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オーラルフレイルをどう伝えるか?その8:競走馬 エサの秘密?!

オーラルフレイルをどう伝えるか?その8:競走馬  エサの秘密?!
オーラルフレイルをどう伝えるか?その8:競走馬 エサの秘密?!
競走馬に、漁業で使う網にエサの草を入れ与えている。
どうして,このような与え方をするのだろう。
それは、早食い防止のためである。
そもそもセルロースを多く含む草は,エネルギー効率が低い。
そのため、1日16時間食べ続けなければ体を維持できない。(図1)

通常のエサでは,体を維持するのに精一杯だ。
しかし,これでは競争に勝てない。
そこでに,高カロリーで消化しやすい配合飼料を与える。(図2)

それならエネルギーは、バッチリ!と思われだろう。
しかし、ここに思わぬ落とし穴がある。
ウマは,栄養面より,食べることに当てる時間が大切だ。
小さな固形試料は、早く食べ終えてしまう。
短時間で食べ終えた後、他のウマが食べているのを見ると,ストレスを感じるらしい。
イライラして,調教どころではなくなるという。
そこで,飼い葉桶に大きな石ころを入れたり,サカナの網にエサを入れて与える。
こうして食べ難くすることで,早食いを防止するのだ。(図3)

栄養のあるペレットでは,満腹感は得られても,満足感が得られない。
どうやら、忙しい現代社会,ウマに見習うべきことがたくさんありそうだ。

ところで歯科医師にとって、ウマの歯は興味深い話がたくさんあるので紹介しよう。
ウマは、咀嚼効率を高めるために,小臼歯も大臼歯化させた。(図4)


臼歯の咬合面は,大きいだけではなく、ヒトとは異なっている。
さてヒトの歯は内側に象牙質,外側にエナメル質がある。
ウマでは,さらにエナメル質の周囲をセメント質が取り囲む。
同時にエナメル質の間の空隙もセメント質で満たされる。
どうして,かくも複雑なのか?(図5)


ヒトの大臼歯も咬耗が進み平坦になれば,咀嚼能率が低下する。
これでは,草をすり潰すことができない。
そこで,ウマの神様は考えた。
エナメル質と象牙質やセメント質では硬さが違う。
咬耗が進みやすい部分と遅い部分を作ればよい。
この差が適度な凸凹を作り,噛める歯が誕生したのだ。
さらに面白いことがある。
ウマの歯冠周囲は、セメント質で覆われている。
どうしてだろう?                                        続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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