各インプラントの特徴やインプラント関連手術について学べる1冊! 別冊ザ・クインテッセンス インプラント YEARBOOK 2023 保険適用のインプラント治療:広範囲顎骨支持型装置・補綴の実際
公益社団法人日本口腔インプラント学会・監修 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,480円(本体 6,800円+税10%)・344頁 評 者 近藤尚知 (愛知学院大学歯学部冠橋義歯・口腔インプラント学講座)インプラント治療は、近年では歯の欠損に対する予知性の高い治療法として、一般市民にも認められつつある。その歴史は、日本国内においても20年を優に超え、多くのエビデンスが蓄積され、昨今では、インプラントは歯の欠損補綴を行ううえで、なくてはならない治療オプションとなっている。そして、長期安定性獲得のために、インプラントの表面性状の改変をはじめ、各メーカーもさまざまな取り組みをしてきた。 その結果、診察・検査・診断から、埋入手術、補綴処置、そしてメインテナンスに至る一連の術式が確立され、現在ではインプラントシステムとしてインプラント治療を導入できる状況にまで洗練されてきた。 このような時代背景のなか、飽くなき向上心を持った先生方と20社以上の探求心あふれるメーカーの尽力により完成した『インプラントYEARBOOK 2023』は、各々のインプラントの特徴を生かした治療方法を掲載するだけでなく、硬・軟組織マネージメントにかかわる手術も包含し、参考書並みの構成となっているのが大きな特徴である。 また、本書は保険収載されている広範囲顎骨装置としてのインプラント治療や、顎骨欠損に対する骨造成の方法も掲載しているので、顎顔面補綴を専門としている口腔外科専門医や、補綴歯科専門医も必見である。それに加えて、即時修復(immediate loading)、遊離歯肉移植、結合組織移植などのインプラント関連手術も相当数紹介しており、症例集としても活用いただきたい。 さらに、手術症例だけでなく、術前のシミュレーション、そのほか口腔内スキャナによる光学印象採得についても紹介されており、デジタル歯科技術のインプラント治療への臨床応用という観点からも、ならびに補綴専門医の立場から評しても興味深い内容が多数掲載されている。 なかでも、近年急速に発展してきたセラミック材料を用いた審美治療や、CAD/CAMによるカスタムアバットメントやセラミック修復に関するものは、補綴歯科治療の変遷をも網羅するものである。 そして、つい最近まで、最新の治療法だと思っていた口腔内スキャナを用いた光学印象法、さらに、その流れから派生したインプラント治療のデジタルワークフローまでが当然のように紹介されている点は注目に値する。 インプラントレベル、アバットメントレベルでの光学印象に関しては、さまざまな形態のスキャンボディを紹介しているだけでなく、スキャンゲージという新たなデバイスで多数歯欠損に対する光学印象にチャレンジしている症例もあり、新たな知見についても紹介されている。 上記のように、ビギナーから各領域のエキスパートまで、どのレベルの読者にとっても興味深い内容を包含しており、ぜひとも傍らにおきたい一冊である。
はじめてのインオフィス(院内)製作のアライナーにも最適な1冊!! 基礎から学ぶ デジタル時代の矯正入門 IOSと3Dプリンターを応用したカスタムメイド矯正装置
Nearchos C. Panayi・編集 三林栄吾/深澤真一/友成 博・監訳 根岸慎一/中嶋 亮/山田邦彦/ 江間秀明/道田将彦・翻訳統括 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 24,200円(本体 22,000円+税10%)・240頁 評 者 西井 康 (東京歯科大学歯科矯正学講座主任教授)文化、文明あるいは技術は、時代とともに変化するが、それは均一ではなく安定期と変革期が交互に訪れる。歯科矯正学においてもそれは例外ではなく、いくつかのエポックとなる概念、装置が現れた。古くはエッジワイズ法の発明に始まり、歯槽基底論、各種分析法、形状記憶合金、ダイレクトボンド法、ストレートワイヤー法、分析ソフトウェア、インダイレクト法、審美ブラケット、リンガルブラケット、CBCT、アンカースクリュー、口腔内スキャナー、アライナー矯正、そしてこれから押し寄せてくるデジタルデンティストリーであろう。