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今すぐできるコミュニケーション力アップの方法

今すぐできるコミュニケーション力アップの方法
今すぐできるコミュニケーション力アップの方法
行動心理学に基づいた独自のコミュニケーションメソッドを日々の診療に生かしている「DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA」。同医院のCS(顧客満足)部門担当であり、国内外の多くの医療施設で医療コミュニケーションの指導を行う宮地理津子先生に歯科医療現場におけるコミュニケーションの実践術や重要性について伺いました。

今すぐできるコミュニケーション力アップの方法

-- はじめに理津子先生が考える歯科医院でのコミュニケーションの重要性について、教えていただけますか? 「ここのクリニックを選んでよかった」、「もっと健康になろう」といった患者さんの前向きな気持ちを引き出すのは、他の誰でもない歯科医師をはじめとした歯科スタッフのコミュニケーション力なのです。例えば、治療結果が同じだったとしても、「一方的な説明ばかりだった」「専門家としての助言や支援をきちんと得られなかった」そんなふうに患者さんが感じてしまえば、満足度は下がり、健康への興味や関心は薄れてしまいます。 -- 具体的にはどんなふうに患者さんとコミュニケーションを取ればいいのでしょう? 話している内容は正しいのに、この上司の話はなんか頭に入ってこない、その逆にちょっと失敗することもあるけど、この先輩の話はスッと頭に入ってくるなど、普段の職場での会話でもそのようなことがあると思います。その差は「相手ときちんと繋がれているのか」ということなのです。コミュニケーションはキャッチボールです。ボールにも大きい、小さい、硬い、軟らかいがあるように、言葉にも声量が大きい、小さい、あるいは表現が硬い、柔らかいなどがあります。相手が受け取りやすいボールを投げて、受け取った相手が、またそれを投げ返す。そのキャッチボールが意識できていないと良好なコミュニケーションは成立しません。特に最近はデジタル化、DX化が進んで人が介在しない場面が多くなっています。あるいは効率化を求めて、どうしても診療が流れ作業になってしまうことがあると思います。だからこそ、患者さんと向き合うときには、丁寧なキャッチボールが大切になると考えています。 -- コミュニケーション力は勉強したり、訓練したりすることで磨くことができるのでしょうか? もちろん、今すぐにでもできます。そして、コミュニケーションを磨く近道は「意識すること」です。簡単なようで意外とできていない方は多いのではないでしょうか。なぜなら、普段のコミュニケーションは皆さん、無意識で行っていることが大半だと思います。ですから、「今の自分はどんなふうに話をしているのかな」、「相手の反応はどうかな」と意識するだけで随分と変わります。会話のテクニックはいろいろとあるのですが、医療現場において信頼関係を構築する上で、“ペーシング”がいちばん大切になります。まずは自分の話す速度や声の大きさ、あいづちやうなずきのタイミングや頻度に意識を向けてみることをお勧めします。

苦情とクレームの違いとは?

--医療の現場で難しいコミュニケーションといえば、クレームがあります。クレームにはどんなふうに対応すればいいのでしょうか? 患者さんがワーっと何かを訴えてきたときに、それを「クレーム」と決めつけないように指導しています。それは単に「こう思っていたのに違ったのですか?」という確認または質問かもしれません。あるいは、「こんなに待たされるなんて不満だ」という苦情かもしれません。苦情とクレームは似ていますが、「どうしてくれるんだ!」と何かの損害を受けた際の請求行為がクレームです。 確認、質問であれば、丁寧に説明をすればいいし、待ち時間の苦情であれば、「本当に申し訳ございません。こんなに待たせてしまったのですね。お時間は大丈夫ですか?」と真摯に謝り、その時にでき得る対応をお伝えするだけで、患者さんの怒りの態度も変わるものです。そういったコミュニケーションを抜かして、すべてをクレームとして処理してしまうと、先生の治療の腕とは関係なく、「この病院が悪い」、「この治療が悪い」というふうに問題がすり替わってしまいます。 --医療の現場では謝ったら訴えられるのでは、と心配される先生もいます 医療訴訟があまりにも多いということで、米ハーバード大学病院がその対策としてリスクマネジメントの概念を導入し、リスクを減らす試みをしたことがありました。けれども、医療訴訟は一向に減らなかったそうです。そこで今度は「セーフティーマネジメント」という概念を取り入れて、リスクを減らすのではなく、安全をつくるという考え方に切り替え、インシデントへの取り組みを開始したところ医療訴訟の件数が減ったそうです。通常の診察の場面でも、患者さんが何かに怒っていたら、「まずは話をよく聞いて、何が起きているのかを正確に説明し、そこに間違いがあった場合は、まずはしっかりと謝りましょう」とお伝えしています。

コミュニケーション力が生み出す笑顔の付加価値

--コミュニケーション力を磨くことによって歯科医院にもたらされるメリットにはどんなものがあるでしょうか? コミュニケーションとは言葉だけではなく表情が大切になります。特に笑顔は歯科スタッフにおいて重要なコミュニケーション力となります。感性工学という分野の研究で、人を介してまったく笑顔をつくらないで販売した場合と笑顔で販売した場合に、価格にどのくらい差が出るのかなど、店員の笑顔が顧客の購買意欲に与える影響について明らかにする調査を行いました。すると、426円のお弁当が、笑顔のない店員さんからの場合は429円で、笑顔の店員さんからは475円で購入してもよいという結果が出たそうです。驚くことに笑顔で売ることで単価が46円も上がりました。これはまさに「素敵な笑顔が生み出す付加価値」です。医療の現場でもコミュニケーションを意識して患者さんと接することで、同じような効果があると思っています。現在、“SUTEKI PROJECT”という取り組みで、感性工学×歯科医療をテーマに、「素敵とは何か?」を科学的に研究しています。 「Well-being」に携わっていくという点でも、これからの歯科医院は患者さんとのコミュニケーションが重要になってくるのではないでしょうか。特に睡眠呼吸障害は自覚症状のない患者さんに睡眠障害の危険性と治療の必要性を伝え、検査、治療へと導く必要があります。そのためにはどんなボールをこちらから投げるのか、そして患者さんから返ってくるボールをどう受け止めるのかというキャッチボールが重要になります。睡眠呼吸障害の診療に悩みを抱えている先生は、ひょっとするとコミュニケーションの仕方を見直すことでスムーズになるかもしれません。患者さんの「Well-being」のために、患者さんとのキャッチボールを大切にしていただけたらと思います。 <了> 【関連 動画コンテンツリンク】 睡眠歯科と宇宙美容。「Well-being」を創出するこれからの歯科のあり方 今すぐできるコミュニケーション力アップの方法

著者宮地 理津子

DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKAブランドディレクター

顧客の視点から、ブランドストーリーを開発し、顧客にとって最善のコミュニケーション戦略をデザイン。DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKAが大切にしているビジョンと方向性に進むこと、そして、本物の信頼、ロイヤルティ、成長へ向かうためにチームの力が一つになるようにサポートしている。 CurrentR 株式会社 代表取締役社長 日本歯科医療プロフェッショナルコーディネーター協会 代表

宮地 理津子

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