術者が磨くとしても、恐がり目をつぶってしまうケースがある。 目をつぶると、子どもは次第に泣き始める。 視覚以外の、触覚や聴覚が敏感になるからだ。 診療中に保護者が「目を閉じて頑張りなさい!」などと言うと、子どもが泣くのはこのためだ。 そこで、目を開けさせる工夫が必要である。 例えば、「鏡を見てごらん。大丈夫だから」や「おいしいお薬があるよ」などと伝え、興味を持たせ目を開くように誘導する。 目を開け鏡を見るようになると、次第に落ち着いてくる。 さて、子どもが歯ブラシに合わせ呼吸調整をし、処置を受けやすい状態になったとする。 そこでご褒美としてフッ化物のジェルを塗布する。 これをうまく活用することで以後の診療がスムーズになる。 「今日は上手にできたから、ご褒美においしいお薬をつけてあげよう! イチゴとブドウのどっちのお薬がいい?」などと言って低濃度のフッ化物ジェルを選ばせる。 そして歯ブラシで塗布する。 ここでジェルを選ばせることがポイントである。 選ぶことで診療に参加したことにつながるからだ。 泣いた状態で塗布しても、嫌なことをされたとしか思ってくれない。 また嘔吐することもあるだろう。 これでは何のためのフッ化物塗布かわからない。 こどもの心に貯金をするためにも笑顔で終えることが重要だ。 泣きだしそうな初診の子どもに、これまで紹介したステップを踏んでおけば次回はお利口に入室するだろう。 さて、次は形成のための誘導術だ。
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!
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