しかし、本書で扱っているデジタル化は、治療の概念、装置という単体のものではなく、行動様式の変化を含んだものである。私がその昔入局した1990年代は、学会でのブルースライド作成が終焉を迎え、PowerPointでスライド作成、携帯もしくはPHSを持っている人がちらほら、インターネット、スマホが登場。そして今、気づけばだれもカメラは持っていない、SNSで近況報告、コロナ禍でのWeb会議、学生は教科書の代わりにタブレット1つ、最近話題の質問に即座に答えてくれるChatGPTの登場と社会のデジタル環境はめまぐるしく変化している。 さて矯正の分野は、日常のデジタル環境こそ変われども、臨床そのものは大きく変わらなかった。しかし今、デジタルの進化が矯正歯科の世界にも溢れ出し、一筋の流れが大きな河になろうとしている時代にわれわれは対峙している。本書は、この時代に矯正歯科でのデジタルの流れを俯瞰的に見るのに最良である。内容は、カスタマイズ化、ラボでのCAD/CAM、3Dプリンターの応用が記述されている。特筆すべきは、将来のインオフィスでのブラケットの製作、カスタムブラケットである。これにより医療・労働様式の変化がそう遠くない未来にやってくるのではないかと暗示される。その後、ダイレクトプリントアライナー、インオフィスアライナー、デジタルIDB、インオフィス外科用スプリント、インオフィスワイヤーベンディングロボットなど、歯科技工物製作の実際が記載されている。最後の章には、AIのディープラーニング、ブロックチェーン上による情報の独占化から情報の共有化、AIによる臨床意思決定支援システムの利点とドクタースキップによる患者への被害が記載されており、矯正歯科だけでなく社会が直面する問題定義で締めくくられている点は、著者の冷静なスタンスを垣間見ることができる。 本書は、今現在のデジタルの鼓動を感じる本であり、矯正の近未来を暗示している。教科書と違い数年たてばこの本はあっという間にノスタルジックな色を含むであろう、しかしそれこそがこの本の価値を高めている。序説に述べられている「生き残るのはもっとも変化に適応した者」であるというダーウインの言葉を胸に刻みつつ、今手に取るべき本である。
現場の疑問・質問に対しエビデンスをもとにエキスパートが回答 文献ベースで 歯科臨床の疑問に答える チェアサイドQ&A 予防歯科編 PART2
日本口腔衛生学会・編 於保孝彦・監修 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 4,180円(本体3,800円+税10%)・140頁 評 者 宮本元治 (長崎県・小浜みやもと歯科医院)本書は、2018年に発売されたPART1の続編(第2弾)である。概要としては、臨床現場でよく聞かれたり、今まで不確かとされたりしていた予防歯科医療に関するさまざまな疑問・質問について、最新の文献と照らし合わせ、考察・現状をふまえてわかりやすく解説されている。PART1と同様、月刊『歯科衛生士』での連載を書籍化したものだが、連載では掲載されていなかった疑問・質問も加えられるなど、さらにパワーアップしている。歯科界の医療従事者だけにかかわらず、介護・福祉・学校関係者など、幅広い分野での活用が期待される1冊である。 詳細を述べる前に、このたび書評という大役を得て、本書を拝読させていただいたことに、出版関係者、並びに監修の於保孝彦先生にまず御礼を申し上げたい。 臨床では、治療するだけでなく、う蝕や歯周病の進行を防ぎ、予防することも重要である。ひいては、口腔健康の増進に寄与するための知識と術式が必要とされる。本書を監修された於保先生は、評者にとって指導者の1人である. 多くの歯科医師は多忙故に、ブラッシング指導を歯科衛生士に任せることが多い。しかし、歯科医師みずからも行うことで、患者さんとチェアサイドで直接コミュニケーションを取りながら、疑問や質問に答えることで信頼関係を築く重要性を於保先生に教授してもらい、現在でも時間が許す限り、評者もその教えを守り続けている。 さて、本書の詳細だが、疑問・質問が各セクションに分類されているうえに、さらにわかりやすくカテゴリー別に分けられ、1問につき見開きで記載され明晰である。たとえば、「第1章 口腔衛生に関する疑問」において「洗口液」のカテゴリーでは「洗口液の効果的な使用のタイミングは?」