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2023年3月のピックアップ書籍

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2023年3月のピックアップ書籍

今後の矯正歯科学の指南書! 矯正×インプラントの臨床を徹底解説! オルソインプラントセラピー

丹野 努・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 19,800円(本体18,000円+税10%)・300頁 評 者 綿引淳一 (東京都・東京日本橋AQUA歯科・矯正歯科包括CLINIC) 『オルソインプラントセラピー』の著者の丹野先生と評者との出会いは、10年以上前になる。彼は評者にとって、矯正治療の可能性に挑戦し切磋琢磨してきた友人である。そんな彼の努力を間近で見てきた者としては、本書の出版は本当に感慨深いものがある。本書は、インプラント治療にいかにして矯正治療を取り入れていけばいいのかを中心に詳細に書かれている。 第1章では、インプラント治療の基本が書かれている。とくに印象深いのは、アライナー矯正治療やGBRを例にした低侵襲治療に対する彼の考え方や、医療の本質は治療結果の向上であり簡素化ではないと記述しているところである。そして、術者本位のMI治療に警鐘を鳴らしており、評者も大いに共感できる。 第2章では、矯正治療における基本的な考え方が書かれている。ともすれば、矯正治療はセファロ分析の数字合わせに奔走し、何を目的に治療しているのかを見失ってしまいがちであるが、本章では矯正診断の真の意味をわかりやすく書かれている。 第3章では、修復・補綴治療における矯正治療の有効性が記載されている。現代の矯正治療においては、患者のもつ歯冠形態を生かした矯正治療によっていかにしてまとめるかということに注視しがちである。しかしながら、歯冠形態自体に問題のあるケースは想像以上に多い。矯正治療の本来の目的の一つがQOLの向上つまり不正咬合を改善し、審美性を向上することにあるのであれば、彼が本章で示した治療オプションに関して、矯正専門医にもぜひ読んでもらいたい。 第4章は歯周治療と矯正治療について述べている。不正咬合は歯周病のリスクファクターの一つであり、同様に矯正治療自体もまたリスクになりうる。本章では、歯周再生療法においてもトップレベルの臨床医である著者が高度なテクニックを余すことなく示している。 第5、6章は、インプラント治療と矯正治療についてである。本章は著者がもっとも力を入れて取り組んでいた内容であり、第6章の矯正的組織造成法は、多くの読者にとっても必見の内容である。 矯正治療は専門医を中心に提供してきたワイヤー矯正の時代から、GPも巻き込んだアライナー矯正の時代へと変化してきた。また、対象は小児から中高年まで広がっており、矯正単独の治療では十分に対応できなくなってきている。そんな現代においては、包括的歯科治療の中に矯正治療を取り組むことの重要性が高まっている。 今後の歯科治療は、予防、矯正、審美といわれて久しい。本分野は、今後の歯科の可能性を切り開く分野であり、矯正歯科学の進むべき道で王道であると考えられる。本書の出版は、新しい矯正時代の幕開けであり、GPはもちろん、すべての矯正専門医にとって必読書であると強く推薦したい。

誰もが経験したであろう臨床での疑問や不安を解決に導いてくれる1冊 若手臨床医サブノート 困ったとき役立つ臨床編

栗原 仁・監著 佐藤昌徳/矢田航也/田村太一/金子祥子/ 坂田一道/山中千里/工藤健一郎/栗原律子/小林徳子/礒﨑祐太・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 13,200円(本体12,000円+税10%)・236頁 評 者 青井良太 (東京都・あおいデンタルクリニック 麻布十番ペリオインプラントセンター) 本書は、前書である「若手臨床医サブノート 治療計画・治療順序編」の続編であり、より臨床に即した内容となっている。著者は、多くの勉強会に参加し、さまざまな分野の知識を習得したなかで、「点で教わった講義内容は臨床では役に立たない」という結論に達した。「点と点を結ばなければ線にならず、その線へと導いてくれる講義を聞かなければ臨床で生かすことができない」と述べており、点を教えるティーチングから、点を線につなげるコーチングを長きにわたり続けている。 著者と接したことのある人間ならすでにご存知と思うが、非常に熱い人間であり、評者の恩師でもある小野善弘先生、中村公雄先生の「やり直しがなく、より長持ちする治療をすること」という言葉を元に、常に情熱を持って治療に臨んでいる。本書のなかで「自分は二流以下だと悟り、一流の歯科医師を育てることができる歯科医師になろうと決心した」と記しているが、本書ほど包括的な分野を詳細に記しているものはないのではないか。歯科医師なら誰もが経験したであろう臨床での疑問や不安を、解決に導いてくれる1冊である。非常にわかりやすく、著者の習得した知識の深さ、幅広さと修練の賜物であると感じる。 Chapter1は口腔診断編として、患者との信頼関係の築き方から口腔内写真・顔貌から読み取れる咬合の習癖などを解説。Chapter2は修復編であり、コンポジットレジンの長持ちする修復法や接着について記されている。Chapter3はエンド編であり、抜髄と診断する際の分類や歯髄の状態、感染根管治療を行う際の注意点などを説明。Chapter4はぺリオ編で、深い歯周ポケットへの対応や歯周外科の基本、壊死や裂開時のトラブル対処法、成功に導くための縫合方法など臨床に役立つ内容となっている。Chapter5は補綴編であり、安易な咬合調整を行ったことにより起きるリスクや、患者ごとに理想的な咬合を獲得するのに必要な知識、プロビジョナルレストレーションから印象採得に至るまでが詳解。Chapter6では口腔外科編として、採血の方法からCGF・AFGの活用法や抜歯についての内容。Chapter7は義歯編として、「総義歯調整地獄からの抜け出し方」(本文より)や新義歯製作時のノウハウ。そしてChapter8は小児歯科編であり、永久歯が先天的欠損している若年者へのインプラント治療の是非。Chapter9は歯科矯正編で、一般歯科医でも取り入れられるMTMについて述べられている。 Chapter1からChapter9まで非常に多岐にわたる内容で、歯科臨床におけるすべての分野を網羅している。いずれのChapterにおいても、治療に臨む際の勘どころ、診断を正確に行うためのさまざまな情報・知識が取り入れられており、評者も改めて知識を深めることができた。本書によって、「やり直しがなく、より長持ちする治療」が、さらに多くの患者に届けられるだろう。

