“フレイル”には、Ⅰ:身体的 Ⅱ:社会・心理的 Ⅲ:栄養・口腔 の3つがある。 なかでも“栄養・口腔のフレイル”が注目されている。 さて、歯が悪くなると、噛めないので栄養不足となる。 すると、 ① 筋肉が痩せる→足腰が弱くなり、転びやすくなる→腰・大腿部の骨折→入院→車椅子生活→ 外出できない→ますます筋肉や骨が弱くなる。 これらはⅠ:身体的フレイル。 ② 続けて 友達との会話が減る→一人で食事→おいしくない これは、Ⅱ:社会・心理的フレイル。 ③ さらに、お腹が減らない→ますます、筋肉や骨が弱る→本格的な寝たきり。 これもⅠ:身体的フレイル。 このように食べられないこと(Ⅲ:栄養・口腔のフレイル)がきっかけで、悪循環に陥る。 さて、現在、 65歳以上で約40%の方に口の衰えがあるが、これは歯科治療や定期健診だけでは防げない。 これは口の機能の衰えに起因する。 例えば“滑舌が悪くなる”、“口が乾く”、“イビキをかく”、“食べカスが、歯につきやすい”、“口臭がある”。 さらには、“食べこぼしが増えた”、“舌や頬をよく噛む”、“食事中むせやすい”、“飲み込み難い”なども同様だ。 これらの口腔機能低下は、40歳代から増えるという。 “口の衰え”があると、死亡率が約2.1倍、寝たきり率は2.4倍にも達する。 試しに、口笛を吹いてみるとよくわかる。 昔のように、上手く音が出ないと口唇や舌の機能が衰えている証拠だ。 まさに“人は口から衰え”といえる。 ところで、某動物園でゾウにも口腔周囲筋にフレイルが起こると聞いた。 実に、これが面白い! 次号をお楽しみに・・・。 続く 注1:日本老年医学会では“虚弱”はマイナスのイメージがあるため、“フレイル”の言葉を提唱している。 注2:3つのフレイルは、“身体的”・“社会的”・“精神・心理的”を指す。ここでは“社会”・“心理的”を一本化し、“栄養・口腔のフレイル”を加え解説した。
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!
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