乳歯齲蝕の減少に伴い、大学の小児歯科の初診患者が減少した。 そのため、学生の臨床実習のみならず、卒後の臨床研修医制度でも見学が大半を占めている。 また、勤務医となってからも、歯周管理や在宅往診などが中心となることが多い。 そこで開業するまで、小児の齲蝕処置どころか、口腔を見たことがなければ、話したことがない歯科医師が増えているらしい。 たいへんな時代になったものだ。 以下、その様な歯科医師からの嘆きの声。 Dr.A:メインテナンスの患者さんが、孫のむし歯を診て欲しいと来られた。しかし、泣き暴れてたいへんだった。以来、親しくしていた方だったのに中断が続く。 Dr.B:若い母親が、2歳児のフッ化物塗布を希望して来られた。しかし、大泣きし嘔吐したので、そのまま帰られた。以降、その母親としっくりこない。 Dr.C:これからの歯科医院は、子どもを大切にして、いつまでも来られる患者さんに!と経営のセミナーは言われるが、実際にどうすれば良いかわからない。 Dr.D:子どもに泣かれるとたいへんで、 こちらまで泣きたくなってしまう。 さて、筆者も小児歯科医として多くの失敗を重ねてきた。 麻酔時に注射筒を見られてしまったなど、ちょっとしたことで小児を泣かしてしまう。 まさに失敗の連続であった。 でも同じことは、繰り返したくない。一度で十分である。 大切なのは、それを繰り返さないように努めることだ。 そう考えると失敗には、“悪い失敗”と“良い失敗” があることがわかる。 悪い失敗とは、未来につながらない失敗。 すなわち、失敗の理由を省みることなく、同じ過ちを起こしてしまうこと。 良い失敗とは、その体験を通じ二度と繰り返さないように対策を考えること。 そして失敗を未然に防ぎ、将来の大きな失敗をも防ぐこと。 言わば、失敗から学ぶことである。 そこで、筆者が小児歯科診療で“しくじりから学んできたこと”について述べよう。
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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