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2021年9月のピックアップ書籍

2021/8/25 歯科NEWS

今まで避けてきた人にも「移植をやってみようかな」と思わせる書籍
『必ず上達 自家歯牙移植・再植』

本書はおよそ110ページと程よいページ数のなかに、自家歯牙移植と再植の要点が集約されている。しかもその内容は、自家歯牙移植から再植、そして破折歯の治療に至るまで多岐にわたり、簡潔に、しかもわかりやすく書かれていて、即日役に立つ本となっている。 近年、インプラント治療への過度な傾倒への反省から、天然歯の保存治療が見直されている。とくに、インプラントを植立した患者のなかには、長期経過中に天然歯との位置関係が大きく変わって、乖離がみられるようになったり、低位咬合になることが報告され、若年者へのインプラントの適応にブレーキがかかっている。また、インプラント周囲炎の問題も臨床医を悩ませている。 このようななか、歯根膜が存在する歯の移植では、経年的な位置のずれをきたす問題はなく、また、歯根膜による骨の再生も期待できる。そして何よりも、患者自身の歯であることから、患者には大きな満足感が得られるにちがいない。 本書の著者の平井先生は、九州大学歯学部を卒業後、同大学補綴学第2講座在籍を経て私のクリニックに勤務医として就職し、以後8年間にわたって臨床に携わってもらった。勤務医時代からとても優秀でスタッフの評判もよく、治療やスタッフ教育に尽力してくれた。また、その能力は高く、在職中に旅行取扱主任の資格をとるなどの多才ぶりを発揮してくれていた。 開業後にはさまざまな分野の治療に取り組むと同時に、自身のライフワークとして歯の移植治療に取り組んでいた。地道な日々の取り組みの結果、このような素晴らしい治療成果とノウハウの蓄積を得ることができたこと、そして、それを広く発信することができたことは大変素晴らしいことだと感じている。 本書はおよそ110ページと、読むには手ごろなページではあるが、内容は多岐にわたっており、自家歯牙移植・再植の手技をさまざまなパターンに分けて、それぞれの適応症や利点・欠点などを平易に解説されている。 また、初めて移植や再植を行うとき誰しもが疑問に思うような、移植歯の固定の仕方、縫合の仕方、各処置の時期などもていねいに解説されている。優秀な人のノートを見るような感じで学べることが、本書の素晴らしいところだといえよう。加えて、具体的な移植の術式がバーコードをかざして付属の動画で見ることができる。動画を見ることで「なるほど」と、より確実に術式を習得できる。本も進化してゆくものだと感心させられる。 また、1口腔単位で移植を用いたさまざまな治療戦略のパターンも示され、そのなかにはいろいろなアイデアや工夫が示されており、実際の現場で役に立つヒントとなるだろう。 本書は自家歯牙移植・再植をする際に身近に置いておきたくなる1冊である。 評者:水上哲也 (福岡県・医療法人水上歯科クリニック) 平井友成・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:7,480円(本体6,800円+税10%)・112頁

