今回は、3つのフレイル(衰え)の中の“社会・心理的フレイル”。(図1) 外出して親しい友人に会い、食事やおしゃべりをすると楽しい時間が過ぎる。 でも定年退職や伴侶を失うなどがきっかけで、外出の機会が減る。 趣味でもあると良いが、それがないと自宅にこもりがちになる。 すると一人でいると気持ちが沈みがちになる。 さらに、食事も一人だとなおさらだ。(図2) ところで 1:地域に出て文化活動をする。(社会・心理的フレイル) 2:一人で運動する。(身体的フレイル予防) どちらが“要介護状態”になりやすいだろう?(図3) 一般的に、身体的フレイルの防止のためには、運動を重要視しがちである。 しかし、運動習慣と文化活動を行っている場合と比べると、 運動習慣はないが、文化活動をしている場合のリスクは2.2倍。 次に運動習慣があるが、文化活動のない場合は約6.4倍。 運動習慣だけだと、約3倍もリスクが高くなるという。(図4) (注:吉澤裕世、⽥中友規、飯島勝⽮ら: 地域在住高齢者における身体・文化・地域活動の重複実施と フレイルとの関係.⽇本公衛誌.2019;66:26 306-316.) もちろん、身体的フレイル予防は重要だ。 でもどうして、文化活動の方はリスクが低いのだろう? 地域に出かけるためには、まず衣服を着替え、身だしなみを整えねばならぬ。 そして、徒歩などで外出する。 たった、これだけで身体的フレイルの予防につながることがわかる。 我々は、いかに人とのつながりが大切かわかる。 さて筆者は、かつて動物の歯や骨を見るのが好きだが、動物園は苦手であった。 なぜなら、動物園に行っても動物が動かないので面白くない。 ところが・・・である。 北海道 旭川市の旭山動物園の動物だけは違っていた。 生き生きした動物の姿を見るために、全国から観光客が押し寄せていた。 そこで十数年前、元名誉園長の小菅正夫先生に理由を聞きに行った。 今から思えば、動物に対して社会・心理的フレイルの予防をしていたのだ。 例えば、“オオカミの森”のオオカミは、野生の鋭い目をしている。 これは、常に緊張感を持たせているためだ。(図5) どの様にしているかを聞いたところ・・・。 「隣にエゾシカ舎があり、オオカミはシカがちらちら見えるから本能が刺激されるのです。」 なるほど! これは、まさに心理的フレイルの予防ではないか! 「一方、シカは柵のため襲われないことを知っているので悠々としています。」 園内には来園者が気づかない工夫がたくさんある。 もう少し動物園から社会・心理的フレイルを学んでみよう。 続く
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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