弘/片山 昇/成瀬啓一/藤田温志/ 三浦桂一郎/水口稔之/皆川 仁・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:5,940円(本体5,400円+税10%)・112頁