感染予防に努める歯科医院のための最適な入門書
『歯科医療従事者のための感染制御入門』

COVID-19(coronavirus disease 2019:新型コロナウイルス感染症、以下COVID-19と表記)によるコロナ禍の影響は歯科界においても未曾有の事態であり、現在も継続している。幸いなことに歯科医療においては滅菌消毒の概念が確立されていたため、COVID-19流行当初に報道によって指摘された新型コロナウイルスに対しハイリスクな業種であるにもかかわらず、クラスターの発生は抑えられてきた。 歯科界では以前にもAIDS(acquired immunodeficiency syndrome:後天性免疫不全症候群)等の感染症に対するハンドピースの滅菌が社会的な問題となり、滅菌・消毒のマネージメントについて再確認を行った経緯がある。したがって、このような未知の事態は今後も社会生活を営む限り起こり得ることであり、再度、インフェクションコントロールについて再確認する機会と思われる。歯科治療における洗浄・消毒・滅菌の重要性は日頃痛感していることと思われるが、あやふやな部分が存在するところもあり、やはり定期的に見直すことは大切である。 本書は現在、問題となっているグローバルインフェクションコントロールの広い目線から始まり、徐々に具体的な感染制御の詳細について記述されている。内容は、グローバルインフェクションコントロール、感染成立のメカニズム、感染対策の基本的な考え方、手指衛生、個人防護具(PPE)、洗浄・消毒・滅菌──と必要最低限の項目に分類され、とくに歯科治療におけるCOVID-19の対策について詳細に記載されている。各項目においては、書籍タイトルである「感染制御入門」が示すとおり大変わかりやすいシンプルな表現で解説がされ、豊富なイラストや図表を用いながらも1ページで簡潔にまとめられている。また科学的な裏付けとしての参考文献の引用もシンプルで、大変わかりやすい。さらにメディコムジャパン協力のもと、感染制御に必要な製品が感染リスクに応じた性能レベルとともに記載されており大変有効である。 今後、われわれは歯科医療従事者として当面続くコロナ禍で、COVID-19の歯科医院でのクラスター発生を抑制し、通常診療における感染予防に努めることが国民から期待されている社会的な責務だと思われる。当院においてもスタッフはフェイスシールドまたはN95マスクを装着し、口腔外バキュームによる飛沫の予防を行っている。すべての器具、ハンドピース等は滅菌消毒し、患者の退出後はチェアユニットの消毒用アルコールによる清掃を行うことは言うまでもない。 著者のコメントのなかで、インフェクションコントロールにかかる投資に対する懸念よりも器材の本質を捉え、日々勉強を継続することで、少しでも平均点を上げる努力が必要であるという言葉にはおおいに賛同できる。本書によって自信をもって感染制御を行えていると明言できるよう日々の努力が必要である。 評者:中島 康 (大阪府・なかじま歯科医院) 渥美克幸・監著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:7,260円(本体6,600円+税10%)・144頁

COVID-19への対応など"今"知っておきたい情報満載の最新版
別冊ザ・クインテッセンス『口腔外科YEARBOOK 一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル'21』

『別冊ザ・クインテッセンス 口腔外科YEARBOOK一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル』はクインテッセンス出版の「YEARBOOK」シリーズの口腔外科版として2003年に刊行され、最初は隔年だったが、2005年より毎年発刊されている。口腔外科臨床の最新情報が多く集められており、話題のトピックスが適切に解説され、対象読者も一般臨床家、口腔外科医となっている。実臨床に密着したわかりやすい内容で、日本口腔外科学会によって企画、編集されている。 今回の2021年版は、特集として昨年から感染が続いている新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)と歯科・口腔外科医療について、これまでの知見をもとにCOVID-19に関する最新情報と診療で発生するエアロゾルに対する対応、院内感染対策についてウイルスの不活性が期待される洗口剤についても解説されており、口腔を扱う歯科医師にとって大変参考となる企画となっている。 「口腔外科基本手技」としては、難抜歯について写真、イラストを多数用いてポイントが記載され、動画も視聴できるようになっている。参考にして日常の診療で実践してほしい。 また、サイナスリフトについても症例を供覧し、わかりやすく解説されている。 舌小帯の手術は口腔外科医にとって基本中の基本であり、家族への説明も含めてもう一度手技、考えを再確認するにはよい内容と思われる。 さらに、嚥下内視鏡の基本操作についても詳しく解説されている。 診療情報提供書の記載については、今さらと思われるかもしれないが、医科歯科連携なしに歯科・口腔外科診療はできないほど患者基礎疾患情報は重要である。記載時のポイントが解説され、今後の作成時に参考になると考える。 「アドバンステクニック」としては、超音波切削機器についてその実際と応用を、具体的かつ詳細に解説されている。超音波切削機器は外来、入院手術と応用範囲が広く、安全性も高いが、機器の利点、欠点を十分に理解して使用するべきで、本項目を参考にしてほしい。 顎関節人工関節全置換術については2020年に保険収載され、今後適応範囲が拡大されることから基本的な知識が得られる内容となっている。 そのほかに「口腔と全身の管理」や「口腔外科最新レビュー」では、医科の先生より誤嚥性肺炎や口腔がんの薬物療法について専門的立場から解説されている。また静脈内鎮静法、緊急時の気道確保、味覚障害の最近の動向、AIと歯科画像診断など臨床での手技、知識の向上に役立つ項目が数多く掲載されている。 コロナ禍において、学会、研修会等がWeb開催となっているが、本書は200頁の中に多分野にわたる情報がコンパクトにまとめられている。口腔外科医のみならず一般臨床家にとっても基本的知識の再確認、最新の医療情報を得ることができる本書の熟読をぜひ薦めたい。 評者:吉川博政 (福岡県・国立病院機構九州医療センター歯科口腔外科) 日本口腔外科学会・編 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:7,040円(本体 6,400円+税10%)・228頁