など、臨床に携わる者が一度は遭遇する、即座に返答しにくい疑問が取り上げられ、一見の価値はある。また、予防歯科学で優れた先生方が昨今の変化を多数の文献でリサーチして回答しているのも見応えがあり、根拠とされているエビデンスもわかりやすく記載されている。回答者がいかに幅広く論文検索を行ったうえで、より厳選したかがわかるため、予防歯科学者の見聞録だとわかる。だからこそ、新人の歯科衛生士からベテランの歯科医師まで知識のブラッシュアップができて読みやすい。 最後に、エビデンスを重視する現代歯科医療において、本書はまさに手に取りやすい良書であり、概要で述べたとおり、歯科界だけにかかわらず、あらゆる場面でも活用できる。そして、多くの患者さんの疑問を解決でき、口腔保健の増進に役立つ。読者の医療従事者にとって、患者さんを引きつけて信頼関係を構築し、頼りにされるための“道しるべ”になると感じる。さらに、患者さんに寄り添うための“手助け”となり、よりいっそうメインテナンス患者さんを増やせる書籍であると愚見を申し上げ、お薦めしたい。
キャッシュレス化の波が押し寄せる中、自動精算機の導入は必須の流れ! 別冊ザ・クインテッセンス 歯科医院向け自動精算機 導入ガイド 2023 電子カルテ&レセコンとの連携は可能か?!
クインテッセンス出版・編 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 5,940円(本体5,400円+税10%)・112頁 評 者 荒井昌海 (東京都・エムズ歯科クリニック)リクルートが宣伝しているAirペイのTVCMで「現金しか使えません!」という店舗に入った客が、「じゃあ、いいです〜」と店を出てしまうシーンを見たことがある人は多いだろう。CMが流れ始めた2018年の頃は笑ってみていたが、今はもう共感しかない。私自身、日常生活で現金を使うことはほとんどなくなり、基本、財布を持ち歩かなくなった。たまに現金しか使えないタクシーに乗ると、ヒヤリとすることがある。 歯科医院でも電子決済は進んでいる。クレジットカードに始まり、各種交通系IC、QRコード決済など、支払い方は多様化してきた。当初は決済手数料を気にして導入に踏み切れなかった先生も、手数料の急落にともない一気に導入を始めた。仮に売上が300万円の医院がすべての会計を手数料1.4%のカード決済としたら、窓口負担90万円にかかる手数料は12,600円となり、そのコストだけで会計業務から解放されることになる。どう考えても人件費よりも安い。 では、「具体的に何をどのように導入すればいいの?」が院長たちの次の疑問である。その疑問に答えるように、本書が発刊された。まさに私たち歯科医師が知りたかった情報が1冊にまとまっている。本書はさまざまな自動精算機が、その導入歯科医院のレポートとともに掲載されている。私はこの書籍を読んでみて、以下視点を3つに分けることができたので、共有したい。 ①患者目線 対面でのやり取りを極力減らすための感染対策として非常に有効であろう。「患者が使いこなせないのではないか?」という不安に対しては、最近はスーパーでの導入も増えてきていると書かれている。高齢者ほど大 学病院などで利用していたりするので、私自身も不安視していない。また、現役世代にとっては駅の券売機や空港のチェックインがすべて対面であったら煩わしい。 ②スタッフ目線 「締め作業も楽に行えて、釣銭ミスがなくなる」というのは、どこの歯科医院でも共通のメリットであると書かれている。スタッフにとって、受付業務は負担が大きく、なかでも重要なお金のやり取りから解放される ことは、ストレス軽減につながる。 ③院長目線 受付スタッフが退職して困るのは、どこの院長も同じである。しかし、とあるユーザーの先生は「自動精算機を導入すれば、支払業務に関しては教育も採用も必要なくなる」とメリットについて本書で言及されてい た。私もそう思う。また、自動精算機の形態はさまざまあり、設置場所にも工夫が必要だ。ここで紹介されているあらゆる事例をお読みいただき、設置の参考にしてもらいたい。 これからの人口減少の時代においては、自動化はあらゆる局面で重要となる。自動精算機の導入はもはや必須の流れである。いつかは導入すべきものであれば、いち早く導入して、われわれヒトにしかできないことに注力したい。