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発達期における咬合の変化 その16 第1~第3世代のパノラマX線写真の比較

発達期における咬合の変化 その16 第1~第3世代のパノラマX線写真の比較
発達期における咬合の変化 その16 第1~第3世代のパノラマX線写真の比較
乳歯列のパノラマX線写真は、永久歯の配列状態を把握することができる。
そこで第1世代(空隙型歯列弓・切端咬合)を正常像とし・第2世代( 閉鎖型歯列弓)・第3世代(過蓋咬合・下顎前歯叢生)と、各世代の顎骨内における永久歯前歯の状態について比較した。

まず 第1世代の乳歯列透明標本模型を参考に、永久前歯の特徴について述べる。(図1)


①上顎中切歯は歯冠が離開。また上顎側切歯と重なる。
②下顎前歯部は、上顎と比べ重なりが少ない。
③下顎側切歯は、中切歯より大きい。(下顎中切歯の近遠心径は 5.45mm、側切歯は  6.12mmである)。

次に各世代のパノラマX線写真における下顎前歯の所見をみてみよう。

Ⅰ 第1世代:空隙型歯列弓・切端咬合(4歳男児)(図2)

 下顎側切歯は、中切歯よりやや舌側に位置する。そのためパノラマX線写真の性質上、実際より大きく投影される。   

Ⅱ 第2世代:  閉鎖型歯列弓・前歯部被蓋3mm (4歳男児) (図3)

第1世代と比べ、第2世代は下顎前歯部の重なりが増加。本ケースでは下顎左下中切歯わずかに捻転。
下顎側切歯は、中切歯より大きく投影される。
(中切歯と側切歯の近遠心径の比は  100:112であることから、この比が増加するほど舌側に位置する)

下顎犬歯は側切歯より前方に位置するので、将来下顎前歯部に叢生が起こる可能性が高い。(図1)


Ⅲ 第3世代:下顎前歯叢生・前歯部被蓋5mm(4歳男児)(図4)

顎骨内では、下顎中切歯・側切歯が大きく捻転し、舌側位にある。これが自然に解消されるとは思えない。将来本格的な矯正が必要となる。

以上、世代が進むにつれてパノラマX線写真上でも不正咬合が増加することが予想される。
              
さて新生児は、窮屈な子宮に続き、狭い産道を通過するため、出生時下顎は最後方位をとる。
その後、吸啜運動などにより前進し、下顎前歯の萌出開始時には3~4mm前方に移動する。
さらに前歯部による食物の咬断により、さらに前進し切端咬合に近づくとされる。(図5:6・7)



ところで、胎児期に顎骨内の乳歯は、どのような状態にあるのだろう?

この点について調べたところ、胎生期の顎骨内では下顎乳前歯は、以下の3パターンに分類されていた。(図8)

タイプA:乳側切歯は乳前歯の舌側(口蓋側)に位置する。
タイプB : 乳側切歯の遠心は舌側に向く。
タイプC:乳側切歯の近心が舌側に向く。

上顎では、タイプAが60.3%をしめ、下顎ではタイプBが83.3%となっている。(図9)

これらが萌出と伴に正常な位置となるのは口唇圧や舌圧によるものである。
従って、下顎乳前歯の叢生はこれらの圧力の不足、あるいは過蓋咬合のため上顎歯列弓によりロックされることが考えられる。

続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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岡崎 好秀

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