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子どもの姿勢が咬合に及ぼす影響とは

子どもの姿勢が咬合に及ぼす影響とは
子どもの姿勢が咬合に及ぼす影響とは

東大阪市にある医療法人I'sMEDICAL安部歯科医院は最先端技術による治療はもちろん、予防歯科にも注力する地域密着型の歯科医院。こちらの安部逸世院長に姿勢と咬合の関係性、そしてそのためのアプローチについておうかがいしました。

日焼けした肌が印象的な安部院長は、小学校から大学卒業まで野球部に所属していた、自他ともに認めるスポーツマン。休日には大阪・静岡間を日帰りで移動しウィンドサーフィンに没頭するのが定番だそう。

「ウィンドサーフィンはもう30年来の趣味。ロングボードでのサーフィンやSUP(スタンドアップパドル)をすることもあります。1年中海で休日を過ごしているので、日焼けが落ち着くヒマもないんですよ。平日は仕事に集中しているぶん、休日に海に入ることでちょうどいいリフレッシュができているんでしょうね。最近では若手プロサーファー育成のための出資や、大会のスポンサーをする機会も増えてきました。年齢とともに関わり方が少しずつ変化している部分はありますが、ウィンドサーフィンと出会えたからこそ今の自分がある。その恩返しの意味も込めて、何かしら自分にできることでサポートしていけたらと思っています」。

そんな安部院長率いる安部歯科医院が長年取り組んでいるのが“姿勢咬合トレーニング”、つまり、姿勢からはじめる子どもたちの予防矯正。そもそも、姿勢と咬合にはどのような関係があるのでしょうか。

「姿勢と咬合、つまり歯並びは互いに影響しあっています。姿勢がバランスよく保たれて筋肉や骨格が理想的な形状であれば、必然的に歯並びはきれいになるはずです。しかし、乳幼児期に悪い姿勢やクセがつくと鼻呼吸から口呼吸になってしまい、姿勢も悪くなってしまいます。実は妊娠中の姿勢も関係しています。出産後の授乳姿勢や赤ちゃんの抱き方、寝かせ方なども歯並びに関係しているのではと最近では考えられています。

鼻呼吸ができないまま乳児期を過ぎ、もう少し大きくなると猫背やスマホ姿勢など、典型的な姿勢の悩みへと変化していきます。また、姿勢を正しく保つうえで一番大切なのは足指であるとも言われていますが、浮き指や外反母趾など足のトラブルで、足の指先をしっかり使って歩けてない子どもたちも今は多いですね。姿勢が正しくなければ当然頭の位置も変化して、筋肉に引っ張られて顎が下がる…というような関連性も生じてしまうのです」。

特にどういう姿勢が咬合に悪影響を及ぼすのでしょう。

「食事や運動をする時の姿勢や歩き方といった、日々の生活の中での姿勢が重要です。運動不足も良くないのですが、今の子どもは赤ちゃん時代に運動=ハイハイを十分にできる環境がありません。ハイハイの時期が短いということは、背筋の発達が未熟なまま歩くようになるということ。それでは正しい歩き方が出来ずに結果、姿勢が崩れてしまいます。崩れた姿勢のバランスを取るべく重い頭を支えようとして傾き、ストレートネックや猫背になったり、顎が下がって過蓋咬合になったり…という問題へもつながってしまいます」。

それを未然に防ぐためにはじまったのが“姿勢咬合トレーニング”。

「クリニカルコーディネーターによる問診と歯科医師による診断のうえでカウンセリングを行い、MFTなどのトレーニング内容を決定。さらに姿勢や日常生活に関する指導も歯並びコーディネーターと共に行っています。トレーニング内容は従来のシンプルで難しいものではなく、風船を膨らませたり、吹き戻しを使ってのトレーニングやガムトレーニングをしたり、スーパーボールを足の指で運ぶ競争したり…といった、子どもが楽しんで取り組めるものが中心。ドクターが介入し目に見えて歯列が整っていく矯正の治療とは違い、口腔機能を改善するためには地道なトレーニングが必要ですが、子ども自身でそこまで意識の高さを保てるかと言うとなかなか難しい。期待する結果を得るためにも、子ども自身が楽しみながら行うと同時に家族も意識を高く持ち、家族一丸となってトレーニングに取り組んでもらえればと思っています」。