手数を増やし、天然歯を生かす。抜群の対応力をこの手に
『天然歯にこだわるGPの総合歯科臨床矯正・エンド・ペリオ・インプラントの治療戦略』

最初に、金成雅彦先生のこの素晴らしい書籍の出版に際し、敬意と讃辞を申し上げたい。 歯科臨床には総合力が重要だが本書はその総合力を見事に解説した"ひとりインターディシプリナリー"本であるといえよう。なかでも、症例の豊富さに加え、口腔内写真の規格性、美しさには驚きを隠せない。子どもから高齢者まで、さまざまな患者を病態や状況に応じて判断し、「患者にとって何がベストか?」ということをつねに考えて治療している姿がうかがえる。これは、著者の日常における目配りや気配りが臨床にも現れている証だと思う。歯科臨床は、泥臭いものである。写真だけ見ていればすんなりと治療を行っているように感じるが、その裏にはさまざまなドラマが隠されている。本書からは良好な患者とのやりとりが目に浮かび、著者の歯科医院がいかに患者から信頼される地域で大人気の繁盛歯科医院であるかがわかる。 とくに本書でさすがだと感じたところは、次の一手に切り替える判断力と、その手技の豊富さや思慮深さである。患者にとって時間は大切で、時間がかかることで患者が来院しなくなることもある。第1章での、根管治療後に歯根端切除に踏み切るか否か、そのタイミングはいつにするのかなどは患者の信頼を得るうえで重要なポイントだが、その判断は絶妙である。それに加え、切開線の位置までもこだわり、術後の美しさにも配慮している点はさすがである。 また、本書でとくにページを割いて多くの症例を呈示されていたのが、矯正治療ではないだろうか。発育期の子どもの口腔内環境を整えることがいかに重要か、また、歯周環境改善、審美性の改善、そして全身の健康のためにも矯正治療は必須であることが、多くの症例を通じて解説されている。成人矯正治療においても、TADを用い、さまざまな手法で効率的に矯正治療を行い、時間の短縮を図りつつ、結果として患者の負担軽減につながっているケースが随所に掲載され、著者の引き出しの多さに圧倒される。 これからの歯科治療の鍵は矯正治療であるというメッセージのようにも感じる。 第4章では歯周環境改善のための歯周再生療法や歯周形成外科の症例が提示されているが、多くの症例で矯正が絡んでおり、歯を残すための再生療法には矯正治療は必要不可欠であり、反対に、矯正治療後の歯肉退縮などのリカバリーとして、歯周形成外科は救世主ともなるオプションであるということがわかる。 また、歯周外科の手技にも注目していただきたい。トラディショナルから最新のMIな手法まで、著者のアグレッシブに治療に取り組む姿勢が随所に感じとれ、そのクオリティの高さには敬服するしかない。 1本の歯を残すことにこだわり、患者の人生を救う治療に人生をかけているこの金成雅彦という歯科医師の、情熱を感じる本書をぜひ多くの皆様にご一読いただくことをお勧めしたい。 評者:林 美穂 (福岡県・歯科・林美穂医院) 金成雅彦・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:19,800円(本体18,000円+税10%)・320頁