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コラム

日本の小児の齲蝕減少の歴史 その8 砂糖の制限 VS 歯磨き

日本の小児の齲蝕減少の歴史 その8 砂糖の制限 VS 歯磨き
日本の小児の齲蝕減少の歴史 その8 砂糖の制限 VS 歯磨き
これまで述べたように、乳歯齲蝕の減少は上顎前歯から始まった。



その背景には、砂糖の制限や規則的な間食回数が、一般的に認識され出したことがあげられる。

ところで齲蝕予防には、砂糖の制限と歯磨きがあげられるが、どちらの方がより効果があるのだろう?

筆者は低年齢児の場合、砂糖の要因の方が大きいと考えている。

実際、1歳0か月児の歯科健診では、歯が輝いている小児がほとんどだ。


しかし、1歳6か月・2歳0か月児になると、くすんだケースが増加する。

これが見事に砂糖の摂取時期と一致する。

砂糖の味を覚えると、歯垢が付着し歯がくすむのだ。

これこそ、ミュータンス菌の感染が考えられる。


次にタイプCでは、乳前歯の齲蝕はなくなったが、乳臼歯部の咬合面齲蝕が多かった。



乳臼歯の咬合面齲蝕の予防には、歯ブラシによる歯垢除去が不可欠なのだろう。

続く時代では、タイプDが増加した。



これは乳臼歯の隣接面齲蝕で、3歳6カ月以降に初発する。

問診では、歯は磨いているが,間食が増えてきた場合に多い。

咬合面や頬舌側の歯垢は歯磨きで取れる。

しかし隣接面は、歯ブラシが届かない。

そこでデンタルフロスの指導が欠かせない。

日本の乳歯齲蝕は、このような順序で減ってきた。



すなわち、齲蝕の初発時期が、遅くなることがきっかけとなった。

この様な視点を持つと、齲蝕がどのような原因でいつ初発したかをイメージし指導を行うことができる。


では、齲蝕減少の中でフッ化物は、どのような役割をしてきたのだろう?

かつての乳歯齲蝕の洪水の時代。

診療室に訪れた保護者が「保健センターなどで,フッ化物だけは塗ってもらっていたのですけれど・・。」と言われることが多かった。



低年齢から砂糖漬けの生活では、その効果が得られるわけがない。

フッ化物の最大の副作用は、"保護者の過信"なのである。

乳歯齲蝕の減少は、間食や歯磨き習慣が定着してきた時期に、フッ化物が応用されたことで一気に加速した。

続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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