現在、日本は超高齢化社会といわれるが、動物園の動物たちも高齢化が進んでいる。 食物などの飼育環境や、飼育スタッフの並々ならぬ努力の賜物といえるだろう。 さて、動物の分野では環境エンリッチメント(environmental enrichment)という言葉がある。 これは、動物たちの“幸福な暮らし”を実現するための具体的な方策を指す。 さて、動物園の“顔”といえば、ゾウ・ライオン・キリンがあげられるが、子どもにとって圧倒的に人気なのはゾウである。(図1) しかし現在、ゾウのいない動物園が急増している。(図2) 高齢化が進み、このままだと50年後には日本でゾウに会えなくなるという。 希少動物の保護のためのワシントン条約で、学術目的以外の商業取引が禁止されているためだ。 さらにゾウは非常に高価である。アジアゾウの購入には1頭約4千万~5千万円もかかるのだ。 そこで、繁殖のためゾウの貸し借りを行っている動物園もある。 さて、アフリカゾウは体長6~7.5m、体高3-~3.8m、体重は6~7tにも達する。(図3) そのため足は太く、足裏の直径は、40cm(アジアゾウのメス)にも達する。 ちなみに、ゾウは前足に5つ、後ろ足に4つの丸い蹄を持ち、つま先立ちで(指行性)で歩く。 面白いことに、ウマやライオンのような足跡がつかない。 足裏は、弾力のあるクッションが入っている。 ゾウの足音が聞こえないのは、このためだ。(図4) いずれにせよ、これだけ重いと足腰にかかる負担は尋常ではない。 もし、足を痛めると起き上がることができない。 そう! ゾウの身体的フレイルは足より始まる。 そこでゾウを長生きさせる取り組みが必要だ。 なかでも足と蹄のケアーは欠かせない。 朝・夕のゾウ舎の出入の際、足の裏をチェックし洗う動物園もある。 また爪が伸び続けるので、傷つけないように定期的に削る必要がある。 まさに、ゾウのフレイル予防は、足のケアが重要なのだ。(図5) お願い ~数十年後も子どもたちが会える未来を残すために~市原ぞうの国(千葉県市原市) 「ゾウと一緒に生きる未来を作りたい」クラウドファンディング実施中(7月12日まで) https://readyfor.jp/projects/zounokuni2023
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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