安部歯科医院では口腔育成の一環としてVキッズも導入されています。導入に至った背景についてお聞かせください。

「以前から乳歯列は正常なのに、交換期を超えるとなぜいきなり歯列不正になる子どもがいるのか疑問に思っていたんです。もしかしたら、乳歯の生え変わりよりもっと早い段階から目をつけるべきポイントがあるんじゃないかと。そんなときにVキッズ開発者である目良誠先生と出会ったんです。そして目良先生から、乳歯列から発育不足があると永久歯列に成長するための空域が伴わないという口腔育成の概念についてお聞きし、そうした現象に有効な装置ということでVキッズを教えていただきました。
他社の筋機能装置は基本的に上下一体型のマウスピース形状なので、小さな子どもが最初に使う装置としては使いにくさがある場合も多いのですが、Vキッズは下顎に着けるだけなのではじめから苦痛なく装着できるケースがほとんど。就寝中、気付けば口から外れているということもほぼありません。実際に装着してみて熟睡できたり、呼吸が楽になるのを子どもなりに感じているからでしょうね。
当然、歯列不正がある子どもの場合Vキッズだけでは治療が完結しないので、それ以降の機能装置を使ってある程度歯列を治していく必要はあります。それでも改善しなければ本格的な矯正に移行しますが、まず初めにVキッズを使っておけば、後々のハードな治療を回避できる可能性が高くなります。以上のことから、基本的に3~5歳からはじめ、1~3年ぐらいを目安に卒業できるような形でVキッズを導入しています」。

安部院長が考えるVキッズの魅力とは。

「小さな子どもでも一瞬で使いこなせる簡単さと、口腔のボリュームを一気に広げ、呼吸の問題を改善できることですね。いろいろな症例をオールラウンドにカバーできますし、カスタムメイドなのでいろいろな調整が可能。咬合の状態によって形を変えられるのも特長です」。

3歳前後という早期からの取り組みを勧める理由は何でしょう?

「これまで、歯列不正に対しては12歳ごろから矯正治療を始めるというのが基本でしたが、今はできるだけ早い時期から介入することで発達不全、機能不全を防ぐことが重要、という考え方に移行しています。スキャモンの成長曲線によると、神経系は5歳で80%、12歳で100%成長します。成長段階での神経系への刺激が早ければ早いほど正しい発達につながるので、できるだけ早いうちに刺激を与えることが重要。具体的に介入することを考えると、歯型が取れて、装置を口腔内に装着できる目安の年齢が3歳。こうした理由から3歳ごろからの口腔育成を推奨しています。
また、子育て世代の歯列に対する意識が年々高まっているという一面もあります。以前に比べ、子どもの歯列不正を気にして来院するケースが増え、それも年々低年齢化しています。小さなころからのう蝕予防という意識が浸透したことで子どものう蝕自体は少なくなりましたが、残念ながら歯列不正の子どもは減っていないのです。
正しい歯列を手に入れるためには、正しい姿勢と十分な運動刺激が欠かせません。根本的な話をすると授乳の段階からはじまる問題なのですが、今はまだそこには注目されていません。ただ、そうした時点からの歯科的なアプローチというのは正しい方向なんじゃないかと個人的には思っているし、業界からも『0歳からの予防歯科』など、同様のことが発信されています。
ただ、0歳を過ぎたから、授乳期を過ぎたからといって手遅れと言うわけではもちろんなくて、その時期を過ぎた人こそ歯科医院を訪れ口腔姿勢と日頃の姿勢を正しく導いてもらうことが大切だと思うんです。
そもそも、子どもはもともと生きる力を持っていて、放っておいても勝手に大きくなっていく…と誰もが思いがちですが、実はそうじゃない。生きる力は、正しい姿勢で育んでいくべきもの。正しい姿勢が正しい歯列を育て、その結果、生きる力に満ちた子どもへと育つのです。

幸い、2018年から小児と高齢者を対象に、口腔機能の改善に対して保険点数が加算されるよう修正されました。嚥下力、咀嚼力などの口腔機能が劣ることで寝たきりにつながるという発想から改定されたもので、この分野は今後最も注目されることになるのではないかと感じています。
これからの歯科には、う蝕や口元の痛みなど悩みを治療するだけじゃなく、生きる力、食べる力、健康で長生きする力を身につけさせることが求められています。それはつまり、子どもたちがいかに正しい姿勢、正しい歯列を手に入れ、生涯にわたる健康な生活を送れるよう導けるかということ。それが叶えば老後の口腔機能低下も防げるし、口腔機能が整っていればフレイル予防となり健康寿命が延びる。こういうアプローチは歯科にしかできません。
歯列を整えたら生きる力も上がる。口腔育成とは生きる力そのものを養う考え方であり、今後スタンダードになっていく考え方でもあると思います」。

医療法人I'sMEDICAL安部歯科医院
https://www.ismedical.jp/





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Vキッズの詳細

著者松下 陽子

大阪市在住。
2000年よりライターとして活動、2004年フリーランスに。
雑誌・広告・Webメディアなどで美容・健康に関する記事を執筆。
松下 陽子

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