気鋭の著者陣による心がおどる極めて贅沢な一冊 別冊ザ・クインテッセンス YEARBOOK 2023 これ1冊で両方学べる!  歯周組織再生療法&根面被覆術 適応症の判断基準、術前準備、 患者説明、材料選択、テクニックからメインテナンスまで

安斉昌照/岩野義弘/小田師巳/尾野 誠/ 片山明彦/斎田寛之/奈良嘉峰/芳賀 剛/ 船登彰芳/松井徳雄/溝上宗久/山口文誉/ 湯口晃弘・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,260円(本体6,600円+税10%)・186頁 評 者 瀧野裕行 (京都府・タキノ歯科医院) 本別冊は、人気のテーマである「歯周組織再生療法編」と「根面被覆術編」の2部構成からなり、気鋭の著者陣による極めて贅沢な一冊である。評者もページをめくるごとにワクワク感が抑えられず、久しぶりに心がおどった。歯周組織再生療法や根面被覆術を日常臨床にいまだ取り入れていない歯科医師も少なくないであろう。また、取り入れて実践はしているが、思うような結果が得られないというような声もよく耳にする。そんな若手歯科医師にとっては、うってつけの別冊である。 総論では、船登彰芳先生、松井徳雄先生によって各治療法の変遷や確実に施術するためのノウハウがていねいに解説されており、各論では、適応症の判断基準、術前準備、患者説明、材料選択、実際の手技に加え、術後のマネージメントとメインテナンスに至るまでの臨床的なポイントが症例とともに解説されており、治療を成功に導くためのヒントが満載である。 「学びの履歴」では、著者がどのように学び、その治療経験やオペ回数までを参考に読み進めることができ、拠りどころにしている論文や書籍の紹介も役に立つ。特筆すべきは、「私の使用器具・材料チョイス」として著者愛用のマテリアルが写真つきで掲載されており、読者に合った器具と出会えるのもうれしい。「私のゴールドスタンダード」も、マテリアル選択の際の参考になるであろう。また、外科処置を行うにあたって不安を抱く患者は少なくなく、そこで重要なのがコンサルテーションであるが、歯科医師の話し方やカウンセリングのポイントなどが記載されている点もおもしろい。 さらに、歯周組織再生療法編においては、PASS原則や、MIST、EPPT、NIPSA、HITなどの分類や、切開線など新しい手技が報告されている。根面被覆術編では、各種分類を用いたルートカバーの限界と予知性の推測や、結合組織の採取部位や採取方法、CAFやVISTAなど必要とされる新しい知識や技術が満載である。QuinteMobileアプリによる動画は、過去の別冊にも存在していたが、2023年版では動画の数がボリュームアップされている。これは、SNSの普及やデジタル化による歯科の新時代の特徴ともいえるもので,ライブオペや医院見学とまではいわないが、手軽に見られるというのはかなり読者にメリットがある。NIPSAやVISTAなどのマイクロスコープによるテクニカルな手技が動画で見られるので、技術を極めたい先生にはぜひご覧いただきたい。 歯の保存へと時代の流れが進むとともに、歯周組織再生療法などが脚光を浴びている。残された歯をどう治すか? 放置すれば抜歯になってしまうような歯をどう救うか? 本別冊をとおして、歯周組織再生療法と根面被覆術を成功へと導く歯科医師が数多く生まれ、歯を保存したいという患者のニーズに応えられる歯科医師が増えることをおおいに期待